テーマ:見上げた空はどんな空(1468)
カテゴリ:家族・実家も北米
[画像・空に満開] ねぇ、日本に帰りたいと思う?と時々聞いてみる。 お花見をしながらヨボヨボ祖母はうふふ、と笑った。「ぜんぜん。」 ぜんぜん? 「もうお友達もいなくなっちゃったし。おばあちゃんもうヨボヨボだし。」 お母さんとまた行けばいいのに。日本でお花見したいと思わない? 「こ~んなに綺麗な桜、日本で見に行ったら大変よ~♪」 ...と言うのだが。 アタクシが幼い頃一緒に移住したヨボヨボ祖母は、当時まだ五十代のシャッキーーーーーンッッとした痩せ形・足早・元気一杯のおばあちゃんだった。アタクシ達姉妹が三人とも毎晩色々な習い事の送り迎えでがたがた忙しないスケジュールの中、祖母がいてくれた分家庭が安定していた。 勉強の鬼でちょっとキツ目の母と、元ガリ勉の無口で厳しい父と、さりげなく頭脳明晰でお花好きで優しい祖母。 祖母は誰よりも足が早く、アタクシ達はひいこら後を追った。英語がまったく出来ないのに一人で颯爽と出かけるのを好み、バスや電車を乗り継いで出かけてはいつもいつもお菓子や小さなお土産を買って来てくれた。 隣組のそばに美味しそうなパン屋さんが出来たからクッキー買ってきちゃった、という祖母に「へー、なんて言って?」とからかい半分聞くと、指をさして、じす、しっくす、じす、ふぁいぶ、と身振り手振りで買い物をしてくるのだ、と言う。 しばらくして、母の都合で一緒に隣組に連れて行かれた。そのパン屋さんにもついでに寄ってみると、あちらは中国人でまったく英語が通じなかった。 英語が判らない同士、笑顔で指を三本立てたり、五本立てたり、こっち?じゃなくてこっち?と手で示したり、笑いながら買い物をする祖母達を逞しいと思った。 その逞しかった祖母、何キロてくてく歩いても疲れを知らなかった祖母は今、外出先で駐車場がちょっと遠いと車椅子を使わなくてならないほどヨボヨボ。 そう言えば移民してすぐ、隣組に通い始めた頃、「おばあちゃんが一番若くて元気なのよ」と笑っていた。「ほんっとうにヨボヨボのおじいちゃんおばあちゃん達もいらしてね、おばあちゃん沢山お手伝いができそうよ」と。 今、めったに行けなくなったその隣組のグループ活動で一番足手まといになってしまうのは、きっと祖母だ。 あんなに活発だった祖母が徐々に自由を失ってしまった。ちょっとづつちょっとづつ。 そんな彼女が曾孫達にあげるお菓子を買い溜めしてこっそり渡すのは、昔いつもちょっとしたお菓子をもらって嬉しかったのを覚えている食いしん坊のアタクシ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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