東京二期会タンホイザーDay 3
東京二期会オペラ劇場タンホイザー〈新制作〉オペラ全3幕日本語字幕付き原語(ドイツ語)上演台本・作曲:リヒャルト・ワーグナー(パリ版準拠(一部ドレスデン版を使用)にて上演)フランス国立ラン歌劇場との提携公演《二期会創立70周年記念公演》主催:公益財団法人東京二期会 公益社団法人日本演奏連盟2021年2月20日(土) 14:00東京文化会館 大ホール 上演予定時間:約4時間(休憩を含む)都民芸術フェスティバル2020-2021シーズン特別協賛企業 ダイドー株式会社指揮: セバスティアン・ヴァイグレ原演出: キース・ウォーナー演出補: ドロテア・キルシュバウム 装置: ボリス・クドルチカ衣裳: カスパー・グラーナー照明: ジョン・ビショップ映像: ミコワイ・モレンダ 合唱指揮: 三澤洋史演出助手: 島田彌六 舞台監督: 幸泉浩司公演監督: 佐々木典子配役 2月17日(水)/20日(土)ヘルマン 狩野賢一タンホイザー 片寄純也ヴォルフラム 大沼 徹ヴァルター 大川信之ビーテロルフ 友清 崇ハインリヒ 菅野 敦ラインマル 河野鉄平エリーザベト 田崎尚美ヴェーヌス 板波利加牧童 吉田桃子 4人の小姓 横森由衣(全日) 金治久美子(全日) 実川裕紀(全日) 長田惟子(全日) 二期会合唱団読売日本交響楽団※出演者変更:指揮者 アクセル・コーバー は、新型コロナウイルス感染症拡大にともなう新規入国制限のため、来日が不可能となり代わってセバスティアン・ヴァイグレ が出演。***東京二期会タンホイザーDay3まじですばらしかった!これは日本のオペラ史上に残る大傑作!音楽も演出も歌手も最高だった!大沼徹さんはワグネリアン・バリトンをやらせるとどうしてこんなにすばらしいのだろう。胸を打つ名演だった。ヴォルフラムをここまで細かく演じてくれて大満足。さすがの演技力を見せつけました。ヴォルフラムは彼のシグネイチャー・ロールになること間違いなし!全てがすばらしかった。自分史上最高のアンフォルタスを上回ったかも?詳細後述いたします。エリーザベトの田崎さんもすばらしい!会場を震撼とさせるパワー第3幕の悲痛な演唱すごかった。あのルサルカがよみがえってきた。魂で歌ってた。題名役の片寄さんもすごいゾーン入ってました。ヴェーヌス讃歌は慎重に歌っていましたがそこをクリアーしたら本来のパワーを放出。ヘルマン狩野さんも持ち前の美声をたっぷり聴かせてくれました。最高でした。カーテンコールではヴァイグレさんも感極まっていました。オケを称えていましたキース・ウォーナーの演出はすばらしかったです。さすがでした。こんなにオペラで感動したのは本当に久しぶりです。ありがとうございました。明日も楽しみです。ヴェーヌス板波さんをお聴きするのはデリラ以来ですが、やはりすばらしかったです。ヴァルターの大川さん ヴァルターのソロ、”Den Bronnen, den uns Wolfram nannte” もカットされてない パリ版+ドレスデン版混合、おいしいところどりヴァージョンで嬉しかったです。役者なのでヴァルターのお調子者キャラクターをうまく演じていました。ラインマルの河野鉄平さんも背が高く老け作りした武人の雰囲気がそれらしく素敵でした。3幕ではずっとバルコニーで昼寝(?)の演技をしていてよくあんな動かないでいられるなと感心しました。腰大丈夫でしょうか。ビッテロルフの友清さんもすばらしかったです。蛮人ビッテロルフではなくノーブルな貴人のビッテロルフでやはり魅力的でした。ビックリなのはタンホイザーのカヴァーキャストも務めていた菅野さん?メイクマジックでものすごくハンサムに変身していて驚きでした。東京二期会の次回のタンホイザー、彼が歌うのでしょうか。牧童も美しい声でよく聴こえました。巡礼の合唱の中に テノールは岩鶴さんも下村将太さん もいました。バスに寺西さんがいました。お疲れ様でした。***※内容に触れますので未見の方はご注意ください。第1幕の序曲ヴァイグレ読響ハープ2台と大太鼓パーカッションはしもてのそでの花道をつぶして黒幕で覆って設置。逆のかみてがわのそでの花道にも金管のバンダ?ようの同様のしつらえがある。ヴァイグレ読響は昨年の第九から繊細な表現に徹するようになったがここも大音響出さない。やはり楽器の数も少ないのかな?特にヴァイオリン。ここは不明。序曲の前半は幕が開かないが、バッカナールに入ると幕が開く。舞台はヴェーヌスベルクと言う名のあいまい宿なのかショーパブなのか。真っ赤な寝台がいくつかあって女たち(ダンサー)がタンホイザーに群がっている。ハインリヒ(タンホイザー)は奥の舞台の前に陣取って見ている。テアーター・イン・テアーターこれは絵画の画かくでもあり、ステージでもあり、映画館でもある。現実に生きている人の時代は19世紀後半から20世紀初頭にかけてのおそらくスコットランド。しかしヴェーヌスベルクのステージの中の鏡の中に入った人は時代を超越してあっちの世界(いろんな意味で)へ行ってしまう。ヴェーヌスと美の三美神たちの(?)絵画か最初は絵画なのにそれが動き出す。画格をはみ出して裸の肢体がうごめきだす(ここはプロジェクションマッピング)。ダンサーたちはハインリヒに黒の布で目隠しをする。ヴェーヌスがうつぶせの向きに抱えられて登場する。ヴェーヌスはハインリヒの黒の目隠しをとる。画格の中の男女はオールヌード(肌色の全身タイツ)。セパレートの水着にカラフルなレギンスにヴェールのニンフたちもいる。この服装は明らかにタンホイザーの設定である中世ドイツ(12世紀後半~13世紀前半)でもなく、今回の設定である近代スコットランド(19世紀後半から20世紀初頭)でもなく現代なので、時空を超えたものが混在している世界なのだと知る。タンホイザーは絵画に見入っているのでこの時点では画家なのかとも連想する。今回のキーワードは絵画少年個と全体の軋轢と障壁一貫してすべての大道具にバルコニーがあって狭いキャットウォークのようなものだが、そこにいろいろ仕掛けがしてある。しもてのバルコニーの上にはヘルマンが立っていて5歳ぐらいの孫を伴ってじっとタンホイザーを見ている。えっ⁉いきなり来ましたよ仕掛けが。頭がぐるぐる回りだす。この子供は2幕でわかるのだがヴェーヌスの子供だとわかる。つまり先に言っちゃうとヘルマンの孫か子だとするとヘルマンの子供(?)もしくはヘルマン自身が愛人であるヴェーヌスに子供を作らせたということ。ヘルマンはこの妾の子供に国を継がせたいのだが先王の娘エリーザベトがいるのでエリーザベトを破滅させる奸計をめぐらしたのか。なんて考えちゃうがそれは先走りかもしれない。そのオチは最後まで説明されません。この子供が出てきたことによって人間関係が複雑極まりなくなってしまう。真っ白い紙が無数に天井から落ちてくる。子供は下に下りていき、絵を描き始める。それを見ているタンホイザー。ヴェーヌスの怒りで子供は走り去る。ここでタンホイザー(=少年)かとも考える。タンホイザーはまた戻ってくる。タンホイザーのヴィーナス讃歌TannhäuserDir töne Lob!最高音はAb4(As4)その他でAあり。Dir töne Lob! Die Wunder sei'n geprieseno Königin, Göttin! Lass mich ziehn!o Königin, Göttin! Lass mich ziehn!o Königin, Göttin! Lass mich ziehn!Mein Heil! mein Heil ruht in Maria!うごめいていた人たちは退散する。しもての壁が大きく開き、光が照らされる。ここから巡礼が行進してくる。第1幕ではしもてからだが第3幕ではかみてから戻ってくる。さらに言うと、巡礼ではなく英国軍の兵士である。多分。Frau Holda kam aus dem Berg hervor牧童は長い杖を持っていて軍隊の行軍を礼賛している。長い杖をがらんと投げ捨てる。Zu dir wall' ich, mein Jesus Christ巡礼の合唱がすばらしすぎて震える。アカペラを指揮するヴァイグレタンホイザーAch,schwer drückt mich der Sünden Last第4場Vierte Szeneしもてのがらんと開いた入り口から姿を現すヘルマンらの一行。赤いタータンチェックの上着に赤いズボン、帽子、長剣、膝までの長靴。赤基調でとても美しい。身分の高い方々の狩りの服装だ。彼らも舞台上に上がって、ポーズをとる。ここツボでしたw狩猟の絵画のポーズとでもいうのか。獲物を背にする。今でいえばトロフィーショット。タータンチェックが出てくるのでこの人たちはスコットランドの貴族で、19世紀中頃から20世紀中頃ということになる。絵画から出てくる一行。ハインリヒに気づく。ヘルマンは先ほどの黒い衣装から上記の狩りの服装に着替えている。若々しいヴォルフラム、Heinrich der Schreiber, お調子者のWalther von der Vogelweide、いかめしいBiterolf、ラインマル Reinmar von Zweter は背が高くスレンダーで髪に白いものが入った武人。ヴォルフラムEr ist es!ヘルマンDu bist es wirklich?O fraget nicht!疑念の声をあげる貴族たち(ミンネゼンガー)だがヴォルフラムがいさめる。O bleib, bei uns sollst du verweilenWolframAls du im kühnem Sange uns bestrittestD3 - E4ヴォルフラム、去ろうとするハインリヒを説得する歌Wolframの聴かせどころWar's Zauber, war es reine Machtすばらしい!ここの大沼さんの演技、ヴォルフラムとしてどういう役作りにしているのかに注目していました。通常ヴォルフラムはタンホイザーに比べてやや弱弱しく押し出しが弱く理知的で優しい人物に描かれるが、大沼さんの今回の造形は、回りから見ると、大らかでいい奴で、仲間の信頼も厚くリーダー的、朗らかな人物、しかし…。ここではヴォルフラムは友人のことを思いやる善人気取りの偽善的人間としてせいいっぱい朗らかに歌っています。「見て、みんな、俺ってこんなに心が広いの」誰も疑わないヴォルフラムの心の闇。ヴォルフラムの心の闇はこの後どんどん深くなっていきます。大沼徹が驚くべき演技力でそれを演じていきます。ヴォルフラムにほだされた一行。重唱Sei unser, Heinrich!重唱最高にすばらしい!去ろうとする一行となかなかそちらに行けないタンホイザー、何度も戻ってきて見つめるヴォルフラム。第1幕了第2幕Zweiter AufzugErste Szene歌の殿堂同じセットですが椅子が碁盤目に並べられているウキウキしているエリーザベト。真っ白な服装。ちなみにまだ出てきませんが他の女性たちも全員白のロングドレスで20世紀初頭のイギリスの貴族の服装に近いかと。エリーザベトElisabethDich, teure Halle最高音はH”Sei mir gegrüsst! sei mir gegrüsst! du, teure Halle" の -Ha-すばらしい!唐突にヴォルフラムが入ってくる。彼はしばらくエリーザベトを見ているが、ハインリヒに入るよう促す。O Fürstin!ヴォルフラムは一番離れた席に腰かけて見ないふりをしながら二人の会話を聞いている。エリーザベトどうして帰ってきたの?タンホイザーEin Wunder war'sヴォルフラムは盛り上がっている二人にたまらず席をたち、出ていく。しかし背後の続き部屋から二人の様子を格子越しにじっと見ている。Heinrich! Was tatet Ihr mir an?タンホイザーを非難するエリーザベトの言葉、その言葉を聞くとヴォルフラムは自分にもチャンスがあると思ったのか立ち上がって部屋に入ってくる。入ってきてエリーザベトと見つめ合う。エリーザベトは目をそらす。Gepriesen sei die Stunde,gepriesen sei die Machtヴォルフラムはかみてがわの壁に張り付きSo flieht für dieses Lebenmir jeder Hoffnung Schein!希望は消えた。お互いの気持ちを確認し、盛り上がる二人、二人が接近したとき、ヴォルフラムが割って入る。エリーザベトを汚してはいけない。ヴォルフラムはハインリヒを連れていく。エリーザベトは立ち止まって見ている。ヴォルフラムは一人とどまって、じっとエリーザベトを見つめてから退出する。そう!このヴォルフラムは遠慮してません!俺の方が断然いいよと、エリーザベトに直接的アピールしまくりなんです。オタクではない健康的な男なんです!それなのになんでエリーザベトはハインリヒを選んでしまったのか…それはハインリヒの持つアーティスティックな超然とした魅力だと思います。個人の感想です。Dritte Szeneヘルマンが入ってくる。ヘルマンは乱れている椅子の位置を直したりしている。意外と神経質と言う役の造形か。LandgrafヘルマンNoch bleibe denn unausgesprochen”bis du der Lösung mächtig bist”の"bist”でLow F(F2)すばらしい!Vierte Szene第4場続く合唱女声4部トランペット3部白いロングドレスの貴族の女性たちと軍の将校たちの入場。全員男性は軍服です。赤いベレー帽赤いズボンThüringens Fürsten, Landgraf Hermann, Heil!続いて入場したミンネゼンガーたちも全員同じ軍服。長剣帯刀。もちろんたてごとなど持っていない。ここでまたまたびっくりするのがかみてがわのバルコニーにヴェーヌスがいる。毒々しい雰囲気を醸し出して一人だけ別の世界の人。しかしヴェーヌスが下に下りてくるとヘルマンの孫(子供?)がヴェーヌスに抱きつく。ここであーヴェーヌスの子供なのかとわかるわけです。ううむますますわからんな~となるわけです。歌合戦ヘルマンGar viel und schön ward hier in dieser HalleLandgrafの聴かせどころDer Anmut und der holden Sitteすばらしい!deshalb stell' ich die Frage jetzt an euch”euch" でAs2könnt ihr der Liebe Wesen mir ergründen?お題は「愛の本質」だ!ミンネゼンガーたちはびっくりして輪になって相談している。小姓4人(軍服)が紙をエリーザベトに選ばせる。Wolfram von Eschenbach, beginne!ヴォルフラムはステージの上に立つ譜面台があるのだがわざわざどける。ヴォルフラム独唱Blick' ich umher in diesem edlen Kreise中盤Da blick' ich auf zu einem nur der Sterne終盤の始まりUnd nimmer möcht' ich diesen Bronnen trüben,berühren nicht den Quell mit frevlem Mut:in Anbetung möcht' ich mich opfernd üben,vergiessen froh mein letztes Herzensblut.泉を汚したくありませんそのためには最後の血の一滴まで捧げる覚悟です。最高音はEs4wie ich erkenn' der Liebe reinstes Wesen! の”Liebe”ほかの計2か所タンホイザーの反論タンホイザーはバルコニーのヴェーヌスに操られている。ヴァルターがさっさとステージに登る。おおヴァルターのアリアがある!これは驚きだ!この瞬間までそれがきちんと説明されていないのでわからなかったが第2幕版は一部ドレスデン版を採用とはそういうことだ。ヴァルターDen Bronnen, den uns Wolfram nannteまたもやタンホイザーが反論しビッテロルフが壇上へHeraus zum Kampfe mit uns allen!タンホイザーはあざける。Ha, tör'ger Prahler, Biterolf!会場が大混乱する皆が振り返ってエリーザベトを見ている。ヴォルフラムが傷ついたエリーザベトを守るようにエリーザベトの膝に抱きつく。「私に歌わせてください。あなたをお守りする歌を…」エリーザベトは身をよじってヴォルフラムの懇願を避ける。ヴォルフラムは立ち上がるO Himmel, lass dich jetzt erflehenDu nahst als Gottgesandte,ich folg' aus holder Fern', -so führst du in die Lande,wo ewig strahlt dein Stern天使のようなあなたに私は遠くからついていきますあなたが星になって永遠に輝く地で。タンホイザーDir, Göttin der Liebe, soll mein Lied ertönen!zieht hin, zieht in den Berg der Venus ein!エリーザベトはがっくりと膝をつき、気を失い倒れるタンホイザーのおぞましい言葉に、全員が席を立つ。女性たちは全員いっせいに退場する。人々は椅子を直線状に並べる騎士たちはエリーザベトを抱き起しハインリヒから遠いところに連れていく。タンホイザーを糾弾する人々。エリーザベトHaltet ein! Ich fleh' für ihn, ich flehe für sein Lebenエリーザベトは騎士たちを一人一人剣をおさめさせていく。ビテロルフは剣を鞘に収める。ラインマルは剣を下げられるとその剣を床につき寄りかかるようにして苦悩している、ヴァルターも剣を収める。そしてヴォルフラムヴォルフラムがタンホイザーに突きつけていた剣がエリーザベトによって下げられる。怒りにたぎって憎しみに満ちていた表情が一転。ヴォルフラムはエリーザベトの自己犠牲を理解した。茫然と信じられない、どうして?という思いと希望を失った表情を浮かべている。嘆きの重唱しかし、タンホイザーがエリーザベトに近づくと激高し、割り込むヴォルフラム。エリーザベトは並べられた椅子の上を奥の方へ歩いていく。美しい重唱がやみ、一転、ヘルマンはヴォルフラムの下げていた長剣を鞘から引き抜く。ヘルマンが激しく歌う。Ein furchtbares Verbrechen ward begangenLandgraf の ソロ 高音 ミドルC (C4) あり。ヘルマンと騎士は斜めに列を組み、捧げ銃の体制で一歩一歩タンホイザーにちかづいていく。しかしヴォルフラムだけが背後の椅子に崩れるように腰かけている。彼にはタンホイザーを糾弾できない。エリーザベトの自己犠牲を理解したからだ。また個人主義と全体主義の対立の中で個の自由を認めるべきではないかとヴォルフラムも考えだしたからだ。人々Mit ihnen sollst du wallenzur Stadt der Gnadenhuldここの重唱は完全版。(新国立劇場の直近の「タンホイザー」でカットされていた、後半部分、最高にエキサイティングな最高の重唱がきょうは演奏されたのだ!)ここの楽譜もすごいことになっている。騎士たちには全部独立した楽譜が書かれており、極めてスピーディに進行する。ヴァイグレの圧倒的にスピード感のある牽引がもう最高です!思えば2005年9月のバイエルン歌劇場来日公演でここの重唱+合唱を聴いて以来、オペラに、ヴァーグナーの世界にはまったのだ!大感動~タンホイザーNach Rom!タンホイザーは下がってきた金属の輪の中に入っていく。これは牢獄の暗示なのか?罪を償うってそういうことか?第2幕了第3幕ヴァイグレの序曲がまたすばらしい!広いがらんとした会場小さくちぎられた紙のようなごみが無数に散乱している。ステージはむき出しになってそのままあるが左右の壁がなくなっている。ひっくり返った赤い寝台がひとつ。椅子中心にエリーザベト。死んだように動かない。しもてのバルコニーで騎士たちが仮眠している。かみてのバルコニーには純白の婚礼衣装がトルソーにかけてある。ヴォルフラムWohl wusst' ich hier sie im Gebet zu findenエリーザベトが生きているのを確認してヴォルフラムが歌いだすDies ist ihr Fragen, dies ihr Flehen, -ihr Heil'gen, lasst erfüllt es sehen!Bleibt auch die Wunde ungeheilt, -o, würd' ihr Lindrung nur erteilt!エリーザベトの願いを天が聞き届けてくれますように!傷は癒えることはないでしょうが少しでも救われますようにすばらしい!エリーザベトが巡礼の声を聞く。戦争の敗残兵たちの帰還エリーザベトはハインリヒを探すがいない。Halleluja in Ewigkeit!エリーザベトEr kehret nicht zurück!ここからの絶唱がものすごかったです!!!Allmächt'ge Jungfrau, hör mein Flehen!自分の肉欲の罪を吐露する。Doch, konnt'ich jeden Fehl nicht büssen,so nimm dich gnädig meiner an,dass ich mit demutsvollem Grüssenals würd'ge Magd dir nahen kann:um deiner Gnaden reichste Huldnur anzuflehn für seine Schuld!すばらしい!ヴォルフラムは彼女の絶望を見て、自殺しようとしていることを察知するヴォルフラムはエリーザベトに近づきElisabeth, dürft' ich dich nicht geleiten?お供させていただけますか?エリーザベトは抱きしめんとするヴォルフラムの肩を手で押し、拒絶の意を示す。エリーザベトはよろよろと去っていく。エリーザベトはステージに上がる階段で何度も転ぶそして、鏡の中に消える。鏡ががらんと回ると誰もいなくなったヴォルフラムにピンスポットヴォルフラムWie Todesahnung Dämmrung deckt die Landeda scheinest du, o lieblichster der Sterne,dein sanftes Licht entsendest du der Ferne;すばらしい!ヴォルフラムは落ちている楽譜を拾い、捨てるO du, mein holder Abendsternすばらしい!ヴォルフラムの歌も新境地を迎えたのだ。恐ろしい光景。ヴォルフラムは落ちていた紙に自分の今歌った詩を書きつける。そして回りのごみをかき集めてかぶせて覆い隠す。すると…タンホイザーIch hörte Harfenschlagそこにタンホイザーがいた!空間移動?(暗転の間にそこに来た)ヴォルフラム:Heinrich! Du?ヴォルフラムは怒りを露わにするNie war ich es, so lang' ich fromm dich wähnte! -Doch sprich! Du pilgertest nach Rom?怒りの演唱です。大沼さんらしくわざと声を荒げて崩して歌っています。ドイツ語が分かっていないとこれはできません!!いよいよタンホイザーのローマ語り。Inbrunst im Herzen, wie kein Büsser nochsie je gefühlt, sucht' ich den Weg nach Rom背後のステージのスクリーンに巡礼の人々の群れる様子と荒涼とした木々が映し出される。タンホイザーはステージ上に上がり«Hast du so böse Lust geteilt,dich an der Hölle Glut entflammt,救済は与えられなかった…エリーザベトが命を賭して与えようとしたものが与えられなかった…ヴォルフラムは絶望し壁に頭をつけている完全にゾーンに入っているタンホイザーの歌唱がすさまじい!タンホイザーはヴェーヌスを呼ぶ。やめろ!タンホイザーにつかみかかるヴォルフラムタンホイザーはヴォルフラムを押しのける。ヴォルフラム吹っ飛ぶ(ここは大沼さんらしい大ジャンプ)妖の女たちが鏡の中から登場するヴェーヌスと裸の男女ヴェーヌスWillkommen, ungetreuer Mann!ヴォルフラムHeinrich, - ein Wort, es macht dich frei -:dein Heil -!ヴォルフラムEin Engel bat für dich auf Erden -bald schwebt er segnend über dir:Elisabeth!タンホイザーElisabeth!エリーザベトの棺が抱えられ入場する。ヘルマンがじっと付き添っている。ヴェーヌスはがっくりうなだれ座っている。ヴォルフラムは身も世もあらぬ表情で慟哭棺に身を寄せているヘルマンは黒い目隠しをして棺にすがって泣いている。手に握りしめているのは婚礼衣装の花嫁のヴェールか?(不明)タンホイザーHeilige Elisabeth, bitte für mich!合唱Der Gnade Heil ist dem Büsser beschieden,er geht nun ein in der Seligen Frieden!タンホイザーは光の輪に入っていく光の輪は今度は先端が緑色になっている。芽吹いた象徴のようだ。お疲れ様でした。やっぱり感動しかありません!すべてが最高でした。感謝しかありません!!!参考リンク:東京二期会タンホイザーDay4 衝撃の演出の謎解明!Tannhauser 予習編