「着物の種類」について
奥深い京都の良さや京都の人も知らないような情報などをわかりやすく紐解いていきたいと思います。ぜひ身近に京都を感じてください。 ■ 平安時代の男は、着物の色に恋したんです。 平安貴族の女性の服装は、『十二単』といった装いでした。 当時、男性に比べて公の儀式などに出ることの少なかった女性たちは、室内での生活様式に適応することを重視していました。その十二単は、防寒のためと衣の重なりの配色に美を求めるものだったといいます。 重ねの色に四季折々の季節感を表現するなど、貴族たちの繊細優美な美意識がうかがえます。「源氏物語」はこのような風潮の中で誕生しました。 実はこの頃の恋愛は、顔をあからさまに見てするのではありません。 御簾(みす)の合間からのぞく女性の衣の色合いが、その季節にふさわしいかどうか、季節を感じてそれをうまく表現できる教養があるかどうかが、男性が恋心を抱くきっかけだったようです。今では考えられませんね。 しかし残念ながら、優雅さの裏には、「権力」という醜いものも絡んできます。 貴族社会では自分を権力の座に近付けるために、娘たちを天皇や高官に嫁がせて、その外戚関係を持つことに力を注ぎました。 そのために娘たちに美しい衣装を着せて、品格や教養などを高めることが重要なことだったわけです。 ■ 着物の種類って、いろいろおますのや。 女性用の着物は大まかに分けて、黒留袖、色留袖、訪問着、振袖、付下げ、小紋、紬に分けられます。細かく分ければもっとありますが、この7つがよく知られている代表的な着物です。それぞれの分類を解りやすくいうと格の違いといいますか、つまり着て行く場所の違いですね。 格の順位は黒留袖、色留袖、訪問着、付下げ、小紋、紬という順番。洋服と同様に着物にも目的や場所にふさわしい着物があるわけです。 振袖は未婚者の正装で、大振袖・中振袖・小振袖があり、成人式などに着られるのは中振袖。これが一般的です。 そして大振袖は花嫁用。これは袖丈の長いものほど格調が高いとされているからです。 袖の短い留袖は既婚者の礼装で、黒色に裾の模様がある物は結婚式の参列や改まった儀式などに着用します。 色留袖は5つ紋付なら黒留袖と同格ですが、一般的には黒留袖の方が正式とみなされることが多いため、披露宴や祝賀会、パーティーなどに着られることが多いようです。 これは30過ぎなら未婚の方でも着用OK。 そして訪問着といわれるものは既婚者の正装で、入学式や卒業式など用途の広い正装です。 小紋や紬は、軽い外出着。カジュアルなパーティや友人との食事などにおすすめです。 着物の知識をもちつつ、素敵に着こなしてみたいものですね。 ■ 知ってると、ちょっと自慢できます。 『タンスの肥やし』とは、着物をタンスにしまいっぱなしのことと思っている方も多いのではないでしょうか。 現在は『タンスの肥やし』とは、世間一般に「無駄」や「不要」などの意味合いで使用していますが、本来の意味は全く違う意味なのです。 まだタンスの中が着物だったころ、というか今ではタンスもあまり見かけませんけどね。 そのころの結婚は、前もって嫁入り道具のタンスの中にいろいろな種類の着物を親がたくさん揃えて嫁いでいったといいます。 これは、娘をどれほど大切にしているのかという証しで、結婚後に困らないようになど親の思いや愛情が存分に込められたものでした。 そして結婚後悲しいときや苦しいときは、タンスの着物をみて両親の思いを振り返り、それを人生の肥やしとして成長し、幸せになるという意味合いがあったそうです。 「肥やし」は作物の成長に欠かせないもの。やはり人間にも同様に肥やしが必要なのです。 昔の着物には、ただ「着る」という目的だけでなく、着物に携わった人たちの「熱い想い」を伝えるツールを兼ねていたのかもしれません。 参考文献 抹茶スイーツ宇治茶 伊藤久右衛門 「ちょっと言いたくなる京都通」 宇治茶 伊藤 久右衛門さんの記述