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生来の悪筆なので、筆記用具に凝るのも申し訳なく、ふだん使うのは先のやわらかなBの黒鉛筆だったり、ペン先がころころ転がる証券用インクのボールペンだったり、100円くらいで手に入るものばかりなのですが、この本を読んでいる最中、万年筆を欲しいと思いました。
クローズト・ノート 雫井脩介 角川書店 そういえば、母親のやわらかな布の筆入れの中に、黒い軸の万年筆が入っていました。金の飾りがきれいでした。 小学生の時、学校に提出するため、母親が作成した書類はいつもブルーブラックのインクの万年筆で書かれていました。大事な書類だから、母親が万年筆で書きものをしているときは、机を揺らさないよう、部屋をそうっと歩きました。 万年筆に触らせてもらったことはあったけれど、母は決して、使うことを許しませんでした。 自分のものではないクセがつくから、と、やんわりと止められました。 母の万年筆は、母だけの筆記用具でした。 私は母のようにはきれいな字を書くことはできません。ボールペンを使っても、手にインクをつけて紙を汚してしまいます。 けれど、いいな、と思いました。 自分の手に馴染む、自分だけの万年筆。 仲良くなれる万年筆がみつかれば、インクをこぼして紙や軸や手を汚しても、へったくそなクセ字でも、安心して文字が書ける気がします。 書くというのは、ひとつの勇気。 書き残すのは、ひとつの覚悟。 伝えたいのは、存在のこと。 残した文字は、紙にしみこみ、伝わっていく。 たとえ、書き手がいなくなっても、見えないものが、残るんだよ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年01月09日 20時30分48秒
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