カテゴリ:探偵
朝の7時25分。赤いコンビニには、必ず一人の男がいたものだ。
出勤前に立ち寄るのが日課だからだ。 立ち読みをし、飯を買い、彼女に電話をかける。 数ヵ月前、数日間追尾したが、いつも同じ行動だった。 加藤さん、あれからどうしたろう。 彼女とは別れられたろうか。 そんなことを考えながら、井上さん(別の案件の男)を尾行していると、 なんと『赤いコンビニ』に立ち寄るではないか。 7時22分のことだった。 彼は、雑誌の立ち読みを開始した。 一瞬期待したが、加藤さんの姿は見受けられない。 だって、まだ22分じゃないか。 今にきっとに現われるさ。 自分に言い聞かせ、調査に集中しようとするが妙に落ち着かない。 7時30分。加藤さんは現われない。 さすがに懲りたか・・・。もしかすると、他のコンビニに変えたのかもしれないな。 それとも、離婚でもしたか? 首になった可能性さえある。 職場の女性社員に手を出してはいけないからだ。 世の中には、夫の会社にだって構わずに怒鳴り込む依頼者がいる。 『あら、社長さん、いつも主人がお世話になっております。 ところで、山田さんいらっしゃる?』 とやるのだ。 夫は破滅する。 かわいそうな加藤さん。 二度と会うことはないだろう。 井上さんは、なおも立ち読みを継続。 7時32分、意外にも加藤さんが現われた。 『遅いよ、加藤さん!!』 心配させられた腹いせに叫んだものだ。 加藤さんはお気に入りの雑誌を手に取り、立ち読みを開始する。 井上さんの隣で(笑) ああ、私を媒体して、今この二人が交わったのだ。 本人達は知る由もない。 だが、それでいい。 今日は私にとって記念すべき日になった。 奇跡のツーショット写真が生まれたのだから。 本当は、二人にはニッコリしてもらいたかったが、 カメラに目線さえくれない(笑) 特に加藤さんがひどい! やたら周囲を警戒して、キョロキョロしている。 だったら立ち読みなんてしなきゃいいのにね・・・ 私は加藤さんに近づくと、おもむろに雑誌を手に取り、立ち読みを開始する。 加藤さんを中央に、私と井上さんが挟む。 ああ、なんとスリリング。なんと幸せな瞬間。 私って本当に変わった野郎だ。 変人なのかもしれない。 そして、さらに思った。 誰か、スリーショット撮ってくれないかしら・・・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.03.31 19:27:10
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