テーマ:恋愛について(2608)
カテゴリ:洋館の毎日
先週泣いてしまったムーミンの秘書のS女、また昨日泣いてしまった。
S女は二児の母。二人ともまつ毛が長くて、ほっぺが真っ赤で、奇麗な顔をしている割りににはわんぱくボウズ。K君は10才、C君は7才。 彼等のために、S女とその別れつつある夫はもう何か月も、壊れ果てた関係を抱えてなんとか同じ屋根の下で暮してきた。だが、今月になって「離婚届け」という段階で、もういたたまれなくなったそうだ。 なので週末に、K君とC君を座らせて、「お父さんとお母さんはね」という話をしたのだそうだ。もう何か月も別行動しているし、ずっと一緒の部屋にさえ寝ていないのでこの子達も薄々分かっていたことだろう、とS女は言ったが、「あなた達が二人とも大好きで、これは誰のせいでもないのだけれど、別々に住むことになったのよ、つらいけどどうにかなるわ、でもごめんなさいね」という話だ。 S女の夫Tは座って押し黙ったまま、話し合いを始める前に色々口論しながら決めた段取りや「誰が何を説明する」約束はどこへやら。 K君はいきなりガバッと跳ね上がって玄関から外に飛び出してしまい、C君は泣き叫んで自分の部屋に閉じ篭ってしまった。S女の夫Tは黙ったまま、その様子を見て見ぬふり、いつもの様にS女にすべて何もかもさせる。 S女はまずK君を探しに走り出るが何処にも見当たらない。近所を呼びながらまわり、やっと数軒先のドライブウェイでうずくまっていたK君を見つけて家に帰るよう説得する。なにかあると一人になりたがるK君。「しばらくそっとしておいてほしいのはわかるけど、家に帰ってファミリールームででもいてくれない?そっとしとくから、ね?」 そして大声で泣きじゃくっているC君をどうにかなだめる。 その間T夫は座ったまま。 その後、K君とC君は両方また座って色々質問。 その間もT夫は黙ったまま。 その後K君とC君は「二人でファミリールームで相談する」と言うが、15分後にはテレビゲームを始めた様子で、笑い声が聞えてきて、心配で耳を立てていたS女は安心したそうだ。 ずっと圧力のように溜まっていた沈黙のプレッシャーが一気に抜けた気がする、と彼女は言った。 S女が話ながら泣いてしまったのは、彼女がその五時間後の話をしながら。長男のK君をつれて牛乳やらの買い物に出かけたそうだ。車のなかで、また色々K君が心配事を思いついた様に言ったそうだ。「学校、変わっちゃうの?R君のパパは離婚してC町に引っ越しちゃったけど、そうなるの?P君は週末に遠くのママのとこに行く様になっちゃって遊べなくなっちゃったけど、そうなるの?」 全部説明してくれたS女に、K君はだまって頷いてみせたそうだ。涙を一筋だけ落として。 そして店からの帰りに、一日中ショックだったはずのK君はこう言った:「You know, you're a great mom.」 ステキなママだね、と言う。その通りだ。S女は、ステキだ。 ここでS女は泣いてしまった。 アタクシも必死で泣かないようにこらえた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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