テーマ:妊婦さん集まれ~!!(4770)
カテゴリ:不思議な友
注:お産の話です。デリケートな方はご遠慮くださいませ。
- - - 3センチ。 小さな小さな距離に思える。 だが、陣痛本番に入って一時間ごとに約1センチ、と言われている。 そして、たいがい子宮口が10センチで、生まれる。 なので陣痛が始まってまだ一時間しかたっていないのに3センチ、と言う事は、Jのお産は超特急進行しているのだ。 車の中で今にも生まれそう、と思ったのも無理もない速度なのだろう。 だが陣痛室に到着して安心したのだろうか、それまで3分ごとに押し寄せていた痛みの波が、なにやら減速してしまった。Jの表情に余裕が見える。 J:ありがとう。タリア、一緒に来てくれてありがとうね。 じ~~~ん。 アタクシこそ光栄なのに。 こわいけど。 アタクシ:いい?顔をおしぼりで拭くからね。 それに比べてD!あんたはそこに突っ立ってないで、なんかしたらどうよ!? ぁあ?? それって揉んでるつもり? ...やっぱりこわいです、姐さん。 吐く! いえいえいえ、Dはどうみても吐くほど嫌な男じゃ... ぐ... あ、本当に吐くのね。 そばに山積みになっている厚紙製膿盆はこの為だった訳か。なるほどなるほど。 などと考える暇もなく一枚ひっ掴みJの顎の下に。 ぷぺっ。 そんだけ? 膿盆を素早く捨て、今度は持って来ていたウォーターボトルを渡す。 すすいでね。はい新しい膿盆。ぺってして。 ぺっ。 水ね、出来たらちょっとづつ飲んでね、がぶ飲みしちゃダメだからね。 なんて聞く訳ない。 ごっくんごっくんごっくんごっくんぷはぁ~~~~! 一気に飲み干した。 おぉ。 吐く! だから言わんこっちゃない。 三枚目の膿盆を捨て... 水っ! はいっ! 走る。 ここで恐るべき光景を目撃してしまう。 ベテラン看護士がいる受付はカウンターが弧を描いて奥へのび、陣痛室のナース・ステーションもかねている。 あの「おっとり」看護士である。あ~~、お水もらうのに何十分かかるのかなぁ~~... びゅん。 え? カウンターに近づいた時、受付の看護士が反対方向に瞬間移動したのである。 派手な格好の老夫婦が陣痛室に押し入ろうとしているのを岩の様に遮っているのだ。 看護士:ですから、とりあえず、あちらにおかけになってお待ち下さい。 だってあたしのベイビーがベイビーを生むのよぉ~! あちらに、おかけ下さい。お取り次ぎいたしますので。 あ、言っちゃダメダメ!ビデオとるのぉ~!あの子いやがってたけど絶対後になって感謝するんだからぁ~!これは前触れなく入ってかなきゃ~! あちらに、おかけ下さい。お取り次ぎいたします。狭い場所ですし付き添いの方はご本人の意志で... 何よぉ~、あんた、邪魔する気?え?え?誰もかれも、あたしのベイビーまでママは来るなって言うし、弁護士呼んで来てやろうか?あんたなんか安月給なんだからイチコロでしょう!そこをどきなさい! 思わず三歩ほど踏み出してしまったが、その必要は皆無。 看護士がにっこり微笑する。 急に迫力が急増...? ひしひしと圧力を感じる。彼女は霊気の様な物をビリビリビリと放っている。 こわい。 Jよりこわい? いや、どっこいどっこい。 ...何て言ってる場合ではない。 どうぞ。 あちらに。 おかけ。 下さい。 This is a hospital. Do you want me to call security? コノヒト、デキル。 老夫婦はすごすごとソファに腰掛ける。 看護士は呆気にとられているアタクシに円満な微笑。カウンター内に入りながら、 お水ね♪ どうして?あ、そうか、空のペットボトルをにぎっているんだっけ。 はい、お願いします。 あっと言う間にアタクシはプラスティックのコップを握らされていた。肘付きのストローまでついている。この手際よさ。 ほどよい量にしておいてね、あまりがぶ飲みするとダメだから気をつけてね。 はい!ありがとうございます! こぼさない様に走ってJのもとへ。小学生の運動会みたい。 おまたせ! ずっ。ぺっ!ぬるいっ!氷っ! はいっ! また走る。 あのぉ、すみませ... はい、氷。 え。え? 超能力? そう、生まれ来る命の力とともに、何か、違う不思議なエネルギーも流れていた。 - - - 数分後に破水。 その五分後に分娩室に案内される。 この時、7センチ。 やっとやっと。 いざ。 - - - この後、Jの大爆発のきっかけになるのは、交代してきた若い看護士? 専門医? それとも...? Jの噴火を見ながら思わず大笑いしてしまうのは、D? アタクシ? それとも...? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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