テーマ:妊婦さん集まれ~!!(4770)
カテゴリ:不思議な友
二十代の女性がいきなり友人のお産を見学させてもらえるとは光栄でもあり、これ以上ない勉強にもなる。だが。人生、避けて通れない苦しみがあるなら、事前に見たくない、と思う人もいるだろう。
拷問の苦しみは実は実際に与えられる肉体的なダメージではなく、それをじわりじわりと予想する精神的な苦痛だと言う。いきなり針で刺されるのと、刺されますよ、ほら、刺されますよ、と言われてから刺される方が遥かに痛く感じるらしい。 でも今まではそんな事など考えずに、ただ無心にJの指示に従っていた。 - - - やっと分娩室に通されたのはいいが、そのまま誰もこない...!? Jは分娩監視装置を取り付けられ、鼻息荒く命令をくだし続けている。 J:D!あたしのバッグはっ?! D:あ。え。車の中...? ば*やろうっっ!この役立たずがっ!ぐうぅぅぅぅっ!い、痛い痛い痛い!! このバッグはJが何ヶ月も何ヶ月も、これを持って行こう、いや、やめてこっちにしよう、などと一生懸命思案しながらつめたバッグである。 アタクシ:D、鍵貸して、アタクシが取りに行くから。ほらはやく。 タリア、あんた行っちゃダメ! 僕が行くよ、ちょっと。 こらこら。Dはそばにいなきゃ。ほら、鍵。 受付のベテラン看護士にウィンクしながら外に駆け出すと、あぁ、春風がステキ。新緑の香りがする。何時だろう。四時? ムーミンは今頃どうしてるだろう。 Lちゃんはちゃんと寝付いたかしら。それとも、やっぱり迷子の迷子の仔猫ちゃんみたいに泣いてるかな。 一瞬、ムーミンが ♪い~ぬぅのぉ~、お巡りさん、困ってしまってわんわんわんわ~ん♪ わんわんわんわ~ん♪ と一緒に泣いちゃってるイメージが浮かんでしまった。 あはは。 車のトランクを開けた時、また軽い立ちくらみ。今まではJの腰やら背中を揉みながらだったので力を入れるふりをして強く寄りかかってごまかしたりしていた。 ここ数日続いていた寝不足がたたっているのだ。 あぁ。こんな事になるんだったらふさわしく心と体力の準備をしてから役割に取り組みたかったのに。 う~ん。 深く考えずに分娩室に走ってもどろう。 それにしても、何が入ってるのこのバッグ?一体何をどうつめたらこんなに重くなるのか?? ...実は、トンデモナイ物が入っていた。 それは、すぐ判明する。 分娩室にもどると、Jが酷いオカンムリであった。それは、廊下まで聞こえていた。 なにさ、あれはっ!!?何だと思ってるんだ、一体!!ぎゃーーーっ!! な、なに? どうしたの? どうやら、子宮口の開き具合を調べに来た若い看護士の何気ない一言が災いだった様だ。 調べた後、分娩室の外で同僚に どう? と聞かれ、 うん、ま~だまだ、あんまり痛がってないし。 と答えてしまったらしい。 あんまり、痛がって、ないですと?? ぶわっはっはっはっはっはっ! 妹Jも違う病院でまったく同じ事をいわれたという。 妹Jは痛みに対して悲鳴をあげず、逆に「ごくっ」と飲み込んでしまう。 ぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎり、と手のひらに爪が食い込み血が滲む程拳を握りしめていた時、 どう? うん、ま~だまだ、あんまり痛がってないし。しばらく見に行かなくても大丈夫よ! という看護士の会話が聞こえてしまい、「まずい、無理にでも声をださなきゃ」と思って始めてわざと 「うわぁ~~~~~~~~~っ」 と悲鳴をあげたそうだ。演技力ゼロの彼女はこの瞬間をとてもとても情けなく思ったそうだ。 その声に飛んで来た看護士は妹Jの子宮口を調べるなりびっくりして医者を呼びに駆け出て、その五分後にオイが産声をあげていたらしい。 - - - この看護士の失言に少しご立腹のJ、この直後に真剣に青筋を立てての激怒。 アタクシは例のトンデモナイ物を手渡されてアタフタ。 次回、ついに生まれそう...? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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