お客さまが店内に忘れ物をされるのはしょっちゅうのこと。
買い物かごの中にキーケースを入れっぱなしのうちに
紛失とか。
財布をバッグにいれずに脇にはさんでいたら
いつのまにか忘れたとか。
見つかったらラッキー。
でも、遺失物なんたら法という法律がからむと
そういうわけにいかなくなった。
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「キヨサカさんっ。すみませんっ。
これ10分くらい前にお客さまが拾ってくださって
レジに預けにこられたんですっ。」
レジのアイコちゃんが忘れ物のお財布を預かった。
今日は日曜日、レジは4台がフル稼働だし、
財布を預かったアイコちゃんはレジを抜けて
拾ってくださったお客さまに対応はできない。
ジュース補充をしていたらレジからアイコちゃんが呼ぶので
小走りで近づいてお財布を受け取った。
すぐ事務所にひっこんで、誰か相方を探す。
「確認してーーーー! だれかーーー!」
ちょうど奥に事務処理をしていたモングリくんがいた。
「財布の確認お願いします。」
必ず2人以上で財布の中身をすべて確認しなければいけない。
「えーっと、お札が漱石さんが1,2,3,・・・・」
「五百円が一枚。百円玉が1,2,・・・」
「50円はなし、10円が・・・」
金種を数えたら、ケースにはいったカードを調べる。
「ビサが一枚、あ、マスターもある。
JCBもあるんじゃけど、またマスターがでてきた。」
「こりゃ何?クーポンとポイントシールと・・・」
「ぎゃーっ!保険証まで出てきた!!」
「えと、えと、じゃ、こっちの提出書類も全部記入して
該当するとこにチェックして。」
「報労金も所有権も全部放棄ね。」
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けっきょく、財布の持ち主は後から現れた。
この場合は一番ラッキーな結末だった。
だって。
本来ならばですね、お財布の確認は拾い主と店側が行う。
そして、拾ってくださったお客さまが財布の中身・貴重品・
お財布そのものの権利うんぬんを放棄しなければ
拾ってくださったお客さまの所有になる。
(一定期間経過後、持ち主が現れなかったとき)
聖徳太子が入っててごらんよ。
あたしだったら、「じゃ、もらいます。」って言いたくなるよ。
持ち主が見つかった場合は、
拾った人は報労金(お礼)をもらう権利を主張でき、
落した人は必ず支払う義務が発生するのだ。
この場合は、お客さまが名乗らずレジに預けて
さっさとお帰りになったので所有権主張の意思なしとみて
メンバーどうしでの中身の確認になったので
一度はなくしたお財布がまるまる無事で戻ってきたんですよ。
でも、この法律を知らないお客さまが多すぎて
まだまだ危機管理がなさすぎる。
あたしゃ100万円おとして見つかっても
10万円も払いたくはないがね。
知らなかったらトラブルになりそうじゃね。
うっかりお金を落としても、
これからはまるまる戻ってこなくなったってことよ。
困るんだったらちゃんと肌身離さず持ち歩いておくれよ。
(ほんとにトホホなんっすよ。複雑で。)