カテゴリ:移住民子供体験談
子供の頃、一度だけ日本に遊びに帰った夏、確か11歳だった。
その時、武芸の先生曰く、折角日本に行くんだから日本の道場で練習させてもらってきなさい、という事で妹Jと二人、ある道場で数日間お世話になった。その短い期間、都内の伯母の家にお世話になり、近くの銭湯に通う事になった。 女子が少ないのはどこの道場でも同じらしく、そのおかげかもしれないが気さくで楽しいお友達がすぐできた。嬉しかった。Oちゃんは饒舌で明るくて、アタクシ達は三人でげらげら大笑いをしながらぺちゃぺちゃおしゃべりをしていた。 だがアタクシ達を毛嫌いする男子もいた。「へー、おまえら日本人じゃないの、へー、不気味ぃー」とせせら笑っていたのだが、その後稽古中に妹とアタクシに立て続けにコテンパンにされ、むっつりと黙り込んでしまった。 ごめんね。 今度は「あいつら、女じゃねぇ、バケモノ」とアタクシ達をちらちら見ながら気味悪そうにひそひそ話している。 もうその頃は日本でバケモノ扱いされるのは慣れて来ていたのであまり気にならなかった。明日もまたあの子達と稽古なのか、と思うとちょっと気が重かったが、その晩初めて銭湯に行く事になっていて、その上、じゃああたしも!とOちゃんも一緒に来てくれる事になって、妹Jもアタクシも嬉しさと緊張とでわくわくどきどきしていた。 伯母と一緒に到着すると、Oちゃんが脱衣所(?)で待っていてくれた。嬉し恥ずかしの初銭湯。皆の前で脱ぐのも、そのままお風呂場へ行くのも、なんだか恥ずかしい。その上、日本で人との距離の取り方に戸惑っていた。間合いが狭い。「隣」に立つのでも座るのでもとんでもなく近く感じる。だがそんなささいな事でさえ日本独特の共同体制に入り込ませてもらっている気がして嬉しかった。 大きな湯船に感動し、すぐ飛び込みたかったけれど、まず身体を洗う事になっているのよ、と伯母に教わり、シャンプーを泡立てていた。 とにかく初めてなので全部見よう見まね。でも他人を見習おうにも裸の人をジロジロ観察するわけにもいかないので伯母の真似をしたり、隣の知らないお姉さんのする事をちらり、ちらり、と横目で見たり。「あの一番あっちのお風呂はすんごく熱いから入らない方がいいよ」とOちゃんに教えてもらったり。 その時だ。 「えぇ~~~っ!?なんでお前がいるんだよ!?」 アタクシを怒鳴りつけているのはなんとあの男の子だった。アタクシ達をバケモノ呼ばわりした、あの子。 もちろん、その子もアタクシもすっぽんぽん うそ~~~。 なんでよりによってこんなヤツとお風呂に入らなきゃいけないんだ。 第一なんで女湯に男子が入って来てるんだ。 小学低学年ならまだしも、11歳、12歳となるとモノスゴク嫌だ。 「そうなの~、こいつまだお母さんにつれられてこっちに入ってるの~、やだね~ 」とOちゃんが朗らかに言うのだが、アタクシは隠れるべき?逃げるべき?湯船に走るべき?いやそしたらおシリが見えちゃう...? 明日の稽古はどんな顔をして行ったらいいのか? それより、今週毎日稽古の後の銭湯でこの子と一緒なのか? げんなり。 「女の子らしさ」の微塵もない事を誇りにさえ思っていたアタクシだし、「女じゃねぇ」と言われてもふふん、と鼻で笑っただけだったのだが、やっぱり嫌いな男子に見られて平気ではないと言う事はやっぱりどこかちょっぴり女の子らしさが宿っているのかもしれない。それをよりによってこのイヤなヤツに思い知らされ、今思い返しても悔しい。 因に翌日、皆何もなかった素振りだった。それは何もなかったふりだったのか。それとも気にしていたのは本当にアタクシだけだったのか。 それにしても、いつかまた日本で混浴を経験する事はあるのだろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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