「よかったら紹介したげよっか？」

バイトのオーナーの言葉がきっかけで
チイヤの退寮が決まった。

「そこもね、１階が店舗になっとるんよ。
じゃけぇ夜も明るいし、うちみたいに２階に
オーナーが家族で住んどるけぇ、何かあっても
だいじょうぶよ。」

今チイヤがバイトしてるコンビニのオーナーは
１階が店舗・２階から上が賃貸住居でその一室に
住んでいるらしい。

オーナーつながりで、似たようなコンビニオーナーが
住んでいる賃貸１ルームを紹介してくれるという。

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もちょっと詳しくいうと
チイヤが契約したマンションの家主は地主さん。

地主の息子夫婦がそのマンションに住んでるらしい。
コンビニのオーナーであり、マンションの大家でもある
息子さんは、地主のお母さんからつつかれる。

「あぁ、ゴーバラさんからの紹介じゃったんよね。」
「じゃ、不動産の飛び込み客じゃないんじゃ。」
「ふーん、じゃ別にアンタも仲介してないんじゃね。」
「ほいじゃ、仲介手数料はいらんじゃろうに。」

息子さん、手数料が入らんとなると今回のチイヤの契約では
収入がないと一緒。

「・・・えっ？！」

「えっ？！って、あんたが仲介したんかいね。」

「・・・いいや。」

「仲介しとらんのに仲介手数料とれんじゃろうに。」

「・・・はい。」

「ゴーバラさんのバイト先の子じゃけぇ、前家賃もええわ。」

実質の大家である地主の大奥様がそうおっしゃったおかげで
あれもこれも免除して契約することができた。

この大奥様、不動産会社へも口添えをしてくださる。

「知り合いの紹介じゃけぇ、よくしてあげてぇや。」
「月末から入るけど前家賃は取らんのよ。敷金も半額にしてぇね。」
「あ、車をもっとってじゃけぇ、一台駐車場もいるけぇ。」

じつは、マンションの地主はこの大奥様なのだけど
隣の駐車場の管理は不動産会社がしているので
契約は別々なのだ。

「・・・じゃ、駐車料もいただくわけにはいきませんね。」

「ほうじゃね。」

敷金・礼金・前家賃・手数料・火災保険・鍵代
駐車場契約料あれこれを安くしてくださって
それはそれはありがたかった。
だから寮の家賃も今月分までだったから
普通だったら退去の月は一か月ダブるのが
当たり前だけど、うまく新居へ移行できたので
家賃をムダに支払わずにすんだ。

探す時間が省けたうえに、オーナーどうしで
話をすすめてくださったのでアタシはというと
不動産会社へ契約の手続きをするだけ。

カズヲさんはお引越し当日に荷物を運ぶだけ。

という段取りですすんで思ったよりも手間をかけずに
引っ越しをむかえることができた。

荷物を全部新居へ運んで、寮の管理人を呼んで
退寮手続きの最後の関所、部屋のチェックを行う。

天井や床、窓はもちろんベッドや洗濯機、冷蔵庫の
使用状態も細かくチェックして修繕修理が必要なら
費用を支払わなければいけないのね。

「えっと、ずいぶんきれいに使用されてますね。
大体３００００円くらいは請求するんですが、
ここんとこのキズが２ヵ所あるんで、そこの張り替えだけ
ですね。あとはベッドカバーは全員取り換えますのでその分も
いただきます。」

フローリングの床板、あの長細い板を２本張り替えて
４０００円なり。

約３年間、お世話になった寮もお別れ。
結局、我が家に毎日「ただいま」って帰ってくることは
なくなった。

こうして、最後は二人きりになるのかな。