格安ツインをチェックアウトしたら、まる一日フリーだった。

コマユはきっと美術館やお城はＮＧだろう。
あんまり興味なさそうだもんなぁ。どこへ行こう。

ＪＲで約２０分の駅に移動した。
駅前は２階から出るつくりになっていて、高架上にある観光案内所のすぐ手前に
張られた横断幕が目立つ。

大型ビジョンも壁面にあって、今流れているのはニュースだろうかね。
きっとこのあとの男子フィギュア決勝が始まったら
人だかりになるんだろうな。（旅行二日目は１９日）

駅前を離れて、てくてく歩いてやってきたのが美観地区。

ここらへんも博物館に美術館、国重文とか
コマユには退屈そうなものばっかりだけど、
絶対に行っておこうと決めていた場所がある。

観光案内所でもらった地図をみながら、中央通りから入口の看板を
見つけて川沿いの通りに入ると白壁の町家風景が広がる。

このまま川沿いを進むとですね。

ここ

 
看板を見つけて、入口に向かう。
一階はおみやげやさん、先に２階の記念館へゴー。

平日のまっぴるま、入館者はあたしとコマユの二人だけ。

「いらっしゃいませ、ビデオを流しますのでどうぞおかけください。」

入口からすぐ横の部屋にスクリーンがみえる。
先にそちらからどうぞということらしい。

ほうじ茶＆きび団子。
別に平日の昼間で暇だからというわけではないようだ。
部屋の後ろの長テーブルには、伏せてあった湯飲みと
餅箱（多分この中にきび団子が？）が用意されていた。

今までいろんな記念館に入館したけど、
お茶とお菓子をいただいたのは初めてだったな。
あんこ入りのきび団子はおいしかった。

テレビで見ると、ほぼ全員が大柄なせいか
わかりにくいのだが、写真でみると一般人と比べて
体格がいいのが本当にわかる。
卒業アルバムなんかは飛びぬけて大きかった。

今の時代、野球に限らずスポーツで有名になるには
周囲の援助が（金銭的も含めてね）不可欠だが、
星野さんはそうでもなかったように思えた。

貧困だったとは聞かなかったが、父親がいない家庭で
女手ひとつで育てられ高校も野球の名門校ではなかった。
明大と中日の記憶しかなかったけど意外と苦労人なのですね。

「館内は撮影自由です。」

えー？記念館ってどこも写真はＮＧだと思ったけど、
ずいぶん融通きくんですね。
（ってか、勝手にお茶とお菓子を撮っただけだが）

さて。

通りから一つ小路に入った。
角のお店にはギャル（死語）４人。

ギャルと、店の前にただよういい匂いにつられて立ち止まると
ガラスケースの前に並んだ香ばしいにおいの元が。

おせんべいである。

手のひらサイズのおせんべいが目の前で次々にできあがる。
ホテルの朝食はバイキングでしこたま食べたもんね、
お昼はとっくに過ぎてるのに大してご飯は食べたくない。

じゃ、きまり。

コマユはシンプルなしょうゆ味。
あたしはごまみそ味。

あたたかいおせんべいを持ったまま、
一口食べるまでもない近い距離だった。

  
ここですよ。

建物の前でバリバリをおせんべいを急いで食べるママとボク。
平日だから思いっきり目立つんだけど、まぁいい。

レトロな木枠の入口をガラリと開けて中に一歩入ると。

「いらっしゃいませぇ～」

ちょっと声が高めの、物腰が柔らかい受付のおじさんが
お出迎えである。

展示物を見てると
「実際の絵柄と鏡にうつった絵柄を比べてみてください、わかりますか～？」

受付のおじさん、わざわざカウンターから出てご案内だよ。

いくら平日で暇だからって、悪いね。
ここでも貸切状態だね。

ってか、おじさんの言うとおり、なんだか鏡の絵が変だ。
りんごとぶどうが描いてある柱、鏡にはりんごとりんごが映ってる。

なんで？？？

「はい、こちらは視覚を利用したからくりですぅ。
吊り橋の位置を変えたら、ほら、鬼の数が変わるんですよぅ～～」

ネタばらしになるので、あれやらこれやら
いろんなからくりが出てくる桃太郎のお屋敷は実際に
行ってみて体験するがよい。

この受付のおじさんも、観察すると退屈しない。
まとわりつかれても楽しい。（あたし的には）

「昭和１９年の映画上映をしております～。
どうぞ、そちらもごらんくださいまぇ～～」

昭和１９年ですよ。戦時中ですよ。
このころの映画って、どんなんだろう。

こんなんだった。

さる吉にいちゃんが、戦闘機にのって
機関銃をバンバン連射して気持ちがよいという映画であった。
さる吉にいちゃんは、休暇をもらって実家へ帰った際には、
「パパ、ママ、ただいま～～～～。」ではなく、
「ただいま帰りました！」と両親に向かって敬礼したところが
戦争を思い起こさせた。

この時代に、映画？一部のお金持ちが鑑賞していたのかな。

さらに。

「館内は撮影自由でございますぅ。どうぞご自由に～」

え。ここもですかい。
自由ですって言われるとですね、あんまりパチパチ撮る気は
しなくなるんだよなぁ。

結局、お化け屋敷入口のステッカーをパチ。
なんか、テレビのロケでもあったのかしら。

浅草キッドの珍名物発掘の旅。
地元ＴＳＳのロケらしい。

おみやげを一通りみて、もう出ようかと思ったら、
またまた受付のおじさんがあらわれ、ハンディサイズのクーラーバッグを
取り出した。

「今日はありがとうございました～
それでは、ワタクシ、これからみなさまの前で
演奏会を始めたいと思いますぅ～」

突如、目の前でそんなことを言われて
クーラーバッグから、取り出したのは。

ちくわ。

「このちくわは三百ウン十円もする最高級品のちくわでございますぅ」
「このちくわで演奏させていただきますぅ」

あ　思い出した

なんかのテレビで見た、ちくわ笛を吹くどっかの館長さん

ナマで聞くちくわ笛、テレビよりもずっと音が澄んでいて
音量もかなりのもの。
あたしとコマユのあとから入館したと思われる夫婦一組も一緒で
４人で聞いたナマのちくわ笛はそれはそれは迫力ありだった。

「では、もう一曲」
「こちらも一本４００円程度の最高級れんこんでございますぅ」

れんこん笛はちくわ笛よりも若干重低音だった。
でも尺八ほど重たくないわ。
れんこんで「タイタニックのテーマ」を聴かせてもらったよ。

受付のおじさん、もとい、ちくわ笛館長さん
ちくわ笛だけじゃなくて、きっと客とのコミュニケーションを
はかる距離感が絶妙なのかも。
まとわりつかれても、うっとうしいようでそうではない。
物腰、言葉尻の柔らかさ、ここは仕事の参考にさせてもらおう。

館長さん、どうもありがとう。

玄関に入ると、左手にはお雛様。
ぜんぶ桃太郎のお雛様という変わり雛である。

入口前になにげにたたずむ、手作りのちくわ笛ライブ予告看板。
館長さんの手作りかな。

キャンディ・キャンディ世代としては
いがらしゆみこ美術館も絶対にはずせないのだが
これだけは絶対にいやだとコマユがきかないので
仕方なくあきらめることに。

それでも町並みをブラブラして、おみやげやさんに
入ってるうちに夕方になった。

帰りのＪＲで男子フィギュアの結果が気になったけど
倉敷から中庄に向かう間、左手に見えた高校の校舎から
見えた横断幕が二本に増えていた。

行きの列車から見たときは一本しかなかったのに。
高橋選手のオリンピック出場を祝う横断幕だったはず。

ところが、帰りの列車から見えたのは結果を伝える横断幕がもう一本。

「・・・フィギュア、わかったね。結果。」

あの学校、高橋選手の母校翠松高校だったのね。
テレビでもなく、号外でもなく、町の人々の噂でもなく、
列車の中からの景色で結果を知るってのもなんかおかしいなぁ。

なんだか、忘れられないオリンピックになりそう。

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予約のホテルは別のところ。

「今度はどんなとこ？」

「えーと、二人で７８００円。朝食バイキング込で。」

昨日泊まったとこよりはちょっと高いけど、
それでも格安だわよ。
ちょっとドキドキするよね。

「・・・昨日のとこでよかったのに」

コマユはホテルを変えたのが不満っぽい。

だって、せっかく泊まるなら色んなホテルがいいじゃない。
高いホテルが居心地いいのは当たり前だけど、
安いホテルに泊まるのも当たりはずれがあっていいじゃない。

「・・・なんだか、すごい不安になってきた」

メインの通りからはいったら道は細くなった。
飲食街は多くて、食べるところには困らないけど、
どうみてもホテルが近くにありそうな雰囲気じゃない。

あったとしても、ちっちゃなちっちゃなビジネスホテルかと
思うとコマユは前日のほうがいいんだろうよ。

ちっ。　いくじなし。

二日目も格安ツインの夜を迎えました。

長かったけど読んでくださってありがとう。

三日目はまたね。