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† Ano i ne. Proboha! †

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2006年03月05日
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 ポーランドのテレビ局が制作し、日本では学研から2001年に出された、31枚におよぶ大きなシリーズです。1927‐1995年のショパン国際ピアノコンクールの歴史を綴った映像集です。元来の定価は30万円台でして、とても手が出せませんでしたが、最近は15万円程度で割引販売されている模様ですので、依然として高いですが、若干は入手し易くなったかと存じます。

 この中の第7巻は、1980年第10回コンクールの際に起きた、ポゴレリチ事件に関する、審査員を途中で辞退し帰国した、ニキタ・マガロフ、マルタ・アルゲリッチ、パウル・バドゥラ=スコダの3名へのテレビ局のインタビューが全編まるごと収められています。

 彼らの主張は、必ずしもポゴレリチが1位であるべきだとは、主張しておりませんでした。この点は日本でなされた報道と、微妙に異なった印象を受けました。

 主たる審査員辞退の理由は、ほぼ以下の2点です。
1.第2次予選までは人数も多いし、各審査員の得点の合計で決するのはある程度仕方がない。
2.しかし、人数が少なくなる第3次予選では、一部審査員の陰謀で、ある参加者を失格させることが可能な、得点の単純合計で判定すべきでない。

 コンクールでは、往々にして誰が見ても本選に進出する第一グループと、一部の審査員が強く推す第二グループ、そして一応の得点を挙げるに留まる第三グループに分かれるが、各審査員が25点満点の持ち点で採点し、得点を合計するシステムですと、例えば審査員が10名だとしますと、第一グループはほとんどの審査員が22点平均(合計220点)の得点を与え、当然本選に進みます。第三のグループはほとんどの審査員が18点程度(合計180点)の得点に留まります。さて、どうもポゴレリチの場合は、第1次予選から激論が交わされていたためでしょう、6名程度の彼を推す審査員は24点平均(トップと評価)の高い得点を与えましたが、残りの4名程度が、非常識に近い極めて低い得点(5点程度)しか与えず、結果的に24×6+5×4=164点となり、第三グループの参加者よりも合計得点が下回り、予選落ちとなった模様なのですね。(実際の審査員はもう少し大人数です。ここで書かせて頂いた説明は、いわゆるシミュレーションに過ぎません。実態の得点ではありませんので、念のため)

 ここで3名の審査員は、全員がポゴレリチの予選段階での落選を非難して、審査員を降りたわけなのですが、三者三様の言葉を残した部分があります。まず、アルゲリッチは『不正審査の結果、ポゴレリチは落とされた』と発言し、バドゥラ=スコダは『審査方法が公平な制度ではなかったので、今後もっと公平な審査制度に変えなければならない』と発言し、そしてマガロフは『ポゴレリチには、少なくとも協奏曲を弾く権利を与えるべきであり、会場内のワルシャワ市民の意見も無視し得ない』…こんな風な感覚での話でした。



閑話休題:
 このDVDを見て思い出したのは、仲道郁代さんが、高校3年のときの日本音楽コンクール(旧NHK=毎日音楽コンクール…通称≪毎コン≫)本選です。彼女は、ショパンコンクールとはまったく異なった採点方式にもかかわらず、本選で単なる『入選』となってしまいました。彼女は審査員11名中5名の1位票(最多数)を得ましたが、過半数ではないために決選投票が行われ、5対6で敗れました。つまり彼女以外の参加者が1位であると投票した全員が、決選投票で仲道さんを外したのです。
 続いて、第2位の投票が行われました。仲道さんはまたも5票で最多数でしたが、決選投票の結果、敗れました。同様に3位決定の場合も決選投票で敗れました。結果として、彼女は11名中5名の審査員が1位に推しているにもかかわらず、3位までに入れなかった(入賞できなかった)のです。当時の採点方式と、採点結果は、主催者である毎日新聞に掲載されております。
 その結果、翌年から採点方式が変更となり(25点満点の各審査員の得点の単純合計!!!)国内で最も権威あるコンクールの公平性が、一応担保されるようになったのです。

※ちなみに、彼女は翌年再挑戦し、みごと第1位に輝きました。同時に増沢健美(ますざわ・たけみ)賞も受賞しました。


 コンクールとは、元来このようなものなのかも知れません。しかし、コンクールが若者に無意味であるとは思いません。それに向かっての集中的なレッスンとか、コンクールの場に集う、世界中の若人との交流とか、若者には他に代えがたいものを多く得ることができると思います。順位が付けられるのは、むしろ聴衆へのサービスなのかも知れませんね。





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最終更新日  2006年03月05日 07時32分29秒
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