自慢じゃないが、このおとなしすぎる性格ゆえに
今まで何をするにも立候補というものをしたことがない。
自慢じゃないが、このおとなしすぎる性格ゆえに
今まで何度推薦という形でおしつけられたことか。
子ども会の会長が2回、PTAの部長1回、副部長1回、
そのあたりからは推薦もお断りしてどうにか
くじ引きにこぎつけるあたりまでなったが、
役員だけは公平に持ち回りでまわるので辞退のしようがない。
ので、そこはよしとして。
またまた何度目かの自治会の役員がまわってきた。
絶対に会長だけはやりたくない。
みんなそう思ってるもんだから、押し付けられそうになっても
「わたしんちは年寄りがいるんだから無理ですよ。」
「うちはもう体がきついけぇできませんよ。」
そんなこんなの理由をつけて別の誰かにふる。
それがいつものパターンなので、毎年そんなのがつづくと
堂々巡りでなかなか会長が決まらず、ある年からは行き詰まった時は
みんな公平にとくじ引きで決められるようになった。
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メガネにメイクは土台だけ、ジャージで髪もテキトー
「この人に会長は無理だろう」的キャラであらわれ
言葉もなるべく少なめ暗め隅にぽっつんと座って
顔合わせの時刻になるのを待った。
そこへ、一番の古株オカムラさんの奥さんがあらわれた。
「んまぁ、キヨサカさん!あなたも新役員?!
よかったぁ! 古い慣れた人がおっちゃったらやりやすいわ!」
※ 古い慣れた人=会長をおしつけやすいもっともな条件
ごるぁ! でかい声でゆうなでかい声で!!
アタシにふられたらソッコーで会長の座をなすりつけますがな。
顔見知りのオカムラさんと、あとは小学校やら幼稚園やらで
一緒だったお母さん方が何人かいたけど、半分以上は知らない人ばかり。
さぁ、どうする。
「私、会計ならやります。」
「私は体育をやろうかと思っていたんじゃが。」
ほらきた。会長はやる気はないけど先に別の役をゲットして
会長を免れるってか。
でも各理事もそれなりに大変なんだけど、一番困るのは
先に副理事ならやるけどそれ以外は大変だからいやだと
ごねる人もいるんだよね。
(理事の補佐だから一番楽なポジション)
そこは古株オカムラさんがだまっちゃいない。
「あら、まず会長を決めてからじゃないと
各理事が先に埋まっちゃったら会長する人がいなくなっちゃう。」
オカムラさん、ブラボー!!
「ね?じゃけぇ、キヨサカさん会長どぉ??」
だーーーっ! そうくるんかいっ!
「週末休みがあんまりないので行事に参加するのが
精一杯なんですが・・・。」
ここは嘘ではない。
ま、くじ引きなら仕方ないのでちょこちょこでも
休ませてもらって両立せんといかんがやっぱりウンとはいえんわ。
「じゃ、会長は誰がします?」
「どうします?」
「どうやって決めます?」
「どうしようかねぇ。」
「誰かおりません?」
「やっぱり会長から決めんと次が決まらんよねぇ。」
「誰かやってくれんかのぅ。」
「決まらんかったら、次の方法を考えんと。」
ほらね。
次はもうくじ引きしかないってとこにきたんじゃないの。
そこへ、さっきのオカムラさんが口をはさむ。
「ヤマダさん。アナタやっちゃったらどう?」
奥さま方ばかりが集合したなかで唯一、オットが参加の
ヤマダさんのご主人がオカムラさんからフラれたぞ。
さぁ。ヤマダのだんなどうでる。
「・・・ワシ? んーーー。どうしよっかのぅ。」
おや。ヤマダのだんな逃げるかと思いきや。
「んーーー。ま、いっか。」
おお!! ヤマダのだんなブラボーです!
と、思うと同時に、オカムラさんが盛り上げ&歓喜のはくすー。
「んまーっ! ヤマダさん! ありがとう!!」
ぱちぱちぱちぱちぱち・・・・
その場に居合わせた奥さま方もさらにはくすーで盛り上げる。
ぱちぱちぱちぱちぱち・・・・
「じゃ、副会長はどうする?」
「会長の補佐ということで、特に理事の仕事はしませんからね。」
「書記さんなら副会長と兼務できますよ。」
「じゃ、書記と副会長でいいですよね。」
「んまーっ、今回はすごくスムーズに決まりましたよね。」
「なんか、前向きな人たちばかりで今年の役員はうまくいきそうですよね。」
「このまま一年間、みなさんよろしくお願いしますね。」
オカムラさんのおっしゃるとおり、スムーズに回転しそうな
やりやすい顔ぶれなのはよくわかったけど、
オカムラさんが会長やったらもっと順調にいきそうだ。
(アタシはとりあえず班長)