焦らず、サスペンス調にじっくりネチネチ攻めてくるパッパーノ、いいです!
まったく飽きない。
ドン・ジョバンニをオールスターキャストにしたから、マクベスはパッパーノのやりたいようにやったのでは?
戦略にはまってしまいました。
キーンリサイドはもうお見事です。
最初は小心者感がみなぎって、まわりの歓声に手が震えちゃってるんですから、細かい演技がニクい!
でも最後は人生達観してしまう。「慈悲、尊敬、愛」を歌ったあとの、ラストのモノローグをキーンリサイドは大事にしているというのが、たいへんよくわかります。
そう、マクベスは、本当は自尊心が高く、でもそれをあらわにすると、叩かれるということがよくわかっている、賢いやつ。
実は世渡り上手で小心者を演じていただけなんじゃないのか?
でも、俺は王さまの前では小心者を演じられる、たいした人間なんだというプライドみなぎる、すっごい嫌なやつなのかもしれない。
魔女と出会って、冷静さをなくしてしまった。ある意味、魔女はマクベスの本心なのかな、とも考えます。
そして、夫人の方が実は小心者で、隠すためにわざと虚栄心押し出して、勝ち気さを振る舞う。でもキャパオーバーになって、最後は崩壊する。
悪いことを悪いと感じないホントにクソなやつは、自己嫌悪でなんか死なないし。
モナスティルスカは難役のマクベス夫人をしっかり歌って演じていたと思います。
まぁ細かいこと言えば、アジリタ部分をもっとちゃんとできていればとかありますが、やっぱマクベス夫人は歌唱テクニックを超越するオーラと存在感がないと役に負けてしまうし、モナスティルスカはそれにマッチしていました。
有名な、手紙のシェーナからはじまるカヴァティーナより、ラストの狂乱の方が聞きごたえありました。
マクダフのイリンカイの悲しみのアリアは泣けました、最後にビシッと締めてくれてます。
幕間のシャンパン飲みながらや、帰りの電車でひさびさにいろいろ振り返って考えることができて、楽しかったです。
指揮 アントニオ・パッパーノ
演出 フィリダ・ロイド
再演監督 ダニエル・ドーナー
マクベス サイモン・キーンリサイド
マクベス夫人 リュドミラ・モナスティルスカ
バンクォー ライモンド・アチェト
マクダフ テオドール・イリンカイ
マルコム サミュエル・サッカー
医師 ジフーン・キム
夫人の侍女 アヌーシュ・ホヴァニシアン
刺客 オーレ・ゼッターストレーム
伝令/亡霊1 ジョナサン・フィッシャー
亡霊2、亡霊3 野沢晴海、鈴木一瑳
ダンカン王 イアン・リンゼイ
ロイヤル・オペラ合唱団、ロイヤル・オペラハウス管弦楽団
2015(平成27)年9月12 日 東京文化会館大ホール