11月1日(土)2日(日)の両日、酒田市出羽遊心館で秋の市民茶会がありました。
そぼ降る雨に急ぎ足になりましたが、かえって風情があるというもの。
満天星躑躅( ドウダンツツジ 花言葉は「節制」「上品」「私の思いを受けて」「返礼」)の赤、
竹林の緑と鮮やかな対比。思わず足が止まりました。
一緒に訪れた友人のご親戚の方から招待していただいたのですが、
かろうじて面識がある程度の私に、封書でお手紙を添えたご案内があり、
おもてなしの心はもうそこから始まるのだなぁと感服しました。
出羽遊心館は数多の請願により、二十周年を迎え、その記念の茶会でもありました。
当時尽力され、今は鬼籍に入られた方も多いようで、
3席設けられた茶会のどの席でも、感謝して偲ぶご挨拶がありました。
ホール・和室・広間を使って「表千家」 「皇風煎茶礼式」「遠州流」
「裏千家」 「大日本茶道学会」の合同茶会。
こちらは最初のお席でいただいた常盤煎餅と熨斗結び(東月堂製)
柚子の香が品よく口の中に広がる薄焼き煎餅には松が描かれていて、
のし結びを添えると…。
草の根や松の枝を結ぶのは、万葉集時代は旅の安全を祈る行為だったはず。
有間皇子が謀反の疑いをかけられて、訊問を受けに向かう途中、
磐代(いわしろ)の 浜松が枝を 引き結び ま幸くあらば またかへりみむ
と読んだのは、申し開きができて無事帰ってこられたら…の願いを込めて。
虚しくも数日後にはこの世の人ではなくなってしまいましたが。
…はっ……。某NHKドラマの主人公でもないのに想像の翼を見当違いに広げてしまいました
こちらは次の席でいただいた「寂」(東月堂製)。
ひとひら舞う紅葉の落ちる音も聞こえそうな秋の静寂…でしょうか?
茶席はもう1つあって、そちらでは11月1日の炉開きにちなんだ
「亥の子餅」をいただきました。
帰ってから調べてみたら、猪(亥)は火を見て逃げるから火の用心になるとか、
亥は陰陽五行説では水に当たり、火災を逃れるという信仰があるため
江戸時代に亥の月(旧暦10月)の亥の日を選び、囲炉裏や炬燵を開いて、
火鉢を出し始めた風習ができたとか諸説あるようで、
とにかく茶道では11月に炉開きを行い、この日がお茶の世界の「お正月」にあたるのだとか。
一つひとつに意味があるんですね。
「亥の子餅」をいただいた席では、お茶碗も世界遺産に認定されたことを祝して富士山のものを
お出しした、この遊心館もまた日本一ということで…との解説がありました。
掛け軸やお花、道具の一つひとつにも含みがあって、
精通すればさぞ面白いだろうな、と不遜な感想を持ちましたが、なかなか奥深いですね。
秋の一日、いつもと違う空間で、いつもと違う時間を過ごせたことに感謝です。