テーマ:幻想的ナ物語ノコトナド(100)
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今日はあたしの受験の日。ママはこの頃ばたばたしている。
今朝のご飯は、白飯に刻んだ生ネギをどっさりのっけて、真ん中に生卵の黄身だけ落として、日の出をイメージしたんだって。これできっと日が昇る、合格に向けて縁起がいいって、ママは興奮してしゃべってる。 それであたしは、きのうの晩御飯の海苔巻、真ん中に卵焼きだけの具になっていたわけがわかった。おネギのお味噌汁は辛いばかりで味がなかった。ママは1人でしゃべっていたけど。 こないだからあたし、生卵の黄身ばっかり食べている。あとネギと。 あたしはおとなしくご飯を食べる。ママがDHAにもう一度目覚めませんように。お祈りする。あたしは青いお魚より、白いお魚の方が好きなの。サケとか。 妹も受験。まだ受験できる年齢じゃないのに受験。雰囲気味わっておけば本番のとき緊張しないからって。一緒に学校いって、妹は門のところで待ってなさいってママが言う。寒いのに、かわいそう。 ママがネズミのキャラクターがプリントされた緑色のタイツを持ってきた。あたしのラッキーカラーは緑なんだって。どこからみつけてきたんだろう。あんまり好きじゃない。けど、妹はこれ使った方がいい。妹に、タイツ履くように言ったら、妹は、お姉ちゃんが履かないとこれ履く勇気がないって言う。 いやだ。 タイツはちゃんとふたつある。妹は門のところで待ってないといけない。あきらめた。ふたりで緑足ちゃんになる。 受験終わって出て行くと、門で待っていた妹がちょこんと飛び出してきた。鼻水が出てる。手をすりあわせている。あたしは妹と手をつないだ。手の中の小さな手が、冷たい。 あたしと妹と、並んで歩いていると、道を聞かれた。 こんなタイツ履いてる日に、道なんか聞かないでほしい。あたしの趣味じゃない。緑のタイツの上から、ママが用意した盃模様の分厚い靴下を履いている。これは絶対に私の趣味じゃない。 あたしは妹と手をつないだまま、挑戦的な眼差しで道を尋ねてきたおじさんを見上げる。 納得いかないことばっかりだけど、あたしは誇りを失わない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年03月25日 08時07分21秒
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