掌(てのひら)小説:はぁ~るよ来い!
『掌てのひら小説:はぁ~るよ来い!』 長い冬の疲れがどっと出たかのように、そして、春を待ち焦がれたように疲れ果てた、老夫婦の耕す小さな菜園。 かたわらの小経こみちを、都会まちの生活にくたびれ果てて、故郷くにに帰ってきたかのような、一人の若者が通りかかって、自分の心の底を見つめるように、朽ち果てそうになった野菜を見つめている。 一口、食べてみるかね。と、老婆がその若者に声をかけて小皿に盛った「大根の佃煮」と「蕪の酢漬け」をそっと、差し出した。 食べ終えた若者に、爺さんが「こんな姿の野菜だけれど、性根しょうねはまだまだ腐ってないよ。みずみずしくて、美味しく食べれるよ。よかったら、食べてくれるかな。」と、大根を一本引き抜いて差し出した。 翌日、荒れ果てた畑を一生懸命に耕す、その若者の姿があった。よろしければ『ポチーッ』とお願いします。