正妻 上・下
「正妻」は最後の将軍である徳川慶喜公の正妻一条美賀子さん目線で描かれた慶喜公が将軍になり戊辰戦争前後の話(上)と幕府瓦解と明治維新後の平和な時代(下)の上下巻で描かれていた。ちなみに著者はほとんど作品を読んだことのない林真理子さんで余計なことは書かれておらず、史実だけを丁寧にたどっていた。本来なら別の貴族の姫が正室(この本の題は正妻だが…)になることが決定していたが、流行の疱瘡(ほうそう)に罹りあばた顔になったためその代わり役に決まり急遽、江戸に向かうことになったそうな。京都の雅やかな生活スタイルから武家(まだ将軍になる前の一橋家時代)へ嫁ぎ、わがまま気ままな若殿様(慶喜公)と生活する様子が書かれていた。小説なのでつらつら読んだが、まぁ今風の「言いたいことは必ず言うタイプ」のお姫様で主人である慶喜公にガンガン言うのには違和感は覚えたがまぁ、こんなものだろう。後半は将軍になり戊辰戦争→敗北→こっそり江戸へ帰還→大政奉還→静岡で謹慎生活とサラッと書かれていたがこの辺は慶喜公が中心に書かれており最晩年の謹慎時代夫婦で過ごした様子が描かれ〆ていた。まぁ、こんなものだろう。というのは多くの作家さんが「慶喜公」のことを小説しており、大体の人生は知っているが正室である美賀子さまのことはあまり知られていないので初学者の方には良いかと思う。なかなかおもしろかった。