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キングベアー出版が出している『ライフスタイル革命』という本があります。これは原題をフィット・フォー・ライフといいます。ライフスタイルというよりも、食生活の改善を提唱したもので、この内容を実践している方は、特にベジタリアンの方に多いようです。
実際にこの方法を実践すると、多くの方に同傾向の変化が訪れます。 ●体重が劇的に減る ●持久力がつく ●エネルギッシュになる この本の提唱内容は、決して難しいものではありません。 1.肉や魚と、穀類等炭水化物とを、同時に食べない。肉と野菜、穀類と野菜、といった組み合わせにする。 2.午前中は果物以外は食べない。夜8時以降も食事はしない。 3.これを守っている限り、食べる量はあまり気にしなくていい。 大まかに言うとこの二つだけです。もちろんベジタリアンになれば、それが理想とされます。 ところがこの方法をとっていると、実は副作用があります。 ●エネルギッシュにはなるが、力は弱くなる人がいる。 ●頬がこけてくる人がいる。 ●皮膚からうるおいがなくなる人がいる。 ●やせずにおなかが出たままの人がいる。 その原因はどこにあるのでしょう。 今回はまず1から見ていきます。 1の主張の理論立てはこのようになっています。 野菜を食べると、消化するのに3時間かかります。 炭水化物を食べると、消化するのに4時間かかります。 肉魚を食べると、消化するのに6時間かかります。 ところが肉魚と炭水化物を組み合わせて食べると、消化にかかる時間は8時間になります。 消化とは大量にエネルギーを消耗する活動なので、消化に時間がかかると体力が消耗する。そこで消化を早めるためには、肉魚と炭水化物の組み合わせを排除する。 肉魚と炭水化物を組み合わせるとなぜ消化が遅くなるのか。 肉魚を消化するには、酸性の胃液が必要である。 炭水化物を消化するには、アルカリ性の胃液が必要である。 この二つを同時に食べれば、酸性の胃液とアルカリ性の胃液がぶつかって中和される。したがって消化はできなくなる。 これは一見正しいように見えますが、正確さをきわめて欠いています。 まず胃液は何を食べようが、酸性しかありえません。 胃液とは、胃が分泌する3つの成分が交じり合ったもの。 第1の成分が、胃酸。 胃酸は、強い酸性の塩酸で、胃に入った食べ物の腐敗を防止します。 食べ物を消化、分解するのが第2の成分、ペプシン。消化酵素であるペプシンは、胃酸と反応し活性化。胃に入った食べ物をどんどん溶かします。ペプシンは特に酸性の環境において活躍します。 そして、胃液を構成する3つ目の成分が、粘液。 粘液は胃の粘膜に貼り付き、胃酸とペプシンに、胃そのものが溶かされないよう、守っているのです。 胃のペーハーは1~3.5。つまり強酸性です。 胃の中でお粥状にドロドロにされた食べ物を分解するのは腸の働きです。 腸ではアルカリ性の消化液が分泌され、すい臓と肝臓から送られたすい液や胆汁、それに腸液などの作用によって、栄養素を分解します。 炭水化物はブドウ糖や果糖などの単糖類へ。 タンパク質はアミノ酸はペプチドへ。 脂肪は脂肪酸とグリセリンへと完全に消化されます。 そして簡単な分子にまで分解されて、小腸絨毛から吸収されます。 腸のペーハーは7~8。つまり中和状態または弱アルカリ性です。 このように何を食べようが、胃の中は酸性、腸の中は弱アルカリ性になります。 この二つは同じ消化器内で中和されて無効になることはありえません。 『ライフスタイル革命』の翻訳者はこの著者の誤認を指摘し、胃の中で中和という現象は起こらないが、食べあわせによる消化時間の変化は確かに起きるので、結論には間違いがない、と注釈を入れています。 理論立てが間違っていて、結論だけ正しいというのであれば、フィット・フォー・ライフのメソッドはあくまで経験則に基づく民間療法レベルのものであって、医学的に証明されたものではないということになります。 もちろんそれならそれでかまいません。しかし結果がすべてであるならば、結果が出ない人に対して、この食生活を勧めることは慎重であるべきではないでしょうか。現にこの食生活をして肥満体が解消できなかったり、力が弱くなった人、顔色が悪くなった人の場合には、無理にこのメソッドを続けることは危険を伴っているように思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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