功名が辻
この時期にこの本の感想を書くとミーハーな感が否めないが、司馬遼太郎 著のこの本は再来年のNHK大河ドラマの原作である。「利家とまつ」がヒットして以来パッとしていない大河ドラマだから、似たようなシチュエーションを狙っているのだろう。だが、原作に限って言えばこれほどおもしろいものもないと思う。つい先日後輩に貸してやったばかりだが、後輩は「いやー、おもしろいですね。嫁さんにも読ませようと思いましたよ。」と言っていたが、実は自分も嫁に読ませたのである。勿論、無理強いして読ませた訳ではないが、読み始めるとおもしろさが解ったらしい。戦国三大賢妻と言われるらしいが、利家の妻まつ、秀吉の妻ねね、一豊の妻千代の中でも、千代が一番賢妻だろうと思う。利家も秀吉も自分の能力もあってのあの地位にまで登りつめたと思うが、一豊は表面上ほとんど能力らしい能力は見受けられない。恐らくその差が、利家や秀吉との地位の差のような気もする。しかし、ひょっとすると素直だったことが最大の能力だったのかもしれないとも思う。これが、千代のように賢妻ではなく悪妻であればえらいことになっていたことだろうとも思う。司馬遼太郎がまるで世の女性に言っているように、「男とはこのようなものである。」というような発言何件かあるが、非常に印象に残っている。ただ、この作品が大好きな友人が、最後の部分はかなり現実を直視させられるというか、夫婦で力を合わせてやってきた結晶が、遂には自分達の手に負えないような事態になってしまうような帰結になっているのだが、、それがどうにも残念だと言っていた。確かにそうかもしれないが、この夫婦が創った藩で坂本龍馬、山内容堂、板垣退助が生まれるのである。幕末の土佐風土の土台を培ったのが、この二人というのが何とも不思議な気がする。