カテゴリ:海
今日から、五週間休暇。
二人とも毎年、有給休暇が最低八週間、残業などが溜まってしまったりすると三か月休暇になってしまう。アタクシが、きっと要領が悪いせいで参ってしまい会長に哀願して部長を降ろさせてもらった年など、休暇が四か月溜まってしまっていた。やれ衆議院議員との会議だとか、支えになってくれているつもりらしいが気味の悪い上司だとか、臨時にくじけてしまっている同僚とか、もう少し励ましたい部下とか、そういうのは何とかなる。 が、人生は仕事仕事仕事で削ってしまえない。愛する人達と如何に充実した毎日を過ごせるか、アタクシにはそのほうが大切だ。 丁度その年はムーミンがサバティカルだったので、夏から初秋の四か月をスカーッと休んだ。W島に行き、流星群が降りしきる下、波打ち際に二人で大の字に寝て流れ星を数えた。夜の海にビオルミネセンスで緑色に輝きながら泳ぐオットセイにみとれた。 J海峡ではイルカの家族に囲まれ、いつか習ったように、彼等が聞こえるように、パドルでカヤックをコンコンコンッと信号のように叩いた。イルカは好奇心が強い。しばらくカヤックの周りをぐるぐる泳いでいた。手を延ばせばその灰色の湯で卵の様な皮膚に触れるほど近く。「プフッ...プフッ...」という呼吸音とともに発せられるわずかな飛沫が、深呼吸をすれば体に入って来そうなほど近く。 その数分後、鯨にも出会う。カヤックに鯨が寄ってくると胸が高鳴る。(ムーミンは感激で涙を浮かべていた。)でも、ひっくり返されては大変。やはりコンコンコンッと信号を送る。それだけで、鯨と対話をしている気がして、嬉しくなる。 鯨は、大きな澄んだ眼をしている。眼そのものは大きいのだけど、体に比べるととてつもなく小さい。 その眼をゆっくりと海面に近づけ、ちっぽけなカヤックに乗るアタクシたちを、涙を流しながら微笑んでいるムーミンを、ポカンと口を開けているアタクシを、ほんの一瞬なのだろうけれど長い長い時間をかけて覗いて行く。 「...解った」という言葉が伝わって来そうな、すべてを見抜いてもらった様な、不思議な気持ちが余韻の様に残る。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.08.12 10:13:09
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