軽くウェーブをかけているヘアなので、
ひんぱんに美容院に行くことはない。

前髪は気になったら自分でテキトーに切るので
３ヶ月に一度くらいの割合でいつもの美容院に行っている。

独身の頃から利用してる美容院なので、
うちよりも実家の方が近い美容院である。
そこは市内に何点かチェーン店をもつ。

よって、美容師さんも店舗をあちこち異動するため
担当さんも何人か変わった。

で、今担当してくれるのは
なぜか２０ン年前に、この店舗で新人だった美容師さん。

出産で数年のブランクの後、カムバックした今じゃ
お局さまになるのかしら。

といっても、ブランクの期間をのぞいても
かなりのキャリアだからね、あたし以外のお得意さんも
たくさんいるはず。

実家から近い美容院だもの、
あたし以外に、カヤコさんは月一度はカットに来てるし
近所のおばちゃんたちも、担当は違えど ここがお気に入りらしい。

ここの美容院のワグリさん。

あたしが高校を出たばっかりの頃に新人でやってきた美容師さん。

実家の母、カヤコさんとも付き合いが長い。

「キヨサカさんてねぇ、おかあさんによく似てらっしゃいますよねぇ。」

え？　なんですと？
とつじょ そんな話になったわけじゃないけど、
なぜか、あたしとカヤコさんが似てるって言われた。

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「キヨサカさん、春からさみしくなりますね～。」
「県外ですかぁ。子供さんはみんな自宅からいなくなるんでしょ？」
「うわー、どんな感じかしら。」

ワグリさんから、最初にかけられた言葉である。
でも、ワグリさんだけではない。
コマユの進学先が決まってからというもの、
何度こんなことを言われたかしら。

まぁ、そりゃ気が抜けた感じにはなるかもね。
でも離れてしまわないとまだ実感ないなぁ。

それにさ、コマユに限らずチイヤやアイリがいなくなる時も
同じこと言われたよ。

いや、二人がいなくなる時のほうが もっと言われたような気がする。

（娘が二人もいなくなるの？よく許したねー！）
（娘はそばに居て欲しいよ。絶対さびしくなるよ。）

息子は手放しても娘だけはそばに住まわせた方がいいと
アドバイスももらったけど、だって本人たちが決めちゃったもんね。

でも、さびしくはなかった。
（心配はつきないけど）

春には最後の子供が自宅をはなれて
晴れて夫婦ふたりの生活がはじまる。

そんな話からはじまったワグリさんとの会話だったが。

「さびしいかもしれないけど。」
「でもさびしくないかもしれないねぇ。」
「まず、子供部屋のガラクタを整理したいし。」
「そしたら念願の自分の部屋を作れるしね。」
「晩御飯は楽になるから出かけてもおかず作るのが楽になるかな。」
「そしたら、行きたいとこがいっぱいあるけぇお金貯めないと。」

もう頭の中では、コマユがいなくなったら
まず使わなくなったゲームソフトの数々と
プレミアムがつくかもしれないからって後生大事にとっていた
ベイブレードたちをさっさと処分して押入れを整理しようと
最初の段取りをきめていた。

それから、コマユの もう着ない服を資源ごみに出して
学習机も一つ処分して、ラグも処分して、
パソコンまわりを広げて、お絵かきがもう少しスムーズに
できるように道具を配置したいな。

コマユのとこには、美術館とかお城とか行く時に
ちょっと泊まらせてもらえればいいから
また計画たてて行ってみたいし。

そんな話をしていると、ワグリさんの先の言葉を
かけられたわけである。

「なんだか、おかあさんもあんまり娘に依存してないっていうか。」
「ほかの同年代の人に比べたらあんまり娘さんとかお孫さんばかりの話じゃないし。」
「おかあさんって、いろんなことに好奇心旺盛でしょ。」
「面白かった本の話とか、宮島のもみじの話とか、
　なんかこっちも教えてもらって得する話が多いんですよ。」

あぁ、なるほどね。
顔が似てるって言われたことはそんなになかったけど
そゆことかね。

べったりの母娘じゃないけど、
この距離感はちょうどよいのかな。

って娘だから思うけど、親孝行ももすこししなければいかんなぁ。
お互い元気でいられるうちに。（反省）

ワグリさん、気付かせてくれてありがとう。