テーマ:海外生活(7772)
カテゴリ:洋館の毎日
ケリーはフロントのスタッフとあの煙の話をした後、他にも幽霊出るでしょ、と声をひそめたらしい。
1・自殺したらしい悲しそうな若い男性 「初日にロビーに一歩踏み込んだ時から若い男の人が見えてるのよ。いるでしょ。悲しそうな人。スーツ着て。」 フロント・スタッフ、顔面蒼白でただコクコク頷く。 「自殺でしょ。それも結構最近。」 コクコクコクコクコク。 「ここにいるべきじゃなかったとか来るべきじゃなかったとか。何の事かあたし判んないけど。」 コクコクコクコク! 2・白く裾の長いドレスの女性 「で、長いドレスの人。白いリボンの、白いドレス。出るのはロビーと、あっちの大理石の階段と、ひとつ上の階でしょ。」 コクコクコクコク! 「メザニン(中二階)のギャラリーからロビーを覗くのね。」 コクコクコク。 「時々血だらけ。」 コクコクコク。 3・いたずらっぽい小さな男の子 「五歳か六歳かな?小さないたずらっこがいるね。」 コクコクコク。 「主にメザニン・フロアだけどロビーにも来るしエレベーターのボタン、届くの全部押しちゃったり」 コクコクコク! 「メザニンのカーテンに隠れるのが好きで、クスクス笑って」 コク!コクコクコクコク! 「時々お客の子供と遊んで、その子達の親が心配してフロントに聞きに来るでしょ。あのメザニンの子の親はどこですか、って。」 コクコクコク! 一々ずばり言い当ててしまったらしい。 だが、やはりこれだけを聞いていたら、あー、どれもありがちだなー、それにどうせコールドリーディングか何かでしょ、と密やかに冷笑していただろう。 実際最初の数日は あ~、幽霊ね、はいはい。 と軽くあしらっていたので、こう詳しく聞くのは最後の晩だった。 もっとはやくちゃんと聞いとくんだった!と後悔したが、後に「実は聞かずにいて正解だった」と深く深く思い知る事になる。 「あたしね、時々見えたりするんだけどね、こんなの初めてよ、言葉とか情報とかが頭に浮かんでくるのよ、でもね」 そこで言葉を切り眉を寄せた。でも?でも何? 「今までの話の現象では困ってないでしょ、って聞いちゃった。」 「現象では」って何?「は」って? 知りたくない様な。ワクワクしちゃう様な。 「これ聞いても今晩一緒に付き合ってくれる?」 コクコクコクコク。スタッフが特別に案内させてくれ、と頼まれたホテル探検ツアーの事だ。 じゃあ、と続けた彼女の言葉に鳥肌が立った。 「一番困ってるのは顔に近づいていきなり絶叫する女性でしょ。」 やっぱり行くのヤメた、なんて言ったら怒る? - - - 続く あるいは、目次 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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