『花街3』
「ちょっと言いたくなる京都通」として奥深い京都の良さや京都の人も知らない情報などをおりまぜながら、わかりやすく紐解いていきたいと思います。ぜひ身近に京都を感じてください。さて、京都で酒造りといえば、「伏見」をあげる人が多いのではないでしょうか。しかし、かつては京の中心地であった御所の近くにある中京区には、たくさんの酒屋が軒を連ねていたそうです。それでは、今回のテーマも格式高く、なかなか上がることが難しいのでは!?と思われている『花街3』について、じっくりとお話したいと思います。本日のおしながき・一見さんおことわりどすねん、そのワケをいいまひょ。・花街には花街のルールがおますのや。・浮気者は、花街でもえろう嫌われまっせ。■ 一見さんおことわりどすねん、そのワケをいいまひょ。お茶屋というと、すぐに思いつくのが「一見さんお断り」。 さあ、お茶屋に行こうと思っても簡単に行けるものではありません。お茶屋は、舞妓や芸妓から料理、宿泊先などを手配し、代金をすべて立て替えて後日お客から集金しています。そのため、客の信用度は極めて重要な問題で、そこから「一見さんおことわり」というシステムが生まれたといわれています。しかしそれ以外にも、はじめての客は、好みも性格もわからないため、どうもてなしていいかわからない・・。結果「つまらん店や」と言われるのは、プライドが許さない。それなら最初からお断りしましょ、ということでもあるようです。これは京のお店がお客を大切にするということの証しで、お客をより楽しませる場を店側も提供できるようにするための、知恵でもあるのです。今のお馴染みさんも、誰かに紹介してもらっているワケですね。知り合いを探すのが難しいようなら、お茶屋のホームバーで女将と仲良くなることもひとつの策です。少し時間はかかりますが、こまめに足を運んでみてはいかがでしょうか。■ 花街には花街のルールがおますのや。京都には、北野天満宮前の水茶屋からできた「上七軒」、八坂神社門前の水茶屋に起源を持つ「祇園東・祇園甲部」、鴨川と高瀬川の間にあり舟運の要所として栄えた「先斗町」、歌舞伎とつながりの深い「宮川町」の5つの花街があります。それぞれの歴史・文化を持ち、時代にあわせて変化しながらも、今日までその伝統を伝えています。そんな花街はまさに信用社会。どんな理由があろうと信用を無くせば、ニ度と花街に戻れないというほどに厳しいものなのです。花街のルールといえども、社会人として必要なことばかり。不義理はしない、羽目をはずしすぎない、約束を守る、そして浮気をしないなどです。また、お茶屋の暖簾をくぐれたら、女将にすべてを任せるのがベスト。これなら道をはずすことなく楽しめるでしょう。さて、いちばん気になるのが費用ですね。まず芸妓や舞妓は、ひとり35,000円(2時間)ほどで、プラス飲食代と席料がつくのがルール。3人でいくとすれば、ひとり5万5千円から6万円ぐらいが目安になります。もう少し安くしたい場合は、お茶屋に入る前に食事をすまし、一緒に行く人数を増やすことで、ひとり3~4万円ぐらいになりますよ。10人以上だと2万5千円ぐらいになって、ぐっとお茶屋遊びが近づきますよね。■ 浮気者は、花街でもえろう嫌われまっせ。浮気は花街でも当然嫌われます。実は花街には「廊下とんび」や「ほうきのかみ」という言葉があります。「あの人はほうきのかみだ」と噂されると、もう花街では死んだも同然のことといわれます。 実は、舞妓や芸妓に対してだけでなく、お茶屋に対しても浮気は御法度。少し慣れてきて他のお茶屋へ行ってみたいなあと思っても、お客の行けるお茶屋は、原則的にひとつの花街にひとつのお茶屋と決まっているのです。バーやクラブなら隣の店に入ってもまた戻ることができますが、花街ではそうはいきません。 まず他のお茶屋に行っても上げてもらえませんし、浮気というものは必ずすぐにばれるもの。そうなるとお茶屋も舞妓も芸妓も誰も相手にはしてくれません。信用を築くのは長くかかりますが、失うのは早いものです。それらを考えると、どのお茶屋とお付き合いしていくかが悩みどころ。自分好みのお茶屋を探すのは非常に難しいです。しかし、もし仮にお付き合いがはじまったお茶屋に、気に入らないところがあったとしても、これもご縁というもの。 全力で応援するのがルールです。お茶屋はお客が育てていくものですから、お客がしっかりサポートすれば、おのずといいお茶屋になっていくのだろうと思います。美しい古都に思いを馳せつつ、おいしいお茶を飲みながら はんなりとした時間を過ごしてみませんか。宇治茶 伊藤 久右衛門