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カテゴリ:翻訳裁判所
資格のあるおよび資格のない医師 この訳にまちがいありません。梨畑美樹 美樹が署名を終えた瞬間、二人の刑事は美樹の両脇を抱えてスバーハワダルマヤ空港の詰め所へと消えた。 しかし、梨畑の取り調べは難航した。 どこの国の法律でもそうかもしれないが、トラドキスタンの法律でも、単にことばが不得手というだけでおかしな表現をしてしまった人を起訴することはできない。 梨畑にどれだけ悪意があるかが取調の焦点だった。 しかし、梨畑は子育てをしながら、女が自立を目指すために自分には翻訳という道しかなく、そのなかで力が足りずおかしな日本語を書いてしまったと言い張った。 御地刑事は仕方なく、「取り調べはこの辺で休憩。梨畑、いっしょにカラオケにいこう」と言い出した。 梨畑ともうひとりの刑事が歌ったあと、御地が得意げに歌いだした。たちまち、梨畑が困惑の表情を浮かべはじめた。これがいったい、他人に聞かせる歌と言えるだろうか。 それなのに、御地ときたら、得意満面で「どうだ。こう見えても昔、歌手になろうとしたんだ。今でもまだその夢は捨てていない」と言うのだった。 もうひとりの刑事が「なあ、梨畑、どう思う。率直なところを聞かせてほしいんだが、、」 「どう、と言われても、その、なかなかのもので、」 「なかなかのものだと、、。なかなか上手なのか、それとも、なかなか下手なのか」 「なかなか、おお上手、だと思います」 「梨畑、お前、声震えてるぞ。思ったことを思ったままに言えばいいんだ。ここは取り調べの場じゃない。わかった。じゃあ、質問の仕方を変えよう。こいつがもし歌手になって、この歌声を全国に流したら、どういうことになる」 梨畑は急に泣き出して、声を絞り出すように言った。 「みんなの迷惑です。日本の音楽をめちゃくちゃにしてしまいます。子どもの感性をズタズタにしてしまいます」 ←ランキングに登録しています。クリック、よろしくお願いします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.08.29 23:29:18
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