テーマ:☆★バイク★☆(8147)
カテゴリ:不思議な友
感情家大親友B女の愛車はトライアンフのヴォンネヴィルT100。控えめでいてめだつバイクだ。レトロで、渋くお洒落。長~い脚の彼女が乗ってるとカッコイイ。
ある日、洋館のダイニングでいつもの様に数人ケラケラ笑いながら食事をしていると、ふとムーミンが「おい、B女」と言った。視線の先が大きなピクチャーウインドウの外へ続いているのでアタクシ達も皆外をみた。 ドライブウェイの端が見える。そこにB女の大切なバイクが停めてある。なんだかこの古い町並みに似合っているがやっぱりハデ。 そのとなりで見たことの無いちいさなおじいさんが、黒いベレーをかぶって、しきりにアタクシ達に身振り手振りで合図している。バイクを大げさに指差し、窓から覗くアタクシ達を指し、そしてうなずきながら、微笑しながら手招きをする。「このバイクの人、出てこい。」 ちょっと不思議な顔をしてB女はその老紳士に従い、外に出た。中に残されたアタクシ達は好奇心一杯。窓に釘付け。そっと覗いていると、なにやら楽しそうにやはり身振り手振りで話す老人に、B女はしばらく付き合わされていた。30分ほどして、やっとまた入ってきて、テーブルにつき、老人がした話をそのまま教えてくれた。 戦争中、僕は若僧で、若すぎて志願できなくて、でもイギリスは困っていたからメッセンジャーとして従軍したんだ、と。その時乗ってたのがこれ!これなんだよ!トライアンフのこの形!また作りだしたのかい?うれしいなぁ、もう二度と博物館意外ではお眼にかかれるとは思っていなかったからなぁ、大事に乗ってやっておくれよ。 数回同じ言葉を繰り返していた、ということ。 その後B女は大失恋をし、仕事もあわなくてストレスで倒れてしまった。二年ほど前その合わない役職を辞めた。 近年、「ものすごく低給なんだけどね」と美術館のスタッフに採用された。彼女にあっている。とても生き生きと美術に専念している。 だが、だんだん「ものすごく低給」が深刻になってきて、「節約しなきゃ」という思いが募り、とうとう夏にしか乗らない愛車のトライアンフを、今週、「中古バイク」の欄に載せたそうだ。アタクシも、ちょっと寂しい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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