カテゴリ:読書日記
亡くなられたことを知ってから読む闘病記。 以下、病気についてストレートな感想を書きますので、ご注意ください。 どこか楽天的に、毎日の痛みがつづられていました。 最後がどうなるか知っているから、「あ、そんなの食べて。」「あ。そんなお出かけして。」と、はらはらしました。 自分にガンがあることをよく知っていながら、余命つきかけていることに目をそむけているような。 痛いのも、ご飯が食べられないのも、お腹がくだるのも、足がむくむのも、腹水がたまるのも、原因はひとつなのに。1種類の抗がん剤を飲むだけの治療に疑問を呈することもなくて。 栗本薫(中島梓)は読書家です。生と死とエロスに物語的なあこがれをもって小説を書いてきた人だと思っています。 その彼女が、すい臓ガンの予後を知らなかったはずはない。読んでおられなかったのだろうか、ふるい少女マンガ、大和和紀「菩提樹」の先生の死因もすい臓ガンです。予後が悪いガンとして、物語にさまざま登場しているような印象があります。背中が痛い、という、描写。 この本を読んだお医者様のブログを読みました。 ガンが着々と進行しているのに気付かないでいる患者が痛々しい、という、視点でした。 たいへん興味深い記事でした。 「転移」を読みながら、(これはガンからきている症状ではないのかな)と思ったところが、ガンからきたものだ、と明瞭に説明してありました。 なのに、著者は気づいていない、と。 一日つらつらと考えているのですが、栗本薫は、中島梓は、気づいていたのではないのかな。 だけど、気づかないことにしていたのではないのかな。 冒頭で、すい臓ガンの転移した肝臓ガン、と説明しながら、その後は一貫して「肝臓にあるガン」と書き続けた。お医者さまの説明を待ち、悪いことをつっこんで尋ねようとはしなかった。たとえば、抗ガン剤を飲んでいるのに、なぜガンが増えるのか、とか、大きくなっているのかとか。(手記に書かれなかっただけかもしれませんが。) 毎日、「これを食べた」「これが食べられた」「これを食べたけれど後からお腹が痛くなった」「今日は食べられた」と、大切に、体力を作る食事の記録がされていました。 食べものの記録だから、最後まで読ませる闘病記にもなったのだと思います。 死を見据えているようで、死から逃避した闘病記。 当たり前だと思う。 死ぬのは、怖いもの。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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