第60回 飛行機の運航に必要な人数は?
お客様を乗せた飛行機を運航するためには、最低限、何人のスタッフが必要でしょうか。 まず思い付くのは、その機のすべての権限を預かる「機長」でしょう。機長は定期運送用操縦士と呼ばれる運転免許と、自分が操縦する航空機の種類ごとの免許、路線資格などに加えて、さまざまな事態に的確な判断を下す総合的な人格や能力が必要とされます。 しかし、機長の判断だけで、飛行機は出発できません。機長は出発までの間、出発便に関して2人のスタッフと協議しなくてはなりません。まずは「ディスパッチャー」と呼ばれる運航管理者です。ディスパッチャーは、出発便の飛行経路上の天候を加味して飛行航路を選択し、搭乗するお客様や貨物から飛行機の重量を計算し、目的地まで運航するために必要な燃料やデータを機長に提示します。機長とディスパッチャーは協議の上、でき上がったフライトプランにサインをします。 そして、サイン済みのフライトプランを持って、機長が次に向かうのは「一等航空整備士」のところです。 機長と同様に、一等航空整備士も担当する機種ごとに資格が分かれており、出発便の機種の資格を持った整備士が担当します。機長は整備士から飛行機の整備状況などを聞き、飛行機に問題がないことを確認します。そして、その飛行機が目的地まで安全に飛ぶことができる証として、整備士が航空機搭載日誌(ログブック)にサインをし、ようやく飛行機は出発できるのです。 機長、ディスパッチャー、一等航空整備士、これら3人のうち1人でも「NO」と言えば、飛行機は出発できません。つまり、日本航空××便を運航しますという場合、少なくとも3人の国家資格を持った人間が不可欠ということになります。 しかしながら、飛行機はこの3人だけで運航できるわけではありません。機内で皆さまにサービスしたり、緊急時の誘導指揮をとる客室乗務員、出発便に燃料や貨物を搭載するスタッフ、お客様の予約を受けたり、航空券を発券したり、ツアーを企画する営業スタッフ。また、それぞれのスタッフをサポートする人たち......。実に多くの人間が、皆さんとお約束した時間通りに運航できるよう、一生懸命取り組んでいます。 飛行機が出発する際、私たち整備士は飛行機に関わる大勢のスタッフの1人として、日本航空をご利用いただいたお客様に感謝の気持ちを込め、手を振ってお見送りしています。 60回目を迎えた「航空豆知識」も、これで最終回となります。長い間、ご愛読ありがとうございました。出発便の窓の向こうで手を振る私たち整備士を見かけましたら、ぜひ手を振って応えてください。文=足原 靖(日本航空羽田整備工場) 一等航空整備士長らく「航空豆知識」をご愛読いただき、ありがとうございました。