有権者が最高裁裁判官を罷免するかどうか意思表示する国民審査は、司法へ民意を反映する貴重な機会だが、これまで実際に罷免された例はない。
罷免を求める票の割合は前回審査より上がったものの10%を下回っており、法曹関係者からは「審査自体が形骸化している」との指摘もある。 国民審査は憲法に基づいて行われるもので、各裁判官は任命後最初の衆院選で審査を受ける。
審査では、辞めさせるべきだと考える裁判官の欄に「×」印をつけ、その割合が有効票の半数を超えれば罷免されることになる。
無印ならば信任とみなされるが、罷免票の割合は、過去最高でも15%台だ。 「一票の格差」訴訟に取り組む升永英俊弁護士(70)は、こうした状況を「審査への有権者の関心が低く、形骸化している」と指摘。
今回の衆院選では、投票日前から新聞に意見広告を出すなどして、審査への参加を呼びかけてきた。 今回、罷免票の割合は7・9〜8・7%。
いずれも前回審査を上回っており、升永弁護士は「裁判官への国民の目が厳しくなってきたあらわれ」とみる。 一方、法曹関係者からは「政治家と比べて裁判官の認知度は低く、よく知らない人に『×』をつけることに戸惑いを感じる人も多い」と、システム上の問題を指摘する声も。
ただ、この関係者も「罷免票が多ければよいというわけではない。現在のシステムの中で、裁判官側もより広く情報発信することが求められている」としている。 |