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2005年11月10日
カテゴリ：バスガイド裏話と旅行記
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ ドライバーの奥田は、あたしより１年後に入社してきた。 ３５歳で、ドライバーの中ではかなり若め。 彼との乗り組みは、早々にやってきた。 行き先は、腐るほど行っている伊勢だったので、あたしは安心した。 新人ドライバーとの乗り組みは、はっきり言って憂鬱だ。 なぜなら、道に迷ったりするからだ。 コッチも新人だから、仕事に出れば頼るべきはドライバーなのに、 そのドライバーが、自分よりも道を知らないとなると、 緊張感も倍増。 良く知っている伊勢なら、あたしでもなんとかなりそうだ。 案の定、彼は道に迷い、観光地を行き過ぎたり、 旅館へ着く前には、その近辺を２周回ったりして、 あたしは、お客に謝ったり、案内をやめてナビをしたりと、 散々な一日だった。 その日の夕食では、奥田はひたすらあたしに感謝の言葉を並べ立てた。 奥田は、ちょっと挙動不審？？と思うほど、腰が低く、 １０以上も年下のあたしにも、丁寧すぎるほどの態度だった。 今、あたしを助けてくれているベテランドライバーさんだって、 きっと最初の頃は、ガイドに道を教えてもらったりした過去があるはずだ。 やはり、ガイドとドライバーは、持ちつ持たれつの関係ってことだ。 そんなような事をいい、その気持ちが悪いほどの腰の低さを なんとかやめてもらうように言った。 お客さんの前で、あんまりヘーコラされると、新人だってモロバレだ。 仕事がやりにくくて仕方がない。 その晩、彼は必死で地図を見たのだろうか？ 翌日は、ノーミスでお客さんを無事降ろすことが出来た。 車庫へと戻る帰りのバスの中で、奥田は言った。 「本当にありがとうございました。いろいろと助かりました。 俺、会社で特に話せる人もいないし、良かったらまた 相談に乗ってもらえませんか？」 「あたしなんかまだまだ新人だし、教えられることなんてないけど 話し相手くらいならいいですよ。」 そう言って、携帯番号を教えてあげた。 社内で、ドライバーとガイドが電話番号を交換するのは普通だった。 仕事上、教えなければいけない状況も多々あったし、 社内で、仲良くしているドライバーさんは、 ほとんどあたしの番号を知っていたから、 特別な意味もなく、警戒心も全くなかった。 それが、いけなかった。 それから、奥田の電話攻撃が始まった。 はじめは、「この間はありがとう」という面目。 その後は、「○○へ行くんだけど、どんなところ？」と質問攻め。 終いには、用もないのに電話をかけてくるようになった。 だんだんうっとおしくなったので、 「変な噂を立てられたら困るから、 必要以上の電話はやめてもらえませんか？」 と、言ったら、 「俺はかまわないよ。」と。 お前は困らなくても、あたしは困るんだ。 とは、言いづらかったので、 「ドライバーは、ガイドに手を出したらクビなんですよ。 せっかく入った会社で慣れてきたのに、根も葉もない噂立てられたら 居辛くなりますよ。」 「遊び半分はダメだけど、俺は、真剣だからいいんじゃない？ 実は、乗り組みになる前から、俺はあんたのことを知っていたんだ。」 ナヌ？？？ 言葉を失っているあたしに、奥田は追い討ちをかけた。 「あんたは、俺の初恋の人にそっくりなんだ。 だから、入社した時からずっと見ていたんだ。」 ゾォッとした・・・・・ 「あたし、彼氏いますから。」 「彼氏と別れて、俺と付き合ってよ。 結婚を前提に。」 オイオイオイオイオイオイオイオイ！！！！ 何でそうなるんだ。 それから、あたしは電話を無視し、配車係りの人に、 奥田と乗り組みにならないようにして欲しいと頼んだ。 のに！！ 一ヵ月後、ばっちり乗り組みになってしまった。 しかも、泊まり（涙） そして伊豆・・・・遠い、遠いよ、おかあさん。 仕事中、口を利かないわけには行かない。 お客さんを迎えに行く朝の回送中、奥田は 「なんで電話に出てくれないの？」 「ねえ、彼氏と別れてよ。」 と、言い続けた。 これはマズイと思い、あたしは、観光地につくたびに、 お客さんと一緒にバスを降り、何度も見たトコロを巡る羽目になった。 恐れていた夕食も、ずっとそんな調子だったけれど、 あたしは、シカトし続け、黙々と食事を終え部屋へ入った。 温泉へ入り、部屋に戻ると携帯の履歴に５件着信が。 電源を切り、ガイド教本に目を通していると、 今度は、部屋の内線電話がなる。 そこまで執念深くかけてくるということは、 仕事の用事かもしれない。 とりあえず出てみると、 「ねえ、話しようよ・・・」 「あたし、勉強しなきゃいけないんで。」 切る。 すると、また電話が鳴る。 あああああああああああ・・・・・ うるさくて、集中できやしない。 受話器を一度上げて、はずしてやった。 コンコン、コンコン 「ねえ、なつみさ～～～ん・・・・」 部屋のドア越しに、幽霊のような声がする。 ちょっとちょっと勘弁してよ～～～～。 そう、乗務員の部屋は隣、もしくは向かい合わせの事が多いのだ。 ヤツの部屋は、あたしの部屋の斜め向かい。 目と鼻の先だ。 「俺、ストーカーじゃないけど、毎日あんたの車見てるんだよぉぉぉ」 そういうのをストーカーって言うんだよ！！！ 「おやすみなさい！！もう寝ますから！！」 あたしは、ドア越しに怒鳴りつけ、本当に電気を消した。 布団を頭まで深く被り、ノックが止むのを待ちながら眠りに落ちた。 ホラー映画じゃないんだからさあ・・・・ ずっと無視しようと思っていたけれど、 ああいう人って逆恨みとか怖い。 一晩考えて出した答えは、理解してもらえるまで話そうと。 優しくしたあたしも悪いのだ。 帰りのバスの中で、あたしは、きちんと向き合い、 ひたすら理解してもらうよう話した。 幸い、彼は心底怖い人ではなく、なんとか頭は正常だったため、 約１時間に及ぶあたしの説得に、首を縦に振ってくれた。 それからは、電話もなくなり、乗り組みにも当たらず、 平和な日々を送ることが出来たあたしです。 ↓↓これは怖いわ～～～～って思った人！ ぽちっと押しちゃって！！↓↓ 人気blogランキング ↓こちらもポチっとお願いします↓  お気に入りの記事を「いいね！」で応援しよう
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