チイヤが小学校六年生の春は、
フットベースボールの練習ではじまった。
その頃は2歳下のアイリも一緒だったし、
アイリの友だちも誘って同じ子供会からの参加者は増えていた。
三年生の時に監督だったタマルのおじさんは
学区内の指導者になっていた。
毎年チームの初顔合わせでは、キャプテンを決める。
監督タマルさんが子供たちを集めて、
自分たちで決めるように告げると
「チイヤがいい。」
「うん、チイヤがキャプテンやって。」
六年生は4人。
三年生から参加していたチイヤをみんなが推すのは
自然な流れだったのかもしれないけど、
「監督もチイヤがいい思う。」
「チイヤならできるよ。」
「大丈夫、チイヤ、キャプテンでええね?」
目立つのがあんまり好きじゃなかったけど、
監督の口添えもあり、キャプテンでセンターポジションを任された。
その年の優勝は別のチームだった。
でも、スポーツでチームワークの大切さ楽しさを教えてくれて
そばで支えてくれた監督さんのおかげで
6年生の球技大会を悔いなく終えることができた。
その後、監督さんからチイヤに一枚のはがきが届いた。
フットベースボールを続けてくれて「ありがとう」のお礼の言葉、
「これからもがんばれ」の励まし、そして翌年迎える中学生活への
はなむけの言葉がつづられていたらしい。
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週末の新聞の訃報欄。
見覚えある名前を見つけた。
監督のタマルのおじさんだった。
チイヤに伝えると、
「えっ!? なんで!?」
なんでかわからないけど、病気だったのかな。
小学校を卒業してから、もう干支がひとまわりしたもんね。
でも、亡くなるにはまだ早いよね。
「球技大会の後、もらったあのハガキ・・・。」
「いろんなことが書いてあったけど、忘れない言葉があるんよ。」
「 "継続は力なり" 監督、好きな言葉だったんだろうね。」
最後の指導から、もう12年。
監督さん、親がいうのもなんですが
チイヤは地味だけどコツコツ努力する大人に成長しました。
本当にありがとうございました。