第14回 それぞれの主翼の先に、赤と青のライトがついているのはなぜか?
飛行機には、機体の外側だけでも、前方を照らすライト(ランディングライト)、尾翼の鶴のマークを照らし出すライト(ロゴライト)など、さまざまな役割を果たす多くのライトが取りつけられています。 その中でも、飛行機の主翼の先端に、赤や青のライトが光っているのを、ご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。 このライトは、すべての航空機の主翼につけられていて、「ナビゲーションライト」と呼ばれています。しかも、左側の主翼の先端には必ず赤のライト、右側には青のライトと決められています。では、このライトはどのような役割を果たしているのでしょうか? 飛行機の巡航中の速度は、時速800キロから900キロ。飛んでいる飛行機の中で「いち、に」と秒数を数えたとき、「いち」の間に、私たちは、約250mの空間を移動していることになります。このように、飛行機は、たとえばオートバイや自動車など、日常私たちが接している乗り物とは、次元の違うスピードで動いています。 しかも、もし、別の飛行機が自分の方に向かって近づいてきているような場合は、お互いに近づいてきているわけですから、その2倍の速さで2機が接近することになるのです。 そのため、パイロットには、他の飛行機が近づいていることを一刻でも早く察知して、左へ進むのか、右へ進むのか、それとも上や下へ進むのかの判別を下し、衝突を回避するための操作を行うことが求められます。 そこで登場するのが、主翼の先端のライトです。操縦席のパイロットは、この翼の先のライトによって、他の飛行機が自分と同じ方向に進んでいるのか、それとも自分に近づいてきているのかを認識できる仕組みになっています。 たとえば、コックピットから他の飛行機が見えたとき、その飛行機の右側が赤のライト、左側が青のライトだとすれば、その飛行機はこちらに向かって飛んでいることになります。つまり、赤と青のライトは、相手の飛行機の姿が遠くて、肉眼ではどちらに向かっているのか判断がつかないときでも、パイロットの瞬時の判断を助けるための重要な役割を果たしているのです。 このような話をすると、飛行機はそんなにぶつかりやすいものなのかとお思いになるかもしれません。でも、ご安心ください。飛行機は、地上の管制官からの無線や、一部の飛行機に搭載されている衝突回避装置によって、飛行機同士の接近がないようにコントロールされています。 しかし、そうはいっても、いちばん大切なのは、パイロットが自分の眼で他機を確認することです。 明るい昼間か、夜間かにかかわらず、飛行機は、左右それぞれの翼に赤と青のライトを輝かせながら、今日も大空を飛んでいます。文=足原 靖(日本航空羽田整備工場)