on the other side of the world

注：お産の話です。デリケートな方はご遠慮くださいませ。



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見えた。

トンデモナイ状況の中、なるべく医師の邪魔にならない様、無理な体勢で大きな重い鏡を持たされ、腕が小刻みにふるえだしてしまって

J：おいこら！HOLD IT STEADY！！

と大声で怒鳴られていた最中に、見えた。







赤ちゃんの、頭が、見えた。







　　　　　　　...！







アタクシは、それまで一体どの様な光景を予想していたのだろう。

生まれ来るその姿をどの様に想像していたのだろう。

きっと、Lちゃんのくるんくるんのピカピカ金髪を無意識に思い浮かべていたのかもしれない。

だが、一瞬見えたその胎児の頭のてっぺんは、真っ黒だった。

真っ黒。

ぎょっとした。

アタクシ：J！J！見えた！見えた！もうすぐだからね！頑張れ！

見えた！？鏡っ！もっとちゃんとっ！！！しっかり持たねぇかこのやろうっ！！

ひぃ～。

ごめん、J。あ、先生、ごめんなさい。

邪魔です！もっとあっちに寄って！

何勝手な事ほざくんだこの尼っっ！







実際は「b」で始まって「ch」で終わる単語が出て来ちゃいました。ひぇ～。







SHUT THE F*CK UP！！タリアッ！動くんじゃないよ！そこそこ！

落ち着いて！もうすぐです！

この時、Jは肩肘を立てて身体を支え、もう片方の手で必死に胎児の頭を確認しようとしていた。

その手を医師が何度も取り払う。

let me see! i need to be able to see in here! can someone hold her hand back?







　　　　　　　誰か彼女の手をおさえてて下さいですって？　命惜しくないのですか？







ここで火花飛び散る大バトルが開戦。

ばちばちばちっ。

ぬぁ～にぃ～？i'll put my hand where i want！　ぎゃあああああああ！！！

keep your hand away! I SAID, KEEP YOUR HAND AWAY! LET ME DELIVER THE B*BY!!

手をどかしておいて下さい！分娩させて下さい！

WHAT DID YOU SAY?　分娩するのは、あんたじゃなくて、あたしだっ！！　きぃーーーっ！！！！







　　　　　　　きゃー。言っちゃいましたね。言っちゃいましたよ。







タリアッ！見えないよっ！！

アタクシは気が気でない。この間ずっと分娩監視装置のアラームが鳴り響いており、どうやら胎児が苦しんでいる様子が伺える。

そばで白衣や手術着のスタッフが遠巻きに覗き込んだり、機械の設定をしていたりで、ちょっと前までのがら～～～んとした分娩室とは大違いだ。

大変な事になっているのではないだろうか。皆深刻な表情だ。

何度も見え隠れする真っ黒でツヤツヤの頭のてっぺん。

がんばれ。

がんばれ。