ほっとする場所クライネシャイデック駅-食べて観て楽しむ旅
添乗員泣かせのツアー難所というものがある。ガイドさんが来てくれない地域で、添乗員一人でその日一日をアテンドしなければいけないような。そしておまけにその日は乗り物の時間がキッチリと組まれていて集合時間に1分でも遅れてもらっては困るような日である。そんな大変な場所の一つにあげられるのがスイス。ジュネーブなどの市内観光にはガイドさんが普通ついてくれるが、絶対に一人でやらねばならない日の一つ、ユングフラウ観光の日だ。会社の中で一日中、添乗員レポートや資料が詰まった部屋に篭り、最新の情報を仕入れコピーして、仲間からあんちょこをもらい、自分の準備ノートも赤のボールペンで「はやめはやめ」とか「ここでは絶対に解散しないこと」とか、何やら異様な緊張感が漂っている。ユングフラウ観光の最もオーソドックスなパターンとして次のプランがある。インターラーケンからラウターブルンネンにバスで。そして、ラウターブルンネンからブルゲンアルプ鉄道でまずは乗り換え駅のクライネシャイデックへ!この駅でユングフラウ鉄道に乗り換え、氷河の中をゆくことになるのだが、この往きの乗換えが一番の緊張ポイントだ。自分達の乗り換える電車を6~7分の間に探し、全員をうまくご案内しなければならない。「帰りにまた来るのですから、帰りにゆっくり楽しみましょう!」なんて言っても、そのわずかな時間にカメラを抱えてスルリスルリと抜けていってしまう人もいる。そういった方達の為に自分は、電車の目立つ所に立って目印になり、荷物番もする。ユングフラウヨッホでは、約1時間の自由行動の後また、ユングフラウ鉄道に乗り、クライネシャイデックへと戻ってくる。この、てっぺん「ユングフラウ」が二番目の難所。集合時間に姿を見せない人がいる場合、電車の時間に遅れるわけにいかないので添乗員が一人で探さねばならないが、前日お客様にも御案内したように、ここではなにしろ大声は出せない。走れない。(酸素が薄い関係です)前の晩、夜更かしをしないで早く寝ましょうまでは良くても、大声も出せないし走れないというのが実に添乗員泣かせなのだ。集合時間を大分さばよみして設定しても尚、何回息も絶え絶えになって小走りしたことか...!でもしかし、この難関を突破して帰路のクライネシャイデックに到着した時は先ほどまでの緊張が解かれ、いつも実に楽しいひと時になる。とにかく眺めの良い所であるというのはもちろんなのだが、なんといってもおいしいランチ!駅舎の中の『EIGARNORDWAND』というレストラン。メニューはソーセージ、スープ、サラダ、ヌードル。デザートにはお決まりのプリンで、添乗員レポートでも、ここは駅舎の中のレストランであるにもかかわらず、常に評価の良いレストランなのだ。ランチが済むと、皆さん思い思いに自由時間を楽しまれる。おみやげを見る時間もたっぷりある。私もお客様のカメラのシャッターを押したり、恥ずかしいがついお土産に熱中したり...ここには、駅舎の近くに、ある作家の記念碑もある。「アイガー北壁」などの優れた山岳小説を残した新田次郎さんの記念碑だ。この新田次郎という名前は、上諏訪角間新田出身で次男である、というところから付いたものであるらしいが、本人は「山岳小説家」という言われ方にいつも反発していたようだ。岩に小さな銅板のようなものがはめ込まれていて、そこに『アルプスを愛した日本人作家新田次郎 ここに眠る』と書かれてある。奥様にあたる藤原ていさんが分骨しておいたらしい。ちょっとわかりにくい場所だが、たまにそこの場所でアレッというふうに、足を止める日本人がいる。クライネシャイデックでのんびりし、それでこの日はバンバンザイかというと、まだまだ気は抜けない。その晩、レストランでチーズフォンデュを皆で楽しんでいると、先ほどのユングフラウ登山による高山病で急に倒れる人がいるのもこの時間なので要注意なのだ。ハネムーンの新婦さんに多いので、ディナー集合時間に顔色の優れない人がいたらさりげなく注意をしていないと...。レストランの医者がすばやく出てきて診察のあと、救急車で病院へ行き、その晩は入院になる。なにかと気の抜けないユングフラウヨッホエクスカーションではあるが、プレッシャーが多いだけに無事やり終えた一日の終わりは、スイスのきれいな澄んだ空気もひときわおいしく感じられるというものだ。木のおもちゃって好きです。旅ペンギンが旅行時必ず携帯するのが、ビクトリノクス。何かと便利よ。バレンタインに彼氏にいかが?