on the other side of the world

ある雨の朝、車に乗ろうとしたら何か変だった。

ガレージを日曜大工の材料で一杯にしてしまい珍しく路上駐車した翌朝だった。

いつも通りなんとなく遅刻気味で、ムーミンが大急ぎで怪猫に餌をやっている間に小雨の中、車へ小走りすると...

パサットの窓という窓が全て全開で、ムーンルーフまでぽっかり開いている。

ん？

車の中を覗くとレザーシートがしとしと降る雨に濡れている。

んん？

シートの上がなんだか散らかっている模様。

んんん？

グローブ・ボックスが開いていて、その中にあった地図やらキャンディーやら車検証などが助手席にお行儀よく並べられている。







　　　　　　　　　　　これって　ヤラレタ？







盗られる様な物入れてあったっけ？

それより、これで遅刻決定じゃないか！ぎゃー。

洋館に駆け戻るとムーミンが玄関の鍵をかけているところだった。

説明しながら座席を拭く為のバスタオルを持って、今度は二人で車を眺めた。車の中びちょびちょ。

「これって、指紋とかついてたら拭いちゃまずいんじゃない？」







きっとご存知の方は少ないと思うのだが、VWの車には秘密がある。

電子キーで「ピピッ」と解錠するのが癖になるが、アナログ風に運転手側のドアに鍵を差し込んで回すと解錠する。これも普通ね。

さらにそのまま、回したまま三秒ほど待つと車の窓とムーンルーフが全部同時にウィーーーンと開く。真夏の駐車場で蒸し風呂状態になった場合などとっても便利。

案の定、運転手側の鍵穴のまわりが怪し気に引っ掻かれていた。

でもよく見ると、先月ムーミンがいそいそと買った衛星ラジオが盗まれずにそのまま輝いている。

何なんだ。

座席の間のコンパートメントにも、駐車場用の小銭が数ドル分、そのままじゃらじゃら盗られずにあった。

んんん？

どうなってんの？

結局盗られたのは「？？？」と思うものばかりだった　と思う。

・携帯電話用のイアホンを入れていた小さな小さな袋。イアホンをわざわざ置いて袋だけ！？

・十枚ほどの地図の中から、サン・フランシスコの地図だけ。

極めつけは、二十枚ほどあったCDが、







　　　　　　　　　　そのまま放置







ってアタクシ達の音楽の趣味がダサイって事？？ですよね？







とにかく「今朝は遅刻するよ～」と電話した後、（殆ど）何も盗られていないけど一応警察にも連絡した。

これってどうなってるんですか？

「イグニッションもいじられてませんか？」

え。

見てみるとイグニッションにスクリュードライバーを突っ込んだ様な痕があった。なるほど。「車の中身」じゃなくて「車ごと」盗ろうとしたのね。







　　　　　　　　　　　アタクシ達って、ダサイ上にモノスゴク鈍いらしい。









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これって実は続く。