テーマ:妊婦さん集まれ~!!(4771)
カテゴリ:不思議な友
注:お産の話です。デリケートな方はご遠慮くださいませ。
- - - 若い医師に「手をどけて下さい」と強く言われ、Jは烈火のごとくメラメラと燃えている。 治療しようとしている医師の邪魔をし、指示に従わず反対に食い付くなどとは許しがたい事だ。 だが、少しの間、理性を脳の奥にしまいこむ時があるだろう。殆ど何をしても、何を言っても許される時、それは陣痛の苦しみに耐えている時であるかもしれない。 でも。 アタクシ:J、頭は触れたでしょう? もう生まれるから手をどけてね わなわなわなと震える腕で鏡を持ちながら言うアタクシの顔をチラッと見たJは、すんなり手をどかした。 医師:その調子です、もう一回、もう一回いきんだら生まれますよ、さぁ、用意、GO! J:がぁああああああ!!!!! う... 生まれた!!! 頭が生まれてから、肩や身体を生むためにもう二、三度いきむのだと思っていたら、そんな事はなく「あっ」と言う間。 黒いぬめぬめとした頭が、ぎゅうう、と出て来たと思った同時に身体が「しゅるん」と生まれ出た。 髪が真っ黒でびっくりしていたアタクシだが、赤ちゃんの色にもびっくりした。 顔も身体も淡い空色だった。 「『ベビーブルー』だ!」と不謹慎に感心してしまったほど、鮮やかなパステル・ブルー。 でもそれも一瞬の事だった。 医師に取り上げられて隣の看護士に渡され、保育器に乗せられる間、一秒、二秒でピンク色、三秒で真っ赤な「赤ちゃん」になった。 あぁ。 でも感動している暇はなかった。 赤ちゃんが取り上げられて、おぎゃ~!と泣き、にこやかに「はい、お父さん、へその緒を切って下さい、おめでとうございます!」 ...なんてのんびりほんわかな雰囲気ではなかったのだ。 白衣のスタッフが保育器のまわりで、深刻な顔で手早く作業をしている。 小さな小さな掃除機の様な器具で赤ちゃんの口の中に溜まっている液体をそっとそっと吸い取っている。 分娩監視装置のアラームが鳴っていた時、たしか「meconium」がどうのこうのと相談しているのが聞こえた。 「胎便」の事である。胎便を吸引してしまったらしい。胎便吸引症候群の対応のために医療従事者がこんなに何人も呼び込まれたのだ。 大丈夫なのだろうか。 そして、Jは? おめでとう!おめでとう! D:あはは、ありがとう! おい、タリア、もう降ろしていいよ! え? あ、そうだね、ありがとう。 アタクシは心配のあまり、重い鏡をそのまま持っていたらしい。 肝心のJとDは生まれた安心と感動で二人してふにゃふにゃになっていた。 赤ちゃんの状況が心配かもしれない、とはまだ把握していないらしい。 この体験でアタクシはびっくり感動した事が二つあった。 一つは勿論この誕生と、同時にカメレオンの様に変わった赤ちゃんの身体の色。 そして二つ目は、まだこれから起こる事になる。 - - - 北米でお産・「1」へ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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