いいことがあったとき、

「お父さんのおかげじゃね。」

カヤコさんはそう言って素直に喜ぶ。

予報で雨と言われても晴れたとき、

「お父さんが喜んどるんじゃね。」

カヤコさんは父が雨をやませたと喜ぶ。

コマユが入試で合格したとき、

「お父さんが守ってくれとるんじゃね。」

カヤコさんは父に感謝する。

我が家が火の車でもお子たちがそれぞれ進学を決めたとき、

「お父さんがうまく運んでくれとるね。」

カヤコさんは父の導きと感謝する。

ってか、本人の努力も大いにあったと思いますが？

カヤコさんが肺炎になって入院したとき、

「お父さんがいい先生に出会わせてくれた。」

それはそれで名医とお知り合いになったと父に感謝する。

家がシロアリにかじられて補修で大金が必要だったとき、

「保険がちょうど満期になってお父さんが借金せんでもいいように
してくれた。」

それはそれでタイミングがよいと父に感謝する。

ってか、それは不幸中の幸いか、幸い中の不幸かどっちなんだ。

とにかく何があってもカヤコさんは
すべて亡き父の手柄にしてしまう。
いや、死んじゃった人にはかなわないね。まったく。

チイヤの就職が決まった。
「おばあちゃんに電話するね。」と言ってたけど、きっと

「お父さんがチイヤを守ってくれとるよ。よかったね。」

とか言うんだろうよ。

今日は父の誕生日。
生きていたら７８歳になるはずだった。（たぶん）

４０代で夫に先立たれたカヤコさんは、あと２、３年たてば
夫婦でいられた期間よりも未亡人となった年数が長くなる。

それでも娘や孫たちに寂しいとも一緒に暮らしたいとも
一言も漏らしたことがないのは、父のおかげだろう。

やっぱりカヤコさんのいうとおり、
お父さんが守ってくれているんだろうね。
知らず知らずのうちに見えない教えをもらってる気がする。

とうちゃん、お誕生日おめでとう。
そして、いつもありがとう。