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2010年01月13日
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加納朋子さんの「ガラスの麒麟」と「レイン・レインボウ」
何度も読み返しています。おだやかで繊細な物語なので、再読に馴染むのです。

「レイン・レインボウ」は心臓の持病があるのに9時10時まで残業して、過労死してしまった25歳の女の子の死をとりまく、高校時代の友人たちの物語です。最初、学生の頃読んだとき、死んだ子が、なぜ病気を偽ってまで働きたかったのか、それがわからなくて、物足りない物語でもあったのですが、今、読み返すと、あんまりそこに引っ掛からなくなりました。
じっさい、この物語はいつだって生きていく人のための肯定の物語で、だからこそいなくなってしまった子の失われた輝きが惜しくってたまらなくなるのですが、彼女の喪失は物語世界のなかで運命づけられているのです。

理由はいらない。

働きたかったのではなくて、働くのが当たり前だから働いたのでしょう。その中で、病がハンデだったのでしょう。
「病気になったら休めるよね。」
とっても忙しかった時期、同僚と合言葉のように言っていました。けれど本当に病気になったとき、わたしたちは隠そうとしました。休んでいる時間がない。それだけ、言い捨てました。

時間はあります。
誰にもひとしく、24時間。

頭ではわかっているし、理屈もよくよく知っているけど、「流れ」というものがありました。「流れ」の中、時間が消えていきました。

加納朋子さんのお書きになる物語には、手触りがあります。ざらりざらり、感覚と伝えようとつかわれる比喩の重ね。加納さんは、OLさんだった時代、お勤めの最中、きっと時間の消える「流れ」の中にいたのでしょう。

「ガラスの麒麟」は女子高生の物語。けれどそれを見つめる目線は、少女から大人になって、『どうしてあんなに繊細だったのだろう?』首をかしげつつ、繊細ではなくなってしまった自分を自嘲する若い女性のものだと感じます。
物語を書いた時期の、加納さんの目線。

加納朋子の小説は好きでずっと読んでいるのですが、「ささらさや」以降の小説は、母の目線に過ぎて、ぴんとこないことがありました。母である人が読むときっとぴんとくる、そんな感覚の数々を、母ではない私は、上滑って読みました。

加納さんがお書きになる物語は、すごく正直な小説なんだと思います。若草物語のジョーを見習って小説をお書きになっているんでしょう?問いかけたい気分。
本当にあった出来事が、一番、おもしろいのです。
等身大で。自分の感覚を大事にして、ひとつひとつ、積み上げて、書く。
環境が、読み手とずれることもあるし、ぴったり重なることもある。

この頃の加納朋子さんの新作を読むと、お子さんがだいぶん手を離れたんじゃないかなって思います。
お子さんを見守る母の目線ではなく、成長した子供の目を借りて、自分の少女時代を追体験する、少年時代を想像する、そんな目線にシフトしてきている気がする。

本の表紙を、すうっと手で撫でることが好きです。





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最終更新日  2010年01月13日 08時54分36秒
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