『柳箸の秘密』
■ 柳箸は、片方しか使いません。京都では、正月のハレの日は、年神さまに供えたものを神と人間が一緒に食事するという神人供食の日とされております。そのため使うお箸は「柳箸(やなぎばし)」。これは、お正月にお雑煮などをいただく時に使用するお箸のことで、「両口箸」とか「両細」とも呼ばれ、両端が削られています。だから、片方は食べるために、もう片方はひっくり返して、重箱の料理を取り分けるための「取り箸」として使うものだと思われている方が多いようです。しかし、実は、取り箸として使うために、両方削ってあるのではありません。重箱のものを取る時には、重箱専用の「組重」と箸紙に書かれた取り分けるためのお箸がちゃんとあります。柳箸は本来、一方を自分が、そしてもう一方は神様が使うとされており、実際には片方しか使いません。もともと、お正月には、「歳神様(お正月様)」という神様が、遠い山の彼方からお見えになり、その神様とともにお雑煮やおせち料理を食すると考えられておりました。そのため、一方を人間が使い、もう一方は神様が使用されるためのお箸として、柳箸ができたわけです。そうして神様のご加護を受け、神様とともに慶びごとを祝うという思いがこのお箸には込められております。ちなみに、この柳箸は、洗ってお正月三が日の間、使うのが習わしです。■ お箸にも、いろんなランクがございます。柳箸は、その名の通り柳の木で作ったもので、大変折れにくく丈夫なものです。それは正月早々に「お箸」が折れてしまうなんて縁起が悪いということで、丈夫な「柳箸」が使われてきました。それと柳は、冬枯れの山の中で真っ先に芽をだすことが縁起よく、古来よりその生命力に畏怖の念を抱かれていました。また柳の木肌が白いところから、邪気を祓う清浄な霊木として崇められていたそうです。さらに、枝が水についているため、水に清められているということ、また柳は「家内喜(やなぎ)」に通じて、めでたいからだともいわれています。ちなみに長さは、末広がりで縁起の良い8寸(24cm)に決まっています。実はお箸にもランクがあります。柳箸は、柳の強い生命力と清浄性を併せもつために、高い格式の箸として位置付けられています。そして次のランクが、意外に思われるかもしれませんが、割り箸です。使い捨ての割り箸は、使うたびに新しく清浄であることから、柳箸の次のランクとなるそうです。そして、最も格の低いお箸が塗り箸なのだそうです。どれほど値段が高く高価なものでも、ずっと再使用し続ける塗り箸は、清浄性の点から、割り箸より低いランクになるそうです。束で安く売られている割り箸の方が、何十万円もする塗り箸よりもランクが上なのはおもしろい考えだと思います。※ 私は、今から妻や、帰省中の娘の作るおせち料理の匂いをいただきながら、祝い箸の名前書 きを致したいと思っております。 今日は大晦日、明日の新年に際して貴家では祝い箸のお名前書きは済まされましたか・・・。 本年も当ブログを可愛がっていただきまして本当に有難うございました。 より良き新年をお迎え下さいますことを祈念しつつ年末のご挨拶と致します。 本年中は本当に有難うございました、来る年も何卒よろしくお願い申し上げます。