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カテゴリ:タコ生徒・学生期
満天の星を仰ぎながら露に湿った干草の匂いをかいで歩く。豪華で大きなログハウスのキャンプ場から、ボランティアのスタッフ男性4人が寝泊りする古い小屋まで歩く。気をつけないと道を外してしまう。
アメリカのワシントン州のシアトルから、車で3時間東に走った所にあるクリスチャンのキャンプ場で2週間働いていた。1974年8月のことだった。私は大学3年になっていた。 「タコ、明日の晩、ボーリングに行かないか。」 16歳のビルが言う。身長は私と変わらない185センチだが、足が何と32センチとデカイ。丸メガネを掛けて髪はジョンデンバーカット。因みに私は今は183センチに縮まっている。 キャンプの仕事が終わってから、ビルと私と、18歳のシンディーともう1人の女の子の4人で近くのボーリング場に遊びに行った。もう1人の女の子の名前と顔がどうしても思い出せない。 ハンバーガー屋で腹ごしらえ。厚さ20センチくらいあるハンバーガーにどうやって食いつくのかと訝しがっていたら、ビルが思いっきり私のハンバーガーを押しつぶしてくれた。こうやって食べるのか。因みに、私が今住んでいるオーストラリアではナイフとフォークを使ってハンバーガーを切り刻んで食べる。 素直な黒髪を腰まで伸ばしたシンディーは、アイダホの農家の出身だった。ちょっと舌足らずに話す英語が分かり難いときがあった。熱心なクリスチャンで、キャンプ場ではいつも子どもたちに神様の話をしていた。黒い大きな目で見つめられるともう駄目だった。もしかしたら、アメリカインディアンの血が混じっているのだろう。 ボーリング場からの帰り道に私はビルに話しかけた。 「ビル、ちょっと車を止めてくれないか。シンディーとここから歩いて帰るよ。」 何でこんなに大胆に言えるのかと自分で自分を褒めてやりたくなった。ビルが無免許で運転する車はキャンプ場の敷地に入っていて道は分かる。ありがたいことに、シンディーは断らなかった。断られていたら、話はここで終わっていた。 その夜も星が輝いていた。干草の匂いに甘い香水の匂いが漂ってくる。 「東京のなんていう所に住んでいるの?」 「ひがしむらやま、っていう所」 「随分長いのね。」 こんな所で東村山の話になるとは思いもよらなかったが、どんな話題でも楽しく響いた。 シンディーをログハウスにゆっくり送ってから、小屋に戻った。ビルは起きていて聖書を読んでいた。挨拶はしたが、私に何も訊かない。アメリカ人は若いときからプライバシーのルールをしっかり心得ている。私は、何があったのか話したくて仕方なかったが、黙って眠りについた。22歳の自分が子どもに思えてしまった。 ハンバーガーを食い過ぎたのかどうか知らないが、その夜はなかなか寝付けなかった。 毎回、果敢にこの緑の箱をクリックよろしくお願いいたします。 タコ社長の本業・オーストラリア留学 タコのツイッター Twitterブログパーツ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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