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2024年09月28日
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日生劇場<オペラを知る>シリーズ 2024
日生劇場×藤原歌劇団 合同企画
11月上演ドニゼッティ作曲オペラ『連隊の娘』『ピーア・デ・トロメイ』レクチャー
その2.音楽レクチャー
オペラ作曲家ドニゼッティ・その音楽の魅力
『連隊の娘』と『ピーア・デ・トロメイ』

2024年9月28日(土)14:00 開演(13:30 開場)
上演時間 2時間(休憩含む)
日本生命日比谷ビル7階大会議室

ピアニスト河原忠之がピアノ演奏と出演歌手による実演を交えドニゼッティ音楽の魅力を解説。

河原忠之(ピアニスト)
砂田愛梨(ソプラノ)
糸賀修平(テノール)
富永果捺子(ソプラノ)

***
{文中敬称略)

河原忠之さんのドニゼッティレクチャーコンサート

ビックリするほど高度なレベルでビックリ‼️
まさに音楽レクチャー
まるで声楽をやる人に向けたような内容だった!
大変ありがたく、興味深かった。
会場は満席ということで
客は二六のテーブルで講義を聞く態勢。

こういうレクチャーは絶対他はない。

日生劇場のターゲットはここまで高度な人たちなのか!

あまりのすごい内容でびっちりメモして手が痛い。予備校の時以来です。

この濃い講義にプラスして、本役とカヴァー歌手3人が極めつけのアリアを計4曲披露する。

最後は事前に集めた参加者の質問に答える出演者のコーナーでこれも意外な質問と回答でとても面白かったです。

***
(以下、メモを元に概要を記載。)

一部:『ピーア・デ・トロメイ』
Pia de' Tolomei is a tragedia lirica (tragic opera) in two acts by Gaetano Donizetti.*

河原氏解説:
・『ピーア・デ・トロメイ』は実話と言われている。ダンテの『神曲』よりとられている。煉獄編の第五歌 」以上河原氏解説。

(Salvadore Cammarano wrote the Italian libretto after Bartolomeo Sestini's verse novella Pia de' Tolomei, which was based on Canto V, vv. 130–136 from Dante's narrative poem The Divine Comedy part 2: Purgatorio. *;*from Wikipedia)

 <付記> 130–136行の内容:
’Deh, quando tu sarai tornato al mondo
e riposato de la lunga via»,
seguitò ’l terzo spirito al secondo,
«ricorditi di me, che son la Pia;
Siena mi fé, disfecemi Maremma:
salsi colui che ’nnanellata pria
disposando m’avea con la sua gemma

「ボンコンテが話し終えるとすぐに、悔悟者の魂が床に着きます:彼女はダンテに、彼が世界に戻り、長い旅から休んだとき、彼女を思い出すように頼みます、ピア・デ・トロメイ:彼女はシエナで生まれ、その後マレンマで暴力的に亡くなりました、結婚で彼女に結婚を求め、彼女に結婚指輪を贈った男がよく知っているように」<以上、付記>

河原氏解説:
・ベルカントの作曲家の系譜について説明、Rossini,Bellini, Donizetti ときてVerdiに流れ着く。

・1835『ルチア』初演、1837『ピーア・デ・トロメイ』初演(premiered on 18 February 1837 at the Teatro Apollo in Venice*)、<抒情悲劇 tragedia lirica>の分類、1840『連隊の娘』<オペラ・コミック Opéra-Comique>初演」

・1838年にナポリのサンカルロ劇場で再演、検閲でハッピーエンドに書き換えさせられた。

・(今回の上演では(?))2版のセニガッリア版(performed on 31 July 1837 in the Adriatic resort of Senigallia*)3版のナポリ版(performed on 30 September 1838 in Naples*;*from Wikipedia)の1幕フィナーレを採用。

・Verdiの’La traviata’にそっくりな部分がある(実演)。書かれた年代は「椿姫」の方があと(1853)。

・調性について:♭系と♯系に分かれる。♭系は柔らかく聴こえる。(例えば)Pucciniは♭から#に変えて、シーンを変えたように表現している。映画のフラッシュバック(?)のように。(1幕でロドルフォが歌う)♪冷たき手を のメロディを最終幕でミミが歌う時、調性が変わる。お客さんに色々なことを想起させる効果。

・富永果捺子さん(ソプラノ)(ピーアのカヴァーキャスト)の歌う、1幕のアリア、変イ長調→ト長調に変わる。

<ベルカントの発声について>

・ベルカントをどう捉えるかは人によって違う。(河原氏の解釈では)
①7つの母音を同じ響きで聴くことができる。開口母音、閉口母音、同じ響きでイタリア語らしく聴こえること。これは難しい。
②子音と母音のくっつき方。どう子音がついたらイタリア語らしく聴こえるか。
③スルフィアート:息に送って表現すること、パッサッジョの問題。(河原氏の説明では)「エスカレーターの乗り換えるところ」がパッサッジョ。乗り換えてないように聴こえるのがよい。パッサッジョが聴こえないために、ジラーレ(回す)ことで乗り換えをわかりにくくすること。

・一番違うのは倍音である。ピアノでも倍音を見抜く力がある。(実演、ペダルを踏んだ場合とそうでない場合の比較)倍音に次の音を混ぜていく。つなげていくとレガートができる。倍音を聴く力が大事。欧米人と日本人は倍音(の発声)が全然違う。器楽では世界に伍しているのに、声楽では出ない。倍音が響いていないと本人が自覚しないといけない。歌っている時に自分の声を耳で聴かないで倍音を響かせれば劇場の隅に届くはず。鳴ってないなと声帯を使って鳴らすと倍音は鳴らなくなる。

・(富永さんの歌唱で)悲しみが喜びに変わった時にどうなるかを体感してほしい。」以上河原氏解説。

富永果捺子さん(ソプラノ)(ピーアのカヴァーキャスト)登場

 歌唱実演
『ピーア・デ・トロメイ』よりアリア
♪おお、怒りの雷を打つ神よ
O tu che desti il fulmine
富永果捺子

(富永果捺子さんはリリコ・レッジェーロ・ソプラノでしょうか。最後の最高音はHigh Dでしょうか。)

河原氏から富永果捺子さんへの質問:
Q(河原): ベルカントの作曲家について心がけていることは?
A(富永): イタリア語で美しいという意味、ベルカントのスタイル様式で表現するために、美しいフレーズ、ダイナミクスなどたくさんのことが詰まっている様式感。私には課題がたくさんあるがそれらすべてを満たして表現するにはどうするかを究めていく。
Q(河原): フレーズ感とおっしゃったのはどういうことですか?
A: 休符の捉え方を大事にしている。この休符はうれしいのか?
河原:休符は「休み」ではない。フレーズは長ければ長いほどいい。
富永:1本の糸で吊られたような緊張感がある。
Q(河原):ドニゼッティ(作品)で心がけていることは?
A(富永):これまで喜劇中心に勉強してきた。(今回)楽譜を見返してみた。息の捉え方、フレーズの捉え方で。うれしいのか、悲劇なのか。内面から出るものを表現していきたい。それらが詰まっている作曲家です。
河原:ドニゼッティは単純ととらえられる作曲家だが、少ない音符だからこそ内面を表現できる。声だけの瞬間が多い。休符は「無符(むふ)」とも言います。その時に演技、動きが隠れている。どういう演技をするかは無符の時に決まっている。以前はそういったことを演出家が教えていたが、今は歌手本人が楽譜を見てやっている。

富永:(PRタイム)日本では上演機会が少ないオペラなので、音楽が新鮮に感じる。新しい扉を開けることになる。皆様にお聴きいただければ嬉しい。

河原:(富永に)(日生劇場では)(声を)押したらだめです。

<休憩>

河原忠之氏 ※写真は2021年撮影
Photo:©Shevaibra, courtesy of the artist

<第二部>「連隊の娘」
1840『連隊の娘』<オペラ・コミック Opéra-Comique>初演

La fille du régiment is an opéra comique in two acts by Gaetano Donizetti, set to a French libretto by Jules-Henri Vernoy de Saint-Georges and Jean-François Bayard. It was first performed on 11 February 1840 by the Paris Opéra-Comique at the Salle de la Bourse.*;*from Wikipedia

河原:オペラコミックでは歌の間にセリフが入っている。これは日本人にはハードルが高い。フランス語のセリフがあってこそ生きる。猛練習している。そのへんも期待してほしい。
 この作品をドニゼッティは4時間で書いたと言われている。
 後期の作品だから和声をまっすぐに届けることができる。
 (演奏曲解説)マリーの歌う「軍歌」♪誰もが知っている、誰もが口にする は、砂田さんは回りの兵士に向かって歌う。
 ♪なんて楽しい日 は高いドの音が難しい。楽譜に書いてある高いドが10回ぐらいあるんですよね。昔クリス・メリットが歌っていて魅せられた。心が震えたんです。」以上河原氏解説。

『連隊の娘』より3曲続けて演奏

<連隊の歌>♪誰もが知っている、誰もが口にする
Chacun le sait, chacun le dit
マリー:砂田愛梨

 まさに声の奔流!

トニオのカヴァティーナ
Mais, ô ciel! quel bruit et quel éclat!
♪ああ友よ、なんて楽しい日
No. 6, Cavatina and Cabaletta
トニオ:糸賀修平
Range:G3 - C5

Pour mon âme,Quel destin! J'ai sa flamme,
Et j'ai sa main! Jour prospère! Me voici
Militaire et mari!

Pour mon âme,Quel destin! J'ai sa flamme,
Et j'ai sa main!

Militaire !!!

 すごい!完璧なHi C!

〈ロマンス〉「私は行かなければならない」
Il faut partir !
マリー:砂田愛梨

 DIVA!泣けてくる。彼女の歌唱は、正直、完全にドニゼッティを超えた表現!

<河原氏から二人に質問>

Q:ベルカントとは何か?ベルカントで絶対しないことは?

糸賀:ベルカントは時代の中で生まれた発声方法。胸声(きょうせい)をあまり使わない声。全てつなげていく母音がきれいに出る発声法。発語するように歌うこと。

砂田:発語。言葉がいかに…。今はマイクがあるけどその時代にはない。生の声で遠くにシンプルにナチュラルに届くかが前提である。ベルカントはイタリアの響きの声が前提にある。
砂田:自分が声を出したという感じではない。
砂田:イタリアでは感じます。様式でそこまではと感じます。総合芸術、空間芸術と思う。音量ではない。劇場の大きさも関係する。
河原:スカラは響かないんですよ
砂田:上だと聴こえる。そういう技術を使っている人いる。

河原:ドニゼッティを演じる時に考えていること、こういうところを見てほしいというところは?

糸賀:ベルカントの話、その時代に頭声から胸声に変わる時期があるんですよ、デュプレが登場してオペラが変わっていく時代。僕は胸声で出すことももちろんですけど、ドラマ性、言霊で物語が進んでいくドラマが好き。この作品の魅力は合唱にもある。合唱がアリアを盛り上げてくれる。いいオペラになると思っている。
河原:音に言葉ではなく、言葉に音をつける感じ。ディクションがFifty,fifty。Fifty,fiftyだと言葉が聞き取れない。

砂田:ドニゼッティは、ロッシーニ、ベッリーニと色が違う。色、ニュアンスで分けてしまっている。その方が様式を把握しやすい。ドニゼッティは華やか、Rossiniは爽快、ベッリーニはしなやかさ。色が白、ブルー。メロディ、ドニゼッティをその2つとっている。そこからVerdiにつながってる。答えを見つけていないんですけど。
砂田:ルチアはベッリーニっぽい。Verdiにも似ている。

(PRタイム)

河原:音楽はピアニッシモ、メッザ・ヴォーチェに宿る。さっきの歌で内面が動かされることあったと思う。

<質疑応答>

Q: 『ピーア・デ・トロメイ』は
A: 日本で上演されるのは今回で2回目。

Q: カットされるのか?
A: ほぼカットされずに上演される。

Q: 今秋ベルカントに注目集まっているのはなぜか。
A: 歌える歌手が増えてきたから。(例えれば)免許証を持っていれば運転できる。

Q: 調性の変化は♯から♭へもあるのか?その場合の効果は?
A: 透明感がある。(実演し)Wagnerも採用している。

Q: 合唱をやってきた。バスの倍音を聴くようにしている。どう聴けばいい?
A: 倍音を聴く脳の力。人と合わせるのは難しい。

Q: モーツァルトとベルカントの関係は?
富永:ドラマの持っていき方が違う。『ピーア・デ・トロメイ』は自分の感情をじわじわと外に拡げていく感じ。役の作り方、レチタティーヴォが違う。
糸賀:モーツァルトはアンサンブルがすごく多い。アンサンブル・オペラだ。コジとか。アコンパニャート(レチタティーボ・アコンパニャート recitativo accompagnato(伴奏付叙唱) 管弦楽の伴奏をもつもの。アリアに先行するレチタティーボに用いられている 青字部分 from コトバンク)があって。歌い方のスタイルがだいぶ違う。ハーモニー。根本的には一緒。言葉を紡ぐのが大事。
砂田:モーツァルトは器楽的。モーツァルトがイタリア語をどのくらい話せたのか考える。『魔笛』は器楽的だが、メロディ性が言葉とミックスされた磨かれた作品。ベルカントへの影響。モーツァルトの時代では画期的だったと思う。新しいことを入れているのがRossini, Bellini, Donizetti に影響して独自のスタイルを磨かせることになったと思う。

Q:今後歌いたいもの?

富永:グノーの「ロミオとジュリエット」

砂田:この2作品はベルガモのドニゼッティ・フェスでもあまり見ない演目。「連隊の娘」はイタリア以外では流れが来ている。
(今後)ヴェリズモばかりに行くのではなく、フランスものを歌える歌手。グノー、マスネの『マノン』、ビゼー、プーランク。ドニゼッティを勉強してきた。Verdiの初期作品を歌えるようになりたい。

河原:世界で活躍する歌手を作るのが我々の使命。どうか応援してほしい。(拍手)

了。

お疲れ様でした。
※うまくメモできず意味不明な部分も一部そのまま載せています。

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2024年06月16日 日生劇場ピロティコンサート ピーア&連隊の娘

日生劇場 11月上演ドニゼッティ作曲オペラ『連隊の娘』『ピーア・デ・トロメイ』レクチャー

【本公演】

2024年11月22日 (金) /23日 (土・祝)/24日(日)
オペラ『ピーア・デ・トロメイ
誤解と和解、そして愛への忠誠
運命に翻弄された女性ピーアの、慈愛に満ちた物語

2024年11月9日 (土) /10日 (日)
オペラ『連隊の娘
爽快で華やか!
ドニゼッティの傑作ラブコメ・オペラ





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最終更新日  2024年10月03日 10時04分43秒


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