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tartaros  ―タルタロス―

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こうず2608

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2008.06.15
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カテゴリ:小説紛い
以下は、人伝に聞いたお話を元にした掌編ホラーであります。


―――――――

 いつの頃からか、家の中にはもう一人の住人が居るようになった。
 それが友人であるとか恋人であるとか、そうした好ましい意味付けのなされる相手であればどれほど気が楽であっただろうか。新しい住人とはつまり、身勝手に転がり込んできた居候に他ならなかった。
 そうした相手は、家の主である幸次にとっては非常に迷惑な闖入者であった。独り者の気楽な生活、寂しさを感じないでもなかったが、何も無断で家の中に入り込んで欲しいとはもちろん思ったことなど一度も無い。
 かと言ってその居候が、飯を要求したり寝床として一間を占領したりという訳でもないのである。
 居候はいつも決まって夜の12時過ぎ、幸次が眠りかけている時間にしか現れなかった。やはり彼の飯や布団を奪っているのではない。そもそもそのような意思すら持っていないだろう。だが、夜に限って現れるその居候は、それらの物を一切要求しない代わりに、ただそれよりも傍若無人と言える振る舞いをするのである。
 
 ドタ、ドタ、ドタ、ドタ……ドタドタドタドタドタドタ……ドタドタドタ………。

 いや、振り返ってみると、その居候が幸次の前に本当の姿を現した事など今まで一度も無かった。何かを恥じらっているのか、それとも見せられないだけの他の理由があるのだろうか。幸次は実際に会ってもいないし話したことも無いので判らないのだが、夜にだけ現れるその居候は、幸次の寝室と廊下とを隔てる障子の、もうしばらく張り替えていない紙のその向こう側に常に居たのだ。一度だけ、その障子に映り込む真っ黒い「影」を目にした事がある。
 ユラユラと、男とも女ともつかない人間の影だった。

 ドタ、ドタ、ドタ、ドタ……ドタドタドタドタドタドタ……ドタドタドタ………。

 後は、ひたすらに廊下の端から端を行き来する足音だけが、居候の存在を確かなものとして幸次に意識させる証拠となるだけである。
 ある時はゆっくりと、その次は急いでいるように早く、そのまた次は忍び足のようにソロソロと……その時々で居候は幾度も歩き方と足音を変化させていた。まるで自分の足を楽器として即興の音楽を幸次というたった一人の客に聴かせようとしてしているかのようだった。

 ドタ、ドタ、ドタ、ドタ……ドタドタドタドタドタドタ……ドタドタドタ………。

 時々、居候の足音とは違うギシギシ言う音は、板張りの廊下が音を立てているのだろう。あるいは居候に踏みつけられての音なのであろうか。いずれ家鳴りの類であろうものだが、もう数か月この居候に悩まされ続けている幸次にとっては、足音であろうとただの家鳴りであろうと等しく恐ろしさを感じるようになっていた。
「俺が何をしたんだ……………俺は、幽霊に取り憑かれるような謂われは何も無いぞ……」


「へえ。それは困った」
 幸次の友人である真一の言葉である。
 もし姿を持つ人間の侵入者であれば、警察に頼めば事足りるであろう。勇気があれば自分で取り押さえる事もできるであろう。
 だが、今まさに幸次を困惑と恐怖に陥れている居候とは幽霊なのだ。実際に姿を見た訳ではないけれども、障子一枚隔てて足音だけが聞こえるというのは、決して気持ちのいい話ではない。安眠が妨害されるとか、そういう当たり前の理由では言い表せないくらいの恐怖を感じていた幸次にとって、頼れるのは現実の脅威に対処する警察ではない。見えぬもの解らぬものに対するには、相応の能力を持った相手に相談するのが筋である。
「それは……廊下の、障子の近くに塩を盛ってみると良い。きっと黙らせることができるんじゃないかと思うね」 


 夜の10時過ぎになってから、いよいよ幸次は塩の準備に取り掛かった。寝室と廊下を隔てる障子、その左右両端に塩を一掴みずつ、塔のような真っ白い塩の小山をこしらえた。石や煉瓦の代わりに小さな粒々で建てられた2本の塔は、少しばかり頼り無い気もしたが、今の幸次にはこれしかあの居候に対抗する手段が無いのである。
 頼みの綱はこれだけだ。そう思うと不安であった。しかし、同時に塩を盛ってできた小山は、塔であると同時に自分を支えるとても丈夫な柱であるようにも感じられて、不思議と芯から活力がみなぎって来もするのだった。




 ドタ、ドタ、ドタ、ドタ……ドタドタドタドタドタドタ……ドタドタドタ………。

「ああ、やっぱり来たな」
 布団の中で、小さな声で呟く幸次である。
 塩を盛ったからといって、いきなりあの不気味な居候がどこかに退散してくれる訳はないだろう。それは彼自身が重々承知していたし、理解していた。それでも、幸次は逸る気持ちを抑えきれず、その心理の一端がつい口をついて出てしまったのだ。
 それだけ、幸次が友人の真一から教えられた「塩を盛る」という対処法に望みをかけていたという事である。
 もっとも、今の彼は塩の準備をした時の不安などほとんど何処かに吹き飛んでいたようだった。まじない(塩を盛るのは幽霊に対処すると同時に、彼の心を癒すような効能があったのかもしれない)が効きすぎたのだろうか。
 少々、気持ちが大きくなっているきらいがあった。

 ドタ、ドタ、ドタ、ドタ……ドタドタドタドタドタドタ……ドタドタドタ………。
 ドタ、ドタ、ドタ、ドタ……ドタドタドタドタドタドタ……ドタドタドタ………。
 ドタ、ドタ、ドタ、ドタ……ドタドタド、ド、ド、…………………………………。

 その晩の足音には、少し躊躇いの色があるように聴き取る事ができた。
 2,3度、怒りか苛立ちの感情が籠ったような音色が廊下に響き渡った。足踏みと地団太を繰り返すと、居候は、何もせずに立ち尽くしている様子を想像させるような、しばらくの沈黙の中にあった。
 と、思うと、

 ドタ、ドタ、ドタ、ドタ……ドタドタドタドタドタドタ……ドタドタドタ………。

 またいつもの足音を立てながら足早に走り去っていった。そうして、その晩はもう二度と足音を出すことをしなかった。
 幸次は緊張の糸がプッツリと切れでもしたか、それを確認する前にまどろみの中にあった。ただ微かに留まっている覚醒の意識で真一への感謝の念を覚えながら。もう障子に影を映っているかを確認するだけの気持ちも無かった。
 彼は、初めて幽霊に勝ったのである。



 欠伸をしながら、幸次は布団から半身を起こした。
 昨晩もやはり幽霊は現れたが、塩を盛ったおかげか、途中から何処かへと消え失せてしまったようだ。やはり真一の助言の通りにしておいて良かった。持つべきものは良き友人ということだろう。そんな事を考え考え、彼は寝癖のついた髪を右手で無造作に掻きまわしながら布団から出た。
 幸次の家の洗面所は、寝室から廊下へ出た後、そこから左へ少し行った所にある。着替える前に、彼は顔を洗おうと思い立って障子をスラリと開けた。勝利を飾るために、まずは冷たい水で顔を洗ってスッキリしたかったからだ。
 
 だが、勝利の美酒に酔って微笑みを湛えていた彼の寝起きの顔は、見る間に青ざめた陰気なものへと変貌していった。
 口を半開きにして、誰に聞かせるともなく意味の無い呻きを発することしかできなかった。両目から発される視線は一見泳いでいるようでいて、その実しっかりと目標物を見据えていた。そのような表情にならざるを得ない光景が、目の前に広がっていた。
 その恐ろしい、しかし同時に素朴でもある光景に、幸次はどうしようも無い恐怖を覚えた。



 昨晩、確かに………確かに塔のようにしっかりと盛っておいたはずの塩の小山が二つとも、「まるで誰かに蹴り付けられでもしたかのように」、跡形も無くグシャグシャに崩れていたからである。
 
――了。




―――――――

数年前、盆に親戚一同が集まって宴会があった。
これは、主に親戚中の酒飲み連中が猥談を交えながら行う類のものである。というか、毎年盆と正月の恒例行事である。

その中でひょっと顔を出した、或る怪異談を基にして小説を書いてみた(人物の名前は適当)。

俺=管理人の父の友人の体験談ということだったが、事実かどうかは判らない。
そもそも「顔の見えない、近いようで遠い他人」という時点でFOAF(友達の友達)に近いと言えるかもしれない。











 

 





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Last updated  2008.06.16 00:59:37
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