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カテゴリ:小説紛い
家族の口減らしのためか、栄華英達を手にしたかったがためか、それは自身にも判らぬながらも募兵に応じて或る傭兵部隊に入隊した少年。
隊長は富裕な貴族出身の次男坊であり、黙っていれば平和も富も女も手に入るであろう身分であるにも関わらず、何を思ったのか戦争に憧れを抱いて、高給を謳い文句に「戦争屋」と揶揄されるような傭兵隊を組織してしまった男だ。 が、実際に部隊の兵士に支払われる金は安いものだった。 何故ならば、隊長は非常に利己的な人間であり、平時であらばどんなにか周囲から憎まれていただろう……と思わせるに十分な人柄であったが、彼の周囲は金目当ての取り巻き連が常日頃おべっかを使って胡麻をすっていて、それにまんまと乗せられた隊長が、取り巻き連と共に稼いだ金の大半を蕩尽三昧にて浪費していたからである。 隊長にとって、「戦争」という行為を何となく楽しめればいいのであって、自分自身が雇用者の立場に居るという事実には思い至らず、兵士の窮乏ぶりなど二の次だったのである。 この不誠実な振る舞いに憤っている兵士は多かったが、彼らもまた、死の充ち満ちた戦場の気に中てられて理性的な行動をするという事を半ば忘れかけており、命がけで稼いだ僅かな金を酒と賭け事と女で使い果たしては、金を得るためにまたがむしゃらに戦いに赴く……という、我と我が身を擦り減らすような生活を送っている者ばかりだった。 まだ入隊して日の浅い少年は、彼らがまるで「蠅に蛆を産み付けられたような腐った人間」だと考えて軽蔑する。また、兵士連中に蛆を産み付ける蠅とは隊長であると考えて、内心非常に憎むようになっていった。 やがて彼は、部隊の中で知り合った仲間と共謀して隊長を暗殺してしまう。 いくら人殺しを常とする傭兵でも、部隊内での殺しは犯罪だ。 殺人が露見する前に、指揮官を失って烏合の衆となった部隊を離れた二人。 後に別の傭兵部隊に転がり込んだ彼らだったが、戦利品の分配に関して諍いを起こし、少年は怒りのあまり仲間を殺してしまう。 ハッと我に帰った少年は、自分もまたあの隊長と同じような身勝手な人間になってしまったのだという事を自覚した。 血を流して虚ろな目をした死体が、ただ空虚な視線を彼に投げ掛けるのみだった。 ――――――― っていう話を、だいぶ前から考えてるんだが。 いざ小説の形式で書こうかと思うと踏ん切りがつかないこと夥しい。 やはり勢いが重要か……。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.05.31 23:35:30
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