テーマ:恋愛について(2607)
カテゴリ:不真面目文学
[画像・ともに滅びる=ロマンチック?] それは、旅行先で借りたある海辺の別荘のキッチンにあった。 手にしたとたん、思わずその場にしゃがみ込んで痛くなるほど笑ってしまった。 あぁ、これって性悪な冗談なのだろうか。 それとも本当に「バレンタイン」もしくは「ロマンチック・ギフト」として販売されていたのだろうか。 真ん中の赤いハートの中にYou and Meとある。それはまぁ、クサイけれどいいとしておこう。 問題はそれを囲むピンクのハートの内容である。 「この歴史的な恋人達の様に私達も幸せで情熱的でいようね」という意味なのであろう。 だが。殆ど全部、悲劇的・自滅的・戦略的などなどの大失敗例である。 samson and delilah 恐るべきサムソンの怪力を封じ込めるにはどうすればよいのか。その秘密を探りに敵陣は美女デライラに金を握らせ、送り込む。誘惑されて口を割るサムソン。彼は髪を刈り取られると凡人になってしまう。「勇気あるヒロイン」なのか「ヒーローを騙した悪女」なのか意見が分かれる所だが、デライラはサムソンが油断した所を狙ってその髪を切り、「ただの弱い男」にしていまう。その後サムソンは敵軍に簡単に捕らえられ、目をつぶされ、奴隷としてこき使われる。その最後にもまた自滅的な武勇伝があるのだが、これは幸せなラブ・ストーリーとはほど遠いのでは? napoleon and josephine ナポレオンはジョセフィーヌに一目惚れ、そしてめでたく恋愛結婚。けれど跡継ぎが生まれず、焦ったナポレオンは彼女を捨て、オーストリアのマリー・ルイーゼと政略結婚をしてしまうが、自分の愚かさを一生悔やむ羽目になる。ジョセフィーヌはマルメゾン邸で寂しく余命を暮らし、一人寂しく死去。ナポレオンも島流しにされた末「毒殺」されたか「胃癌」で死んだか。 antony and cleopatra 皇帝カエザルの愛人であったクレオパトラはローマでアントニーに出会う。カエザルの暗殺後、ローマの政権を握る三人(他オクタヴィアン、レピドゥス)の内の一人だったアントニーはクレオパトラの資金目当てに彼女を追うが、二人は恋に落ち双子が生まれる。けれどアントニーはその家庭を捨て、オクタヴィアンの妹オクタヴィアと政略結婚する。だがその後今度はオクタヴィアを捨てクレオパトラの元にもどる。最終的には内戦になり、オクタヴィアンが攻め込んで来たと聞いたクレオパトラは「自害した」という噂を広める。それを聞いたアントニーは悲しみ狂って自分に刃を向けるが、死に至る前に「クレオパトラは実はまだ生きている」と聞き、側近に抱えられ彼女の元へ担ぎ込まれ死ぬ。その後、オクタヴィアンと和解を試みるが失敗したクレオパトラは、毒蛇を胸に抱き自害する。 adam and eve 「私の世界にはあなたしかいない。」聞こえはいいかもしれない。論説も色々存在する複雑なミソロジーである。実はイヴは後妻であったとか色々な説がアポクリファ・聖書外典で語り継がれている。けれど、なにがともあれ、最終的には大失敗して、大天使に剣を突きつけられ、泣く泣く恥をさらしながら楽園を追われてしまう悲劇である。 scarlett and rhett 「frankly, my dear, i don't give a damn.」おメメ点々になるほど絶望的で衝撃的な捨て台詞で見事木っ端みじんになる「風とともに去りぬ」の主人公達の関係。「幸せなカップル」と聞いて彼等を連想する人はまずいないだろう。 lancelot and guinevere 様々な風に語り継がれて来た原型不明の伝説であるが、それらに共通点はある。まず、信心深いグイネヴィアは正義の味方アーサー王の妃である。ランセロットは騎士道の頂点、その武勇や忠義に勝る者ない勇者である。グイネヴィアとランセロットはいつしか許されない恋に落ちて泥沼の苦しみと罪悪感に悶え、ついに忠義を破り神に背き道ならぬ恋愛に踏み出してしまう。その結果国は零落れ、アーサー王を裏切ったグイネヴィアは民の怒りを買い、処刑されそうになる所をランセロットに救われるが、それがもとでさらに内乱になりかけ、ランセロットはグイネヴィアをまたアーサー王に差し出す、とういう不可解な結末である。「しあわせ」の「し」もない悲劇でしかない。 romeo and juliet 誰もがご存知の星回り悪い呪われた恋人達。うまく行かず、苦しむだけ苦しんで、行き違ってお互い自滅してしまう。ジュリエットは13歳の子供だし。よく読むと「実はロミオは誰でもよかったんじゃないか?」という論説も一理あり。 ここまで「一見ロマンチックだけれど実は惨めに苦しみ滅びた恋愛」の例をそろえるとなると理知的で邪悪な悪戯にしか思えない。ただの不注意とはどうしても思えない。 さらに最後の二例、 cinderella and prince charming mickey and minnie などととぼけ込んでいるのが怪しい。 もし日本で発売されるなら 安珍 and 清姫 とでも...? それとも、念情燃やす悲劇的な愛でこそ印象的なのだろうか。 - - - やっぱりアタクシはバウシスとフィレモンの恋愛物語が大好き。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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