ボダ物語(2)
むかしむかし、ある処に、ボダとタゲがいました。 気は優しくて力持ち、だけど、人を疑うことを知らないお人よしのタゲ。 美しい容姿で頭はキレるけど、わがままで自己中心的なボダ。 二人はとても仲良しでした。ある日、ボダがお店を引っ越すとタゲに相談しました。タゲは元々力持ちだが、その自慢の力を有効活用しようと、その昔、引越し屋さんをやっていたのでした。そんな自分が昔働いていた会社をボダに紹介。通常だと、現スタッフや元スタッフの紹介だと、割引サービスがあるのだけど、引越し日は引越しシーズンの繁忙期に入っていたため残念ながら割引はされなかったけれど、お得で良心的な契約で、ボダは満足していた。数日後、ボダが知り合いの運送屋さんがその契約よりも安い値段でやってあげると言ったそうな。別に、自分の紹介での割引はなかったし、お金を出すのはボダだし、引越しのプロではないけど、安い運送屋さんでもいいなら、そちらに頼んでもいいんじゃないとタゲはボダに言った。ボダはタゲを憐れみ、最初の通り、タゲの紹介の引越し屋さんでいいよと言ってくれた。ただ、この契約には一つ、問題があって、積み切り契約というもので、トラックに積めるだけ、運びますよって。ただし、積めるだけ積むので、壊れやすいものとか無理に積もうとすると輸送時に破損してしまう危険があるので、なんでもかんでもという訳に行かず、その上、ボダの荷物には、仕事で使う精密な機械が含まれていた。積み切り契約でも、保障ができないこの精密機械は対象外だったので、自分たちで運びますって話で業者による引越しの日取りが決まり、数日後、タゲは母の知り合いでお世話になってる人からみかんを1箱もらったのだけど、とうてい1人では食べきれないので、ボダのお店で、お客さんたちに食べてもらってと、ボダのところに持っていくことにしました。ちょうど引越しの話も確認したかったのでいいかなって。ボダの元にみかんを持っていき、ボダにお茶などを出してもらいながら、タゲは引越しの話を始めた。「あの精密機械、どうやって運ぶの?」以前、1度、今のお店にもワンボックスカーで運んだ経験があるそうだけど、それ以降、なんだか調子が悪くなってたみたいな話を前に少し聴いてたので、心配になって、タゲは確認したかっただけなんだけど・・・。すると、ボダの顔色が突然、変わって、「嫌なら運ばなくていいからっ!」「え?」タゲはびっくりして、「そんなこと言ってないよ。ただ自分は(そういう精密機械を)運んだことないから、確認の為に聞いただけだよ。」すると、「何それ!?言い方が気に入らない!!!」「言い方がと言われても、普通に、大切な商売道具で高価な精密機械だから、自分なんかが運んで壊してしまったら大変だから、確認しただけだよ、だから嫌な訳じゃないけど、心配だから確認しただけだよ。」「ああっもうぅっ!!うるさい、イライラする!帰って!!、早く帰って!!」とまるで子供のように駄々をコネ始めて、取りつく島もない。たしかにお金はないけど、ボダの為にと新しい引越しと聴いて、引っ越し先のの駐車場が何も印がないから、看板まで手作りしてボダに送って、それをボダも喜んでいたのに、いきなり、こんな扱い、こんな言い方はないよと言うと、「じゃあ、こんなのいらないから、持って帰って。」手作りの看板を突き返され、タゲはたまらなく哀しくなった。ただ、普通に心配だから、質問しただけなのに・・・。ボダにとっては、絶対服従こそが信頼の証、意見や反論はNG、ましてそれがタゲのような従順なペットとして見下してる相手に、いちいち指図されるのが嫌だったようで・・・。意思ある人としての尊厳を捨て、ただの奴隷の如くどんなことにも反論せずにいることが正解だったのかな?涙で曇った空を見上げて、タゲは独りつぶやき、ボダの元を逃げるように去ったのでした・・・。つづく。「この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません」