昨日は敬老の日でした。

敬老の日は
「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し､長寿を祝う｣
という意味の国民の祝日です。

そう、お祝いの日です。

ご近所でお世話になってるおじいちゃんおばあちゃんと
呼ばれるみなさまへお祝いの品を持ってゆきました。

おじいちゃんおばあちゃんと呼ばれるみなさまには
ちょっと気遣いも必要です。

そう、朝は早く夜も遅い。

おうちを訪ねるには、仕事が終わってからじゃ遅いかも。

出勤前の方が無難です。

ピンポン♪

一軒目のセトさんちです。

「おはようございます。
敬老の日のお祝を自治会から預かってきました。
おめでとうございます。」

セトさんは朝はすっごい早起きなのは知ってます。
８時半ならたずねても平気でしょう。

「んまぁ。わざわざすみませんね。
ありがとうございよります。」

ちょっと耳が遠いけど、いつもこぎれいにしている
とても性格がおだやかなおばあちゃんです。

「わたしね、キヨサカさんはわかるんよ。でも前の班長さんも
その前の班長さんもウエダさんもアラキさんも、
もう会っても顔が思い出せんのよ。」

あぁ、最近はよく入れ替わってるしね。
班長さんだって半年に一回の集金だし、最近はもっぱら
用事は新聞受けにメモだもんね。

「若い人はわからんわ。わたしが知っとるのはミヤバラさんと
タマダさんとマツバラさんはこないだ亡くなったけぇ・・・」

「オーヤさんはわたしよりもちょっと下なんじゃが・・・。」

「オーヤさんはね、大正１１年じゃけぇ８６になってんよ。」

オーヤさんとは我が家の真下に住んでる
一人暮らしのおばあちゃんであります。
敷地内の庭に花や野菜を育ててる上に我が家のまわりまで
毎日掃き掃除してくれるありがたいありがたいおばあちゃんです。
そんなに高齢だとは知らなかったよ。

「わたしは大正４年じゃけぇ、９３。」

きゅうじゅうさん？？

んまぁ元気じゃね。
うちのおばあちゃんが確か原爆で亡くなったときは
３０すぎだったから もしも生きていたら同じくらいかね。

元気だったらカヤコさんと二人口が達者なままで
仲良く暮らしていそうだな。

なんだか、自分のホントのおばあちゃんと話してるみたいだ。
父方のおばあちゃんも、亡くなって４０年近くなるから
ぜんぜん記憶がないけど こんなかわいいおばあちゃんだったらなと
話をしていてだんだん思ってきましたよ。

「ほいじゃがね、こがあな格好でごめんなさいね。
起きとるんじゃがね、まだ腹がにごうていけんけ。」

「ありゃあね、２６日に退院したんよ。」

えっ。セトさん入院されてたのかな？

「ほうなんよ。ここんとこ切ったんじゃが。」

「切ったときは大丈夫なんよ。」

「手術も全然痛いことありゃあせん。」

「麻酔するけぇね。」

「ほいじゃが、検査は大変じゃった。」

「ありゃあ、やねこかったわ。」

「肛門からこがあな管入れたんよ。」

「あんまり痛いけぇ、わたしゃ声が出たわ。」

「ぎゃーーーーー！！・・・ゆぅてね。」

「外で待っとる姪のとこまで聞こえたゆぅて。」

「ぐふふふふふふ。」

「あぁ、でもありゃあもうしとうない。」

「それがね、キヨサカさんわたしゃそれ以外に
悪いところは いっこもありゃあせんのよ。」

「じゃけど、帰ってから寝たり起きたりじゃけぇ。」

「背中がちょっと傷がいってしもうた。」

「ゆっくりゆっくり起きてねぇ。」

「ほいで、朝はよう起きてゴミを出しにいくんよ。」

「４時に持って行ったらまだ誰も出しとりゃあせんの。」

「わたしゃ、間違えたかのぅ思うて。」

「また持って帰ってきたんよ。」

「敬老の日でも持って帰ってくれるはずなんじゃが。」

「こないだは資源ゴミじゃけ、間違いないけ４時に
出したんよ。」

「じゃが、空き缶だけを持ってっとる。」

「空き缶抜いて、わたしのスカートだけを置いとるの。」

「若い頃はきよったプリーツスカートなんよ。」

「しつけ（糸）もつけて崩れんように大事にしたんじゃが。」

「もう着ていくとこもないけ。」

「資源ゴミに捨てたのに空き缶だけ・・・」

・・・・・中略

要点をまとめると、

いつもは朝４時には起きてるけど
手術後退院して日にちがたってないので
いかにも今おきましたみたいな格好でごめんね。
年はとってるけどほかに悪いとこはないの。
ゴミもちゃんと自分で出してるけど
なぜか洋服が残ってたの失礼しちゃう。
もしかしたら曜日間違えたかな？
いつも御苦労さま、最近は年寄りが増えたから
班長さんは持って行くのも大変ね。
どうもありがとう。

という内容でありました。

ていねいなお礼の言葉をかけてもらって
玄関のドアをしめました。

さて。

腕時計をみました。

９時です。

ぎゃーーーー！！
（遅刻だ）

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いつもなら遅くとも８時５０分には自宅を出て
徒歩で通勤するものの、このときは
車をブッ飛ばして２分半で到着しました。

三連休の最終日、どっちにしろこんな日は
お客さまでごった返しで 売り場作りやら
商品補充は期待できない。
もう退勤時間がきたらさっさと引き揚げることです。

まだ５軒も残ってるのに、急いで帰っても
６時だよ。

６時っていうとカズヲさんの実家では
もうご飯の支度ができあがっていないといけない時間だよ。

そう、お年寄りは夜がはやい。

２軒目のオーヤさんちに行ってみました。

ピンポン♪

「あのー。遅くにすみません。
敬老の日のお祝を自治会から預かってきました。
おめでとうございます。」

「まぁまぁ、わたしゃ何の役にもたっとりゃせんのに。」

オーヤさんのおばあちゃんはいつも謙虚です。

「年寄りはヒマにしとるんじゃけぇ、これくらい当たり前ですよ。」

「お勤めも遅うまでなさって役員までしてもろうて、
年寄りにこがあによぅしてもらわんでもいいですけん。」

いえいえ、自治会からなんで受け取ってくださいよ。
わたしゃいつも葉っぱもゴミもきれいに掃き掃除してもらう上に
時々野菜までもらって助かってますよ。

えーと、それから３軒目は・・・。

なぜか玄関はあけっぱなしなのに
ピンポンを鳴らしてもでてこないミヤバラさんのおばあちゃんは
とばして、４軒目のタマダさんちへ届けました。

「ごめんね。こんな格好で。」

いやいや、こちらこそすみませんね。
やっぱりみなさん夜は早いようですでに一杯やってるみたい。

なるべくなら敬老の日に届けて日付が変わらないようにと
自治会からお達しがあったけど
結局、そのミヤバラさん一軒が残ってしまいました。

仕事じゃなかったらな。昼間でも行けたんだけど。
仕方ないから明日の午前中もいっかい行ってみよ。

ちうわけで、ちょっと心配なミヤバラのおばあちゃんの分だけが
残ってしまった。

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さて。

日は変わって１６日あさです。

ピンポン♪

あさです。

まだメイクの途中です。

メイクの途中にやってくる時間ちうことは、
大体訪ねてくる年齢層というのは決まってます。

しまった。

顔は未完成のまま、デコッパチもあげたまま
玄関へすっとんでドアをあけるとそこには

ミヤバラさんのおばあちゃんが。

「あんた、何回も来たら悪いけぇ取りにきた。」

この人に吹きこんだらその日のうちにご近所中に
噂になるのに間違いないという
ミヤバラさんのおばあちゃんはなぜか半日のうちに
よそにもう配り終えたという話を聞いて
わざわざ取りにやってきてくれたのです。

次はこの人を必ず最初にしよう。

ってか、よく考えると半日といってもですよ？
１８時半～翌７時だよ？
ばぁちゃん、いつ聞いたんだ
恐るべし千里眼地獄耳

 （任務終了）