さよなら、ハッブル望遠鏡
今日(2月9日)の朝日新聞の天声人語に、ハッブル望遠鏡がとうとうその役目を終えるかもしれない、という話題が書いてありました。天声人語2月9日ハッブル望遠鏡は、大気の邪魔を受けない大気圏外に打ち上げられた大型望遠鏡。それまで地上からはとらえることのできなかった宇宙の姿をたくさんとらえ、天文学の進展に大きく貢献しています。ところが、打ち上げ直後から、結構トラブル続きでした。そこで、いろいろな不調を抱えていたハッブル望遠鏡の修理をどうするか、という問題は、専門家の間で熱心に議論されていたのですが、7日に発表された米予算教書には、ハッブルの修理費が盛り込まれなかったそうです。盛り込まれたのは「誘導して太平洋に落下させる『水葬』費」だけだったとか。つまり、事実上、ハッブル望遠鏡の働きに終わりが告げられたわけです。この話題についての科学雑誌の記事の翻訳に関わったことがあります。Scientific American "A Bad Fix for Hubble?"(日本語訳は日経サイエンス3月号Topicsに掲載)ハッブル望遠鏡は、最近は、バッテリーやジャイロスコープ、誘導センサーに問題を抱えていました。そこで、NASAは遠隔操作で無人の修復作業を行う、という計画を進めていました。修理の際、同時に最新装置を追加することができれば、ハッブルの観測能力を10倍以上引き上げることができる、というもくろみでした。しかし、無人の修復作業は技術的にたくさんの問題を抱えていて、成功率が低い上に、かかる費用も莫大。さらに、必要な技術が完成するのにはまだまだ時間がかかるのだそうです。それでは、と、シャトルによる有人修理(宇宙飛行士が船外活動で修理を行う)も検討されていたようですが、宇宙飛行士が負わなければならない危険性を考えると、そこまでは踏み切れない、というのが、関係者の間での見方だったそうです。時間的にも経済的にも、「ハッブル望遠鏡の修理」実現の可能性は低い、と議会に判断されたのが、予算に修理費が盛り込まれなかった理由でしょう。(でも、天声人語によると、まだ「ハッブル延命」を訴える人たちはあきらめていないようですね。引き続き、米議会で議論されるようです。そういうところは、さすがアメリカ、と思います)。とはいえ、これで大気圏外での天体観測ができなくなるのかというと、さにあらず。2011年にはハッブル望遠鏡の後継機、「ジェームズ・ウェブ宇宙望遠鏡」打ち上げの予定があるのだそうです。な~んだ、後継機の計画があるんじゃん。ちょっとホッとしました。後継機の計画があるにもかかわらず、ハッブル望遠鏡延命の声が大きい・・・。それだけ、専門家にも一般市民にも愛されている証拠なのかもしれません。+++そうそう、昨日のビジネス英会話のQuate, Unquate"にアインシュタインの言葉がのっていました。"Anyone who has never made a mistake has never tried anything new"一度も間違いを犯したことがない人は、一度も新しいことをやろうとしたことがない人だ。さすが天才、凡人を励ます天才の言葉は奥が深いわ! と、いつも間違いばかりの凡人=私は感動したのですが・・・今朝の天声人語を読んで、思い出しました。アインシュタインは、「生涯最大のあやまち」をおかしていたんだわ~。アインシュタインは「相対性理論」という、天才的な理論を提唱した人なのですが、実は、この相対性理論にしたがって宇宙の将来を予言すると、宇宙は変化する、という「動的宇宙」像が出てくるのです。でも、アインシュタインは「宇宙が変化するなんてばかげてる」と一笑に付し、宇宙が変化しないように自分の理論の中に「宇宙項」という項を入れてしまったのです(静止(静的)宇宙モデル)。でも、その後、天文学者エドウィン・ハッブルが宇宙の膨張を観測で確認したため、アインシュタインは自分が間違っていたことを認めざるを得なくなったのでした。そういう観点から、↑のアインシュタインの言葉を見ると・・・開き直りの言い訳にも見えますね、「いいじゃん、間違えたって!!」ってな感じの。世紀の天才にも、裏には非常に人間くさいドラマがある、という一例でした(^o^)。