■街が仕掛けた偶然 2
社会人になりたての頃である。初めて結婚という文字を意識したのが彼女であった。旅行に行ったのも、彼女の家族と食事を共にしたのも、自分の両親に紹介したのも、彼女が初めてであった。私たちは毎日のように会った。楽しくて仕方が無い日々だった。やがて、お互いの環境が変わる事をきっかけに、二人の心の距離は徐々に遠ざかっていった。私たちは別れる事を決めた。決して器用な別れではなかった。当時経験の浅い私達には、〔連絡を一切絶つ〕という方法でしか、お互いの心の溝を埋める事は出来なかった。そして年月を経て、ここで再び出会うことになるとは・・・「良かった・・・」 彼女への思いは、時と共に全て清算されている。あの夫婦での2ショットはとても微笑ましい姿であった。私はスーパーを出て帰宅後、友人と会う約束があり再び外出。移動中の21時過ぎ、携帯電話に着信が入る。着信画面には見慣れない番号が記されていた。携帯から聞こえてきたのは彼女。どこから私の番号を聞いたのか判らないが、不思議な位、今までの距離を感じさせない会話が始まる。長い間切れていた糸は以前とは違う色で結び目をつくっていった。「良かったなぁ、優しそうな旦那さんで!」その投げかけに、YESと答えた彼女の言葉にどこか寂しさを感じる。気になり問い詰めてみると、やっと重い口を開き始めた。「あの人、奥さんも子供もいるの・・・」一瞬沈黙が流れた。私は自分自身の携帯電話を持つ手がピクリと動き、言いようの無い憤りがグツグツとこみ上げてくるのを感じていた。<すみません。また長くなりましたので、もう一日続けさせてください>--------------------------------------------------------------- 感情が高ぶっている時は、正確な判断をし損ねる。立ち止まって深呼吸3回、冷静さを保ち、状況を真摯に受け止める。