第34回 「ウクレレ(2)」
Aloha!!! 皆様はお元気ですか ? 今日は前回に引き続きハワイ特有の楽器・ウクレレの歴史についてご紹介致します。(ハワイ地元ローカル新聞「イーストウェストジャーナル」に掲載されたものをそのままご紹介しています。)はじまり パイナップル・ウクレレ息子が加わるコアのウクレレ手作業(前回の見出しに引き続き以下に続く)聴覚障害者 カマカ・ハワイでは、1955年から障害者を雇っている。当時、障害者は就職口が無いのが当たり前だったが、サミュエルさんの妻で、作業療法士だったジェラルディンさんの勧めで聴力障害者を二人雇った。現在82才の二代目のフレッドさんは、「一時期は、従業員の3分の2が、聴覚障害や筋肉障害などの障害を持った人でした。意外に思うかもしれませんが、聴覚障害者は優れた楽器職人で、完璧なものを創ろうという姿勢があります。耳が聞こえない分、触覚などの他の感覚が発達していますから、微妙なことを体で感じ取れます。聴覚障害者の職人は、ウクレレの胴体の部分を指ではじき、その振動だけで板の厚みや、良いウクレレかどうかが分かります。1955年から45年間勤めた聴覚障害者のホセさんは、とても優秀なウクレレ職人でしたが1990年に引退しました。同じ年、ホセさんのいとこで40年勤めた聴覚障害者の職人のケンさんも引退しました。二人共、沢山のウクレレ創りに携わりましたが、一度も自分たちの創ったウクレレの音色を聞いたことはありません。聴覚障害者は、ウチの工場にとってとても重要な存在で、今も優れた感覚を持った聴覚障害者の職人が一人います」という。品質管理 ニスが塗られたウクレレは、2階に持ち込まれ、弦が張られ、調音される。その後ウクレレが、楽器や商品として基準に合っているかどうかの品質検査が行われる。品質検査の担当は、サムさんの長男で、三代目のクリス・カマカさんが担当している。クリスさんは、「祖父は、ウクレレの品質には、とても頑固でした。『変なものを創るとカマカの名が汚れるから、品質が基準に満たないものは世に出してはいけない!』と言っていました。昨年、当社は90周年を迎えましたが、その信念は今も変わっていません。現在、ウチにはカマカ一族のものを含め、社員は21人います。ウクレレを創る他の作業は、従業員に任せられますが、品質管理だけは、カマカ一族の人間がすることにしています。最後の検査に通らなくても、作業をやり直せば良くなるものは、やり直し、それでもダメなものは、処分しています」という。クリスさんクリスさんは、工場では、品質管理を担当しているが、「ホオケナ」というハワイアン音楽グループのベーシストでもある。クリスさんは、「ホオケナは、コンサートをしたり、CDも出しているプロの4人組のグループですが、ミュージシャンとしてハワイで生計を立てるのは、とても難しいです。他のメンバーは、クムフラ(フラの先生)、郵便局職員、海軍造船所職員としての本職があります。私もウクレレ創りをしながらの活動ですが、ハワイでは副業を持っている人も沢山います。ミュージシャンとして副業が出来るのは幸せだと思っています」という。 ウクレレの種類 カマカ・ハワイでは、年間約4000本のウクレレを創っている。かつては工場に隣接した店で買えたが、今は注文のみを受付けている。一時期は、完成までに1年程待たないといけなかったが、今は4か月程で受け取れるという。 ウクレレの種類は、大きく分けて、従来のスタンダードな8型のものと、パイナップル型の2種類。弦の数は、4弦のものが主流だが、6弦、8弦、10弦のウクレレもある。音による種別は、ソプラノ、コンサート、テナー、バリトンなどがある。6弦のウクレレは、サムさんが1959年に考案したもので、ハワイがアメリカの50番目の州になったことを記念して創られ、ウクレレを好んだリリウオカラニ女王に因み、「リリウ」と名付けられた。 特注や修理ウクレレは550ドルから各種あるが、プロ、アマ問わず、特注のウクレレを頼む人は、好みの大きさや弦の数、音を指定し、材質や見た目にもこだわるという。 カマカ・ハワイでは、トンガ国王、高松宮妃殿下など、これまでに皇族や著名人のためのウクレレを数々創っている。依頼人のワガママを聞いて特注のウクレレを丁寧に創るのは、サムさんの次男(クリスさんの弟)で三代目のケーシー・カマカさんである。 ウクレレは、時が経つにつれ音が良くなると言われ、年代物は骨董品としての価値もあり、家宝として大事にされていたりする。 90年以上、高品質のウクレレを創っているカマカ・ハワイでは、そんな年代物のウクレレの修理もしている。修理の担当は、サムさんの三男(クリスさんの弟)で三代目のケリー・カマカさん。 ハワイ製でないと抗議ウクレレがブームになった1915年9月の話である。ニューヨークタイムスに「ハワイアンは怒っている」という見出しの記事が載った。内容は、ブームに乗り、ウクレレを創り始めた本土の会社が、ウクレレに "Made in Hawaii"とウソの表示をしているのは違法だと、ハワイのウクレレ会社が抗議をしたというのである。 以後、ハワイのウクレレ会社は、ウクレレに "Tabu(禁忌)"という印を入れるようになった。今では "Tabu" の印入りのウクレレは、大変貴重なウクレレとして珍重されている。聴覚障害者の職人を除いて、社員全員がウクレレを弾くという〈カマカ・ハワイ〉のウクレレには、職人魂とアロハ精神が一杯詰っていて、温かい音色。やはりウクレレは、ハワイ製でなくっちゃ~。 カマカ・ウクレレ Kamaka Ukulele(808) 531-3165 http://www.kamakahawaii.com/ウクレレ工場ツアー:月・火・水・木の午前10時半。ツアーは英語のみで約30分。予約必要 参考文献 ハワイ州観光協会 go-hawaii オアフ観光協会 visit-oafu welcome to hawaii 「イーストウェストジャーナル」榊原百合惠ハワイ大学・大学院卒業。ハワイ在住通算18年。EastWestJournalの記者として、一面、"MadeinHawaii"、"行ってみよう!オアフ島あちこち"、"ホノルル点描"などの記事を担当。写真も撮り、様々な取材をこなすが、旅行、自然、環境、農業の記事を得意とし、独自の視点で斬る記事には定評がある。"MadeinHawaii"の記事では、ハワイの産物に焦点を当て、その歴史、生産者や耕作者の背景まで深く探り、ハワイの優れた産物をより多くの人に伝えることに力を入れている。EastWestJournal1976年10月に創刊したタブロイド版日本語新聞。毎月2回(1日と15日)発行で、ハワイ州在住の日本人や長期滞在の日本人を中心に、信頼のおける日本語新聞として既に31年親しまれている。紙面は殆どが独自の取材により構成され、創刊以来の愛読者も多い。2003年5月より無料新聞となり、アラモアナセンター内白木屋、ドンキホーテ、マルカイ、在ホノルル日本国総領事館など、ホノルルの約60か所で無料配布している。購読希望の方は (808)596-0099まで。ハワイ在住の方の購読料は、1年間16ドル。日本在住の方は、1年間135ドル。http://www.eastwest-journal.com/それでは皆さんまたお会いしましょう・・・、 Mahalo!!